静岡県熱海市で発生した土石流。漁師達は茶色く濁った海を見て肩を落とした。

土石流が発生した逢初川(あいぞめがわ)の河口に位置する伊豆山港は、伊豆の名産品アワビやサザエの水揚げがあり、活気のある港だった。

茶色く濁った熱海市・伊豆山港 アワビやサザエがとれる豊かな海だった
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大熱海漁業協同組合・遠藤哲也組合長:
いやもう、こんなかよって思って。みんなで土砂の撤去をやると言ったって、あれじゃしょうがない。もう泥がひざぐらいまで来ていて、全然人の手じゃできない。

伊豆山港は土砂に埋もれ、二次災害の危険もあり立ち入りできない状態だった。

土砂に打ち上げられた漁船 泥はひざの高さまできていた

かなりの土砂が流出し海底にたまった

自衛隊や消防など懸命の捜索が続く中、沖合では民間の企業が動いていた。

ウィンディーネットワーク海洋調査事業部・藤井知徳さん:
黒っぽくなっている所が今回土砂が流出した場所ではないかと想定しています。実際湾の中が黒っぽくなっているので、土砂がかなり流出してきています。

海洋調査や陸地の3D計測などを行う静岡県下田市の「ウィンディーネットワーク」。東日本大震災の時にも海底のがれき調査を行っており、今回もいち早く伊豆山港の海底調査をした。土砂崩落地点から約2キロ離れた伊豆山港には、大量に土砂が流れ込み堆積していると見られる。

伊豆山港の海底調査 港周辺に土砂が堆積していた

港で捜索する漁師

土砂が堆積する港では、20年にわたりこの海で漁師をしている金子友一さんが1人で泥の中を捜索していた。

漁師 金子友一さん:
行方不明者は陸上で見つかる可能性が大だけど、下まで流れている可能性もあるし。その可能性がある限りはね・・・。

土砂が堆積した港で、行方不明者の手がかりを探す漁師・金子友一さん

すっかり様変わりした地元の海。捜索とともに港に流された思い出が詰まった写真も拾いながら被災した人たちへの思いを巡らせていた。

押し流された家屋にあったものだろうか 泥にまみれた写真

伊豆山港の支援セットを販売

宇田勝さんは、熱海市で鮮魚店を営んでいる。

宇田水産・宇田勝社長:
やっぱり漁獲量少なくなったのも深刻だし、伊豆山漁港は特有の魚の文化があったので、それがないのが正直寂しい。

宇田水産・宇田勝社長 熱海市内で営む鮮魚店で伊豆山港の魚介も扱っている

一部の定置網漁は再開したものの、アワビやサザエ、伊勢エビの漁はまだで、網が損傷した漁師たちもいる。

苦しい状況が続く地元の漁業を支援できればと、宇田さんが考案したのが、「伊豆山の漁業支援セット」だ。再開したばかりの伊豆山の定置網漁でとれた魚の加工品を詰め合わせた。
 

「伊豆山の漁業支援セット」インターネット販売している。ブリの切り身 ・豆タカベの干物・オイルサーディン

宇田水産・宇田勝社長:
伊豆山定置網で水揚げされたタカベです。焼いたらね、頭から全て食べれる。僕にできることは伊豆山の海でとれた魚を発信すること。そのお金を少しでも伊豆山漁港に支援金にできたらいいなと思って。

インターネットで販売していて、3500円、5000円、1万円の3種がある。商品や配送料など2500円を差し引いた金額を、漁業支援などに使ってもらうよう検討している。

土石流の影響を受けて、障がい者の就労支援施設も仮住まいで活動している

亡き仲間を思って作った海鮮丼

この日、宇田さんがやってきたのは、土石流の影響で作業所が使えなくなった障がい者の就労支援施設。ある思いを込めた海鮮丼を届けた。

伊豆山で鮮魚店を営んでいた天野初さんは土石流で亡くなった

土石流に巻き込まれて亡くなった天野初さん。伊豆山で鮮魚店を営んでいた。宇田さんは天野さんと交流があった。

宇田水産・宇田勝社長:
天野君が土石流にのみ込まれ亡くなる少し前に、コハダのしめ方を教えてくれと。普通教えないんだけど天野君の顔を見ていたら、教えたくなっちゃう。何か持ってるんだよね。

宇田さんは天野さんならどうしたか想像して海鮮丼を作った

具材はコハダや天野さんがよく買っていた魚の炭焼き。天野さんならこんな海鮮丼をつくっただろう。鮮魚店の近くにあった作業所のことも気遣っただろうと想像して、海鮮丼を差し入れることにした。

宇田水産・宇田勝社長:
本当にお客さんに人気あるいい魚屋さんだったから、彼の分まで社会貢献できたらいいかなと。そんなつもりで作りました。

地域に愛されていた鮮魚店の天野さん。残された宇田さんたち仲間は天野さんの分まで前を向いて進み始めている。

(テレビ静岡)