ラグジュアリーブランドに変化

世界的な人気ブランドが、地球への優しさを詰めたかばんを発表した。

都内にあるフランスのラグジュアリーブランド「ロンシャン」。
軽量で折り畳みができるデザインなどが、働く人を中心に日本でも人気のブランドだ。

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大きなごみ箱の上にディスプレーされているのは、アイコンバッグの「ル プリアージュ」。
およそ30年間親しまれているこのバッグの新ラインが20日、発表された。

目には見えない素材の変化。

意識したのは、サステイナブルだ。

生地やパーツに再生素材

ボディーには、リサイクルナイロンを採用し、漁業で使われる網やストッキングなどの廃棄素材を70%以上含んでいるという。

ハンドルやフラップは、食肉用に飼育された動物の皮を使用。

そのうち90%以上を、原料や生産の方法などで厳しい基準、LWG認証「ゴールド」をクリアした業者から仕入れている。

ファスナーや表面の刺しゅうに使っている糸には、リサイクル繊維を使用。

細かい部分にも再生素材を使い、環境負荷を減らした。

さらに、社会全体が環境への取り組みに参加できるように、すでに販売している同じシリーズのバッグと同じ価格で展開した。

ロンシャン・ジャパン 竹原誠社長:
皆さんに寄り添った形の商品を提供していくというのは、基本スタンスにある。
自社工場の利点を生かしながら、それぞれの企業努力のもとで価格は据え置きで、かつサステイナブルに貢献する。

2020年4月には、リサイクルポリエステルを使用した商品を発売するなど、ここ数年で加速する再生素材の活用。

今後については。

ロンシャン・ジャパン 竹原社長:
2023年に1つの目標で、全商品、可能な限り再生素材を使用して商品を提供していきたい。
ファッションという生活の非常に大事な部分をサステイナブルな環境を意識しながら、商材をわれわれも積極的に提供していきたい。体感し、社会全体が携わっていけたらいい。

ラグジュアリーブランドこそ“サステイナブル”を強みに

三田友梨佳キャスター:
マーケティングや消費者行動などを研究している、一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
ラグジュアリーブランドが環境に優しいデザインにアップデートした狙いはどこにあるのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
老舗ブランドが多い京都では、「伝統とは革新の連続である」とよく言われます。この言葉はラグジュアリーブランドの本質をよく表していると感じます。

ラグジュアリーブランドにとって真に必要なのは、未来を切り開く革新性です。

しかし残念ながらサステイナビリティへの取り組みは、やや遅れてしまったと言わざるを得ないところがあります。

今回のロンシャンの取り組みも、こうした遅れをむしろチャンスに変えるための取り組みの1つではないかと感じます。

三田キャスター:
ラグジュアリーブランドの遅れとは具体的にどういったことでしょうか?

鈴木智子さん:
サステイナビリティの課題に最初に反応したのはスタートアップや中小企業でした。また、新しい循環型経済に向けた核心的なリーダーシップは大手消費財メーカーが牽引しています。

こうした社会の動きについてラグジュアリーブランドの遅れがあると言われています。

このことを最も早く認めたブランドの1つにグッチがあります。
彼らは2017年にリアルファーの使用を中止する「ファーフリーポリシー」を宣言しています。
そうした動きが動物愛護団体などから、グッチがゲームチェンジャーになるということで大歓迎されています。

三田キャスター:
以前、ジャンポール・ゴルチエさんにインタビューした際に、ファッションは社会の動きを反映させながら作り続ける物で、大量生産とそれに続く在庫の廃棄処分についてはファッション業界も変わるときが来ていると熱心にお話しされていたことが印象に残っています。

鈴木智子さん:
実は社会の動きを反映させたサステイナブルな取り組み、これこそラグジュアリーブランドの強みに転換できるんです。

例えば、ラグジュアリーブランドは良い物を長い間、修理しながら大切に使う。このことは環境への配慮そのものです。

ラグジュアリーブランドの1つであるルイ・ヴィトンは、サステイナビリティとは何かという問いに対して、「長期的で謙虚さを必要とする旅」と答えています。

顧客はラグジュアリーブランドに対して高いお金を払います。そしてそれに見合う想像を超えるユニークな取り組みに期待しています。

これからラグジュアリーブランドが地球への優しさを求めてどのような旅をするのか、その行方を見守りたいと思います。

三田キャスター:
持続可能な社会が求められる今、ファッション業界においても変革が進んでいるということですが、こうした業界が抱えている問題について私たちも理解して、明日から持続可能なおしゃれを少し意識するだけでも社会は大きく変わるのかもしれません。

(「Live News α」7月20日放送分)