「もったいない野菜」を新幹線で輸送

野菜や果物の生産者とオンラインでやりとりできる、新しいマルシェが23日から始まった。

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場所は東京駅。
新幹線から次々と運び出されるアスパラやモモなどの農産物。

実はこれ、福島県で収穫された「もったいない野菜」。

その日の朝に収穫された野菜の中で、形や色が規格外のものや過剰生産によって畑に放置され、市場に出回る予定のなかったものなのだ。

新幹線で輸送することで、安くて新鮮な野菜を昼ごろには東京の売り場で販売できるという。

リアルタイムで野菜をPR

この取り組みの最大の特徴は、生産者とのオンラインコミュニケーションだ。

あだたらの里直売所・矢吹吉信店長:
(モロヘイヤの食べ方は?)
とろろをすってネバとろ丼とか。かごの中はみょうが?

客:
トマトとオクラです。

あだたらの里直売所・矢吹店長:
オクラ入れてもいい。オクラもねばねば野菜なので。

売り場に設置された大きなモニターに映し出されているのは、福島県の直売所。

東京駅とオンラインでつなぎ、生産者自らの言葉で、遠く離れた消費者にリアルタイムで野菜をPRできる。

買い物客もマイクを通して野菜の豆知識や、おすすめの食べ方などを聞くことができる。

新型コロナウイルスで県をまたぐ移動の自粛が余儀なくされる中、首都圏からの購入拡大が期待されている。

JR東日本クロスステーション・森下大輔さん:
目指すところとしては定期輸送。常にいろいろなところの新鮮なものが、東京駅とか首都圏に新幹線で届いたり、一度に運べる量やエリアについても、どんどん広げていけたらいい。

イベントを主催するJRは、今後、定期的に実施していきたい考えだ。

リアルとオンラインの”新しい出会い”

三田友梨佳キャスター:
マーケティングアナリストの渡辺広明さんに聞きます。
今回のこの試み、渡辺さんはどうご覧になりますか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明氏:
店頭でのリアル販売とオンラインを融合した、消費者にとって、これまでにない新しい出会いを提供する、新しい形のライブコマースになっているのではないかなと思います。

まず何より、野菜の生産者とオンラインで直接コミュニケーションできる、人との出会いがありますよね。

また、通常のネット通販や従来のライブコマースと違って、朝、新幹線で運んできた新鮮な農産物を確かめて買うことができる、物との出会いもあるんです。

さらに、東京駅はかなり人が行き交う場所なので、人だかりを偶然目にして参加して、突然生産者に意外な質問をするなど楽しい体験との出会いというのもあるんです。

三田キャスター:
いろんな出会いがありそうですが、こうしたオンライン交流マルシェ、さまざまな商品にも今後広がっていくかもしれないですね。

渡辺広明氏:
今回は野菜・果物ですが、鮮魚など生鮮食品に限らず、駅弁などの中食の販売などにもつながるのではないかと思います。

また、成功のカギは、今回は“訳あり”、“もったいない”などですが、作り手が語る思いや商品特性などに消費者が価値を感じて購買する”ストーリー消費”ということを展開することがポイントだと思います。

大切なのは単発のイベントではなく、継続して実施してファンを増やしていく努力をすることが欠かせないのではないかとも思います。

三田キャスター:
生産者の顔が見える取り組みはさまざまな形で行われていますが、今回のように生産者が消費者の購入の様子やその表情を見ることができるというのは、生産者の方たちにとっても喜びにつながるのではないかなと感じます。

(「Live News α」8月23日放送分)