入国制限緩和の措置

アメリカが入国する外国人に対して、ワクチン接種を義務づけることを検討。

アメリカの複数のメディアによると、バイデン政権は、入国する外国人に対し、ワクチン接種の完了を義務化する方向で検討しているという。

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アメリカは現在、インド型変異ウイルス・デルタ株による新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの国や地域からの入国を制限をしていて、今回、検討されているワクチン接種の義務化は、制限を緩和する際の措置とみられている。

ただ、省庁間で調整が続いていて、具体的に実施される時期は決まっていないという。

「自由の拡大」には「安全確保」が必要

Live News αでは哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
今回のアメリカの動きを哲学という視点から見るとどのように映りますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
ここには、「自由」か「安全」かという哲学の古典的な問題があります。つまり人々の移動の自由を優先するのか、それとも感染防止のために自国の安全を優先するのか、という問題。もちろん今回の検討はもともと禁止されていた入国をワクチン接種を条件に認めていこうということだから、決して入国制限を強化する措置ではない。ただそれでも自国の安全のために人々の移動の自由を制限しようということが継続するということには変わりないです

三田キャスター:
人々の自由と社会の安全については、哲学ではこれまでどのように考えられてきたんでしょうか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
近代の歴史とは自由の拡大の歴史であり、これは哲学でも他人の安全を損なわない範囲で個々人の自由は最大限認められなければいけないと考えられてきました。つまり自由の拡大こそ人類の進歩だと考えられてきました。ただ今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、こうした歴史の流れに対して自由を拡大するためにはやはり安全が確保されていなければならないということを改めて示しました

津田塾大学・萱野稔人教授:
この点で興味深いのは、アメリカでも例えばバイデン政権はもともとリベラルと言われているが、トランプ前大統領よりも、自由よりも感染防止に非常に重きを置いている、それだけ自由尊重の考え方は、安全な社会が築かれているということに依拠していたということが、よく示されているということです

三田キャスター:
感染拡大が続く日本で、自由と安全のバランスを取るためには、萱野さんは政治に何を求めますか?

萱野稔人教授:
日本では安全の問題というと安全保障だということで忌み嫌われる傾向があり、自由と切り離されてしまう議論が目立ちますが、やはり自由は安全が確立されてこそ成り立つということを改めて確認してほしいです。つまり自由を拡大するためには、自由の問題ばかりに注目するのではなくて、それを支える安全をどう確保するのかという議論も同時にしてほしいと思います。それによって初めて自由が実質的な厚みのあるものになっていくんじゃないかなと思います

三田キャスター:
今回のアメリカの動きはあくまでも検討という段階ですが、入国の際にワクチン義務化となれば、アメリカでは承認されていないワクチンも世界には存在しているわけで、どのように制度を築いていくのか、今後の動向が注目されます

(「Live News α」8月5日放送分より)