「五輪は日本のスポーツ全体で戦える良さがある。良いスタートを切れるように。ソフトボールも応援して自分たちも頑張りたい」と口にした岩渕真奈選手がエースとして率いるなでしこJAPANの初戦は日本勢一番星のおよそ9時間後に行われた。
無観客でありながらも札幌ドーム周辺には、『結束』の花言葉を持つ朝顔と共に地元小学生からの応援メッセージがずらりと並んだ。
開始6分で先制許すも…後半39分に待望の瞬間
「22人、スタッフ含め全員で戦えば勝機はある」とエースが話したなでしこの初戦。
開始6分で先制を許した日本は、カナダの守備を崩しきれずに前半が終了した。
後半3分、ゴール前に駆け込んだFW田中美南選手がペナルティーキックを獲得してチャンスを作り出すも、自ら放ったシュートははじき返された。
その後もカナダがゲームを支配する展開が続きこのまま終了かとも思われたが、後半39分。待望の瞬間が訪れる。
岩渕選手「チーム全員の気持ちが乗ったゴール」
右サイドから前線へ送られたロングパスにカナダのディフェンダー2人と競るように駆け上がった岩渕がワンタッチでシュート、同点に追いついた。
ソフトボールに続き日本勢の2連勝、とはならなかったものの、オリンピック2大会連続銅メダルの強豪カナダから勝ち点1をもたらした岩渕は試合後「スカウティング(相手分析)で『DF裏が弱いかも』という話があった。チーム全員の気持ちが乗ったゴールだった」と振り返った。まさに、スタッフ含め、22人全員で掴んだ同点弾だった。
試合の立ち上がりについて高倉監督が「ずっと気をつけてねと言っている。ずっとふわふわしているので」と話した際には、隣から小さな声で「ふわふわしていない」と突っ込み、監督と会場の記者、ボランティアスタッフをも笑顔にした岩渕。
PKの舞台裏
決めきれなかったPKの場面については、「ミナが自らもらったPKでしたし、ストライカーの気持ちは自分も理解しているつもりなので、『蹴れば』と話をしました。彼女が蹴ると言ったので、『思い切ってね』と話しました」とやり取りがあったことを明かすと、「まあ、ねえ、っていうか」と笑顔で慎重に言葉を紡ぐ。「それ(PKのミス)は取り上げてもらいたくないので。(勝ち点1を取れたということを)本当にポジティブに。記者の皆さんにはお願いしたいです」と田中をかばい続けた。
無観客で競技初日を迎えた東京五輪。観客はいなくとも、”日本一丸”の戦いは続いていく。
(執筆:フジテレビ報道スポーツ部・斉藤葵)