ロボットが子育ての参加者を増やしてくれる。

子育ての合間をサポート

力いっぱい遊び回る3歳の女の子。
母親が夕飯の支度をする間、代わりに子供の面倒を見ているのは…

この記事の画像(11枚)

都内の自宅でテレワークをしながら二人の娘の子育てをしている阿部香澄さん。
夕飯の支度をする間の1時間程度、代わりに子供達の遊び相手をしているのは、阿部さんが研究員として働く会社が開発する「子育てアバターロボット」のChiCaRo(チカロ)。

ChiCaRoはロボットに付いているモニター画面で、離れている祖父母などとテレビ電話をすることができる。

さらに会話だけでなく、ロボットを子供の動きに合わせて動かすこともできるという。

みゆりちゃん:
みーちゃんも隠れるから10秒数えて!

みゆりちゃんの祖母:
1,2,3・・・
みゆりちゃんはどこかな~

テレビ電話を繋いでいる相手は、パソコンやタブレットを使ってロボットを前進させたり、回転させたり、自由に動かすことができる。

そのため、パワフルに動き回る子供でも追いかけて気を引くことができ、ロボットを使った遠隔子育てが可能になる。

株式会社ChiCaRo・阿部香澄主席研究員:
保育園から帰ってきて夕食を作りたいのにグズグズで全然作れない時とか、「お願い30分間だけ見てて」とヘルプをお願いしたり、抱っこ抱っこで離れてくれなくて両手を使いたい時に見ていてくれると助かります。

一方、普段は離れて暮らす親族も喜びを感じるという。

みゆりちゃんの祖母:
かけると喜んでくれるし、私も画面越しに会えるのは楽しいし、夫も凄く楽しみにしています。
娘にとっても助かるかもしれないけど、私にとっても嬉しいことなのでそれができるのは嬉しいです。

遠隔子育てロボットのChiCaRoは、電気通信大学発のベンチャー企業が開発し、現在も大学と共同研究を続けている。

株式会社ChiCaRo・奥温子代表取締役:
核家族化でどうしても子育てと仕事と家事を、2人の大人でしなければいけないとなった時、ロボットを使って離れていても子育てが手伝える、家族として力を貸してあげられる、といったことをコンセプトにしています。

今後は実証実験を行い、来年度中の販売を目指すほか、AIを搭載し、子供の性格に合わせたおすすめの遊びを提案する新たな仕組みを開発中だという。

株式会社ChiCaRo・奥温子代表取締役:
ChiCaRoは家族の中に入っていける製品なので、子育ての負担が減って子育てが楽しくなったとか、ポジティブな感情を家族内で生んでいって家族が幸せになり、日本が幸せになることを目指しています。

ロボットとの共存に「倫理的な課題」

三田友梨佳キャスター:
消費者行動などの視点から、人とロボットの関係について研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。

子育てをアシストしてくれるアバターロボット、 どうご覧になりましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ロボットというとガンダムのような人の形をしたヒューマノイドをイメージする方が多いですが、 人の代わりに何かをしてくれるマシーン、そんな広い捉えこそ、ロボットの本質を表しています。

子育てや高齢者の介護、障害者の生活を支えるなど、暮らしをアシストするロボットの世界市場は、2019年に約4500億円、今後7年で年率22%以上の成長が予想されています。

三田キャスター:
これから私たちの暮らしの中に多くのロボットが入ってくるということでしょうか?

鈴木智子さん:
ただ、人とロボットが共存するためには少し立ち止まって考えるべき倫理的な課題もあります。

例えば、保育に必要な感性や理解力がないロボットが子育てをしたら、子供の成長に良くない影響が出てしまうのではないかと懸念しています。
さらに子育てをロボットに頼りすぎると、 深刻な愛着障害が多発して社会にネガティブな影響を与えてしまうと一部の研究者は警告しています。

三田キャスター:
ただ今回の試みは家族をつなぐ役割を果たしていましたよね。

鈴木智子さん:
そうなんです。
ChiCaRoは倫理的な懸念に対する一つの解決策を示しているように思います。

遠隔育児支援ロボット、つまり遠くに住む祖父母や親戚、保育士などが子育てを助けてくれる。

これは人とロボットが一緒になって、新しい世界をつくっていると言えるのではないでしょうか。

三田キャスター:
家庭で活躍するロボットが今後普及するためには何が鍵になりますか?

鈴木智子さん:
必ずしも高度なテクノロジーを盛り込んだハイスペックである必要はなく、逆にローテクだからこそコストが安く、手の届く価格を実現できることもあります。

大切なのはロボットの力を借りることで人間が出来ることの可能性を広げること。世代を超えた家族のつながりが薄れる中、今回の試みのようなロボットの活躍を期待したいです。

三田キャスター:
子育ての中で、子供を預けるほどではないけど誰かに少しだけ見ていてほしいという時間は毎日のようにあると思います。
こうしたロボットの活用も1つだと思いますが、どんな家庭環境にあっても気軽に誰かに頼れる環境作りが広がっていったらいいなと感じます。

(「Live News α」8月18日放送分)