捨てずに交換する、ファッション界のサステイナブル。いわゆる“Z世代”と企業がコラボしたその狙いとは。

持ち込まれた服は500着以上

有楽町マルイで7月5日から19日まで行われている「服の交換会」。

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着なくなった服を持ち込めば、他の人が持ち込んだ服やアパレルブランド「ワンピース」のアウトレット商品などと交換することができる。

サイズが合わない服や、買ってみたものの気に入らない服などの再利用につながるサステイナブルな取り組みで、これまでに500着以上の服が集まった。

この交換会の特徴は、従業員にある。企画から運営まで、すべてを文化学園大学服装学部に通う大学生が行っている。

「服の交換会」を主催した学生A:
こういう交換会という形で、SDGsの活動に参加してもらえる機会を提供できればと思って、この取り組みをしています。

「服の交換会」を主催した学生B:
高校生の時から古着が好きで、古着の良さの一部としてSDGsも伝わっていったらいいなと。

そのため、持ち込まれた服にはこんな活用法も…

持ち込まれた服の全体像やタグを撮影し、原産国や使用されている生地などをデータ化。今後、大学の授業でも生かされる。

「服の交換会」を主催した学生C:
廃棄衣料のブランドに何があるのか関係性があるのかとか、こういう素材のものは持ちが悪いから捨てられやすいとか、そういうことを考えようと。

Z世代は新旧やブランドに垣根がない

一方、この企画に協賛したアパレルブランド「ワンピース」にも交換会を通して新たな発見があった。

これまで50代から60代の女性をターゲットに商品展開をしてきたが…

ワンピース広報担当兼Ehre styleプレス 春木晃子さん:
Z世代の方たちが交換に来た時に、あれって思うくらい弊社の服を選んでもらったり、かわいいと持って帰ってくれる人が多くて。何か垣根を決めていたのはこちらの方なのかな、というのが新しい発見でした。

自分が好む服を純粋に楽しむというZ世代。こちらの20代の女性が交換したのは、メンズのポロシャツだった。

来店客:
メンズ・レディースは気にせずけっこう着られる。最近、白いパンツをいっぱい買ったので合わせやすいかなと。

ワンピース広報担当兼Ehre styleプレス 春木晃子さん:
Z世代の皆さんの方が、古いもの新しいもの、またいろいろなブランドに垣根があまりないと感じています。世代を狙う服を作らない方が、きっといいんだという気づきだったので、このまま突き進めればいい。

サステイナブル意識が強く商品開発にもプラス

内田嶺衣奈キャスター:
このニュースについて、デロイトトーマツグループの松江英夫さんに話を伺います。学生と企業によるこうした取り組み、松江さんはどうご覧になっていますか。

デロイトトーマツグループ CSO 松江英夫氏:
Z世代といわれる若い人がビジネスに直接関わってきている、これは注目するべきポイントだと思います。これアパレルのサステナビリティは大きな課題なんですけれども、今後は作り手と使い手の双方が、大きく意識を変えていく必要があると思うんです。

そこにおいて「Z世代」、いわゆる2000年前後に生まれた若い世代の感覚や価値観をどう反映させていくか、これがカギを握ると見ています。

内田嶺衣奈キャスター:
なぜZ世代がカギとなってくるんでしょうか。

デロイトトーマツグループ CSO 松江英夫氏:
実は、「企業こそが環境に責任を持つべき」といった意見はZ世代に一番多いんですね。アメリカのある調査では、商品を選ぶときにサステナビリティをどこまで重要視するか、という質問に対して、親の世代は30%くらいだったのですが、Z世代は62%と圧倒的に意識の違いが明らかになりました。

親の世代は、経済成長を重視する一方で環境への対応とは別物と捉える傾向があったんですが、比較的経済的に豊かで環境も重要だということを言われ始めた時代に生まれたZ世代にとっては、これは別物ではなくて一体のものだと捉える感覚が自然に根付いている。このような背景があるのではないかと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
Z世代とのコラボレーションは、ビジネスにも今後もっと活かされていきそうですよね。

デロイトトーマツグループ CSO 松江英夫氏:
そう思います。実際に、Z世代がこういったアパレルの商品開発に関わるという事例も最近出始めています。サステナビリティに対して意識が高いZ世代が、作り手である企業と関わることによって、作り手の意識まで変えていく。こんな好循環が生まれつつあると私は見ています。

SNSなどを通じて発信力が強いZ世代ですから、世代を超えてアパレルのサステナビリティの意識改革の起爆剤になってくれる。そう発展することをぜひ期待してみたいと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
今の若い世代の皆さんは、小学生の頃からSDGsについて学ぶなど、環境への意識が自然と高くなる教育を受けてきているのかなというふうにも感じます。若い世代の高い意識、そして柔軟な発想力から、私たちが学ぶこともたくさんありそうです。

(「Live News α」7月16日放送分)