もう1つの「9.11」 工藤会トップを電撃逮捕

『私たちにも「9.11」がある』。かつて、ある警察幹部に言われたことがある。「9.11」と言えば、多くの人が、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ」を思い起こすだろう。ところが、警察当局の、特に、組織犯罪捜査に携わった人たちにとって、「9.11」は、工藤会壊滅に向けた「頂上作戦」が始まった日を指す。

2014年9月11日、福岡県警は、特定危険指定暴力団・工藤会(北九市)のトップ・野村悟被告を殺人容疑などで逮捕。同日、樋口真人本部長がカメラの前で、事件について説明した。本部長自らが検挙会見に臨むのは異例中の異例。福岡だけではなく、日本の警察組織の威信をかけた戦いが、この日、幕を開け、その後、野村被告らは逮捕を重ねられることになる。

以下、画像はテレビ西日本特集記事より
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殺害の”直接証拠なし” 捜査当局の秘策とは・・・

あれから7年。頂上作戦は最終章に入ろうとしている。今月24日、工藤会トップの野村被告と、ナンバー2の田上不美夫被告に判決が言い渡される。2人は、工藤会が関与したとされる4つの市民襲撃事件で、殺人などの罪に問われている。2人は無罪を主張しているが、検察は、野村被告に死刑を、田上被告に無期懲役などを求刑した。

4事件のうちの柱は、1998年に起きた元漁協組合長射殺事件だ。北九州での港湾利権を狙った犯行とされているが、法廷では、野村被告らが指示・命令したとの“直接証拠”は出ていない。そこで検察は工藤会の「気質」に着目した。

検察は、工藤会では、トップの指揮命令がなければ、重大事件を起こすことはできないとの“間接証拠”を積み上げていった。一般企業では、平社員の不正行為に、社長が関与することは希だろう。しかし「厳格な統制」がなされ「上意下達」が徹底されている工藤会では事情が違う。トップの指示・命令がなければ、繁華街で一般市民を射殺することなど考えられない。

そんな検察の主張に対して、弁護側は「独善的な推認」と反論する。

工藤会だから・・・”死刑判決”の可能性は

また死刑求刑について、検察は論告で「工藤会特有の凶悪さから、繰り返し一般市民を標的にした」と断じた。死刑を判断する際の「永山基準」の下、殺害された被害者が1人の場合、死刑は回避される傾向にある。この点についても「極刑回避の事情とはならない」と強調した。

工藤会だから、「指示・命令」が認められ、「死刑」は避けられないのか。工藤会事件に関わった検察OBは「他の被告、他の事件とのバランスから考えると死刑の可能性はある」と語気を強める。「9.11」を前に、注目の判決が福岡地裁で言い渡される。

フジテレビ解説委員 平松秀敏