広島に原爆が投下された直後に、放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、2021年7月 広島高等裁判所は、84人の原告全てを被爆者と認定する判決を出した。そして、菅首相は上告を見送り、この判決が確定した。

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広島・黒い雨訴訟 「区域の外」原告全てを被爆者認定

「黒い雨」をめぐり、国は原爆投下直後の調査をもとに、大雨が降った「援護対象区域」を指定。当時、区域内にいた人で、がんなど特定の病気になった場合のみ、被爆者と認めてきた。
しかし、今回の広島高裁の判決は、「区域の外」にいた原告全員を被爆者と認めた。
さらに、雨を浴びていなくても、内部被爆による健康被害を受けた可能性も指摘している。

菅首相は、「これまでの被爆者援護制度の考え方と相容れず容認できない」としたうえで、「同じ状況で被害にあった人も被爆者として認定、救済できるよう早急に対応を検討する」との談話を発表した。

原告団長 岩永千代子さん:
実現してもらいたい。広島に手帳を交付するなら(長崎にも)同時進行してほしい

「市外は対象外」被爆者認定されない“被爆体験者”

長崎にも、国の「線引き」により被爆者と認められない人たちがいる。
「被爆体験者」だ。

長崎原爆の被爆地域について、国は当時の行政区域を中心に、爆心地から南北約12km、東西約7kmと定めている。
長崎市内であれば、爆心地から12km以上離れていても被爆者認定の対象地域だが、市外だと12km以内でも対象外。たとえ原爆に遭っていても、被爆者とは認められず「被爆体験者」と呼ばれている。
医療費の免除など被爆者のような援護はなく、原爆による「心の傷」に関連する病気だけが医療費の支給対象だ。

被爆者認定を求めて被爆体験者が起こした集団訴訟は、2017年 最高裁で敗訴が確定。長崎地裁に再び提訴している。

2017年の最高裁

原告団長の岩永さんは、「裁判が長期化し、多くの被爆体験者がこの世を去った」として、早期の解決を求めている。

2018年の長崎地裁

被爆体験者 岩永千代子さん:
見捨てられた。埋もれていって、自分の病気が放射線の影響じゃないのかと声も上げずに亡くなっていく被爆者(のことを)消し去ってはいけない。歴史から消すな!

長崎地裁に和解協議申し入れも、県と市は…

黒い雨訴訟の判決を受けて、岩永さんたちは早期解決を求め、長崎地裁に和解協議を申し入れたが、被告となっている長崎県と長崎市は態度を明らかにしていない。
一方で、県と長崎市は黒い雨訴訟を受けて、援護対象区域の見直しを進める厚生労働省に対して「被爆者の認定基準を改める際の協議の場に含めるよう」要望している。

健康被害を訴える「被爆体験者」の救済は進むのか、「黒い雨訴訟」の判決を受けた国の対応が注目されている。

(テレビ長崎)