「自民党支持者の自民党に対する不平不満の現れが都議選」
「約束を守る、言ったことは必ず実行することが選挙に勝つ第一条件だと思っています」
こう指摘するのは、永田町では知る人ぞ知る“選挙の神様”と呼ばれる久米晃氏だ。
久米氏は、1980年に自民党本部に就職以来、選挙一筋で、自民党の選挙対策に携わってきた。2002年から2016年まで自民党本部選対部長、さらに2011年からは党本部事務局長を兼務し、おととし退職した。メディアの前に出ることの少ない久米氏だが20日午後、今の自民党や次の衆議院選挙の展望について日本記者クラブで講演した。
この記事の画像(5枚)久米氏はまず、7月の東京都議会選挙で自民党の議席が予想を大きく下回る結果に終わったことについて、次のように分析した。
「自民党のファンが菅首相に対する期待を打ち砕かれて、その怒り、つまり自民党内の怒りが都民ファーストに流れてしまったのではないかと私は理解しています。無党派層が動いて自民党が大敗しているわけではなく、自民党支持者の自民党に対する不平不満の現れがこの都議選だったのではないかと私は思っています」
自民党の公認は“ブリキの看板” 総選挙は「30議席減の覚悟を」
さらに「自民党支持率と野党支持率が逆転し自民党が負けるということはほとんどない」とし、自民党が敗北する時は常に「自民党の支持者が自民党に入れない時だ」と指摘した。さらに自民党支持者は、組織が盤石な公明党や共産党とは違い「党に対する支持者ではなくて保守的無党派層ではないか」と分析した。
そして、菅政権発足後、山形・千葉・静岡などの知事選挙や4月に行われた北海道・長野・広島の補欠選挙で自民党の推薦候補や公認候補の敗北が相次いでいることについて「自民党の公認・推薦が今や金看板ではなくてブリキの看板になっているのではないかと指摘する人もいる」と語った。
また、秋までに行われる衆院選について「都議選の時の自民党に対する信用信頼を失った状態が解消されないままでは、都議選と同じような結果が衆院選でも出てしまうのではないか」と強い危機感を示した。その上で現状のままでは「自民党の現有議席を維持するのは並大抵のことではない」とした。さらに久米氏は「30議席は減らすことを覚悟して選挙対策をすることが常識だと思う」と指摘した。
菅総理の無投票再選なら衆院選結果は「火を見るより明らか」
自民党復調のカギはあるのか。久米氏は「しっかり説明して、一人でも多くの人にワクチン接種が行き渡ることが衆院選に勝つ一番早い方法ではないかと思っている」と述べた。同時にワクチン接種が進まなければ「中途半端な時に解散する必要がない」と指摘した。
そして自民党総裁選について「 “内政干渉だ”と怒っている人がいたが公明党の山口代表が『自民党の総裁選挙をやってそれから解散総選挙をやったほうがいいのではないか』と言っていたが、それも一つの方法かもしれない。やはり自民党の中できちっとした候補者が出てきて、総裁選を盛り上げてその勢いで衆院選という方法もあるかもしれない」と衆院選前の総裁選を「一つの方法」と指摘した。しかし、総裁選に菅首相しか出馬せず無投票再選になった場合は「私の友人の言葉を借りると『国民が許さない』と思う。この惨憺たる現状を見たら『誰の責任なんだ』と思う人が多いのではないでしょうか、私の友人はそう見ていますね。だから、『出馬するのが菅首相だけだ』となったら、その後の衆院選の結果は火を見るよりも明らかではないかと私は思います」と述べ、自民党が衆院選で勝利するためには総裁選で複数の候補者による活発な議論が行われるべきだと指摘した。
小池都知事の国政復帰は
また、都議選で都民ファーストの善戦を演出し、永田町で国政復帰が取り沙汰されている東京都の小池知事については「衆院に出てきてもたかがしれているのではないか」と語った。「コロナ禍でこれだけ都民が疲弊している時に都知事の職を放り出して衆議院に出てくることはないと私は思います」として、コロナ対応が最優先の中、知事を辞任して国政に復帰する可能性は低いとの見方を示した。
長年、日本の選挙の最前線で携わってきた久米氏。
久米氏の言葉は、秋までに行われる衆院選に向け、支持率低下に苦しむ自民党への良い助言となるのか。
(フジテレビ政治部・門脇功樹)