「生理の貧困」という言葉を最近、耳にする人も多いだろう。

「生理用品が買えない」「鎮痛剤が買えない」「生理の知識がない」といったことをイメージするかもしれない。「それもすべて『生理の貧困』」。そう訴えるのは、ライターで自身も貧困家庭で育ったヒオカさん、26歳。

ヒオカさん
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実家は家賃1万5千円の県営住宅で、精神障害を抱える父親の年収は100万円ほどだったという。幼い頃から貧困が理由で、さまざまな困難に翻弄されてきたヒオカさん。

彼女の経験や当事者の取材から感じた、「生理」に関する現状や課題などについて考えていく。

「生理の貧困」は経済的困窮だけではない

2021年3月に『#みんなの生理』が日本の若者の生理に関するアンケート調査を行い、その中間報告がメディアに取り上げられた。そして先日、この調査の最終結果が発表された。

このオンラインアンケートは2021年2月17日から5月17日にかけて、日本国内の高校、短期大学、四年制大学、大学院、専門・専修学校などに在籍し、過去1年間で生理を経験した773人を対象に実施。回答者の半数以上が20~22歳であり、7割近くが四年制大学在籍者だった。

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生理用品代を支払うのが家族である人が6割を超える一方で、自身のアルバイト代やお小遣いからねん出していると答えた人も3割以上存在することが明らかに。

過去1年間で金銭的な理由によって「生理用品の入手に苦労したことがある」と答えた人は19.7%。トイレットペーパーやティッシュなど「金銭的な理由で生理用品でないものを使った」と答えた人は26.2%。「生理用品を交換する頻度を減らした」と答えた人は36.5%だった。

「ひとつひとつはそこまで高価では無いですが重なるととても大きな出費で困っています」(19歳・大学生)

「月経困難症なので、定期的に産婦人科に行って薬を処方してもらっています。1回あたり診察代と薬代合わせて約2000円を年3回支払うのは、母子家庭で学費を自分で払っている大学生には経済的に厳しい」(20歳・大学生)

生理用品の経済的負担や現状を訴える声や、低用量ピルへのアクセス、生理へのタブー、学校活動への影響など、生理に関する情報が不足し、適切なケアにアクセスできない現状も明らかになった。

ヒオカさん

ヒオカさんは、「生理」に関心が集まっていることを前向きに捉えながらも、「コロナ禍で『生理の貧困』が注目されましたが、“経済的な困窮”にフォーカスされています。もちろん、経済的な理由も間違ってはいません。しかし、それは狭義の意味。女性が健康を維持するにはお金がかかります。私は生理用品や生理に関するすべてにアクセスできないことを『生理の貧困』と考えています」と語る。

こうした状況に陥ってしまう理由には、ネグレクトや父子家庭、性教育の不足も含まれ、経済的な問題だけではない。「もちろん、コロナ禍で経済的に追い詰められて『生理用品が買えない』というのは事実です。でも、コロナ禍だけの現象ではなく、ずっと前からあること。何十年もそこにあったものが可視化されただけ」だと念を押す。

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ヒオカさんが「経済的な貧しさだけではない」とするのは、裕福な家庭でも親の偏見や知識不足から「生理の貧困」を体験している女性が多いと当事者の話を聞いて感じ、「突き詰めていくと、結局は性教育の問題」だと実感したからだ。

「生理痛や経血の漏れが対処すべきものと知らず、我慢してしまったという話をたくさん聞きます。生理痛が酷い場合は子宮内膜症の可能性もあるとか、無月経を放置してはいけないとか、そういうことを学校や親から教えてもらえなかった。

裕福な家庭でも“薬は身体に悪いから”と鎮痛剤を飲ませてくれなかったり、親のピルへの誤解から服用ができなかったり、婦人科へ通うこともできない人も。男性も生理の知識があれば、父子家庭でも対応できるはずです。性教育不足の弊害が表れているのではないかと感じます」

加えて、ヒオカさんは「貧困家庭の子はスマホを持っていなかったり、ネット環境がなかったりすることもあります。20歳まで持っていませんでしたという人もいました。貧困家庭の子は情報弱者です」と話す。生理や生理痛など生理全般の情報へアクセスすることも難しいからこそ、学校で“実用的で充実した学び”が必要だとした。

ナプキンはトイレットペーパーと同じ

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生理は体調面のつらさやケアにかかる負担など、女性一人一人で異なる。生理期間中だけでなく、生理前のPMS(月経前症候群)や生理後など、人によってつらい期間や症状も全く違う。

そのため、「生理の貧困」を訴えることで賛否両論、さまざまな意見が男女問わずに飛び交うとヒオカさんは言う。

「『ナプキン買えないのに、服を買えたり、メイクはできるんだ』といった意見もありますが、ナプキンは消耗品です。洋服は着回しできたり、メイク道具も長期間使えます。同列には扱えません」

生理は人それぞれで症状が異なるため、必要なナプキンの枚数も違う。ナプキンだけで乗り越えられる人もいれば、鎮痛剤やピル、サプリメントを必要としている人もいて、生理=ナプキンだけではないのだとヒオカさんは言う。

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「ナプキンはトイレにあるトイレットペーパーと同じなんですけどね」とヒオカさんが言うように、ナプキンは消耗品であり、最低限の必需品。「人によって生理を乗り切るための費用って違って、私が“1000円くらいが相場”と言ったら、“1000円もしないよ”という意見があったり、“1000円で足りるわけない”という議論が起きたり。人によって『生理』でイメージする金額も全く違う」からこそ、「生理用品くらい買えるだろう」と切り捨てられないという。

経血量や肌質などによって夜用や昼用など数種類のナプキンを必要とする人も。ナプキンのほかにサニタリーショーツや吸水ショーツ、経血カップなど、さまざまな生理用品があるが、「生理の貧困」に陥っていると揃えることもハードルが高いという。

最近は「生理」を快適に過ごすためのプロダクトも増え、お金さえ払えば手にできる選択肢は増えたように感じる。しかし、ヒオカさんは“より快適”に過ごすことを求めているのではなく、そもそも「生理を乗り切るためのナプキンがほしい」「日常生活を送るために鎮痛剤がほしい」という最低限のラインで訴えている人もいるのだという。

「日本は相対的貧困(平均的な生活水準と比べて世帯収入が著しく低い状態)に対して、理解が薄いんですよね。健康で文化的な最低限度の生活の設定値があまりにも低くて、そのラインを少しでも超えていると“買えないなんて言うな”という抑圧が起こる。新しい概念や変化が起きるときにバックラッシュがあるのは当たり前だと言われて、今その真っ只中にいます」

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他にも「生理なのでつらい」と言えないことも、課題だとヒオカさんは言う。

生理痛がつらくて仕事や家事が難しかったりしても、「他の人はちゃんとやっているよ」と言われると「つらい」と言いにくい空気になる。「我慢することを装うことが何十年もの間スタンダートになっていて、常識になっている。女性は生理のつらさを言ってはいけないってインストールされた社会で生きている。『つらい』ことを言える社会になってほしい」と訴え、そのためには男女問わずに生理も含めた性教育と生理への誤解を解くことが大切だとした。

日本では今、生理用品を配布するなど物質的な支援が行われているが、解消するための一つの方法にすぎない。加えて生理に関する知識を老若男女すべて持つことが解消につながっていくのだ。

ナプキンの配布だけでは終わらせないで

現在は世界でも動きが広がり、ニュージーランド政府は18歳までを対象に、すべての学校で生理用品の無料配布をはじめ、フランスでも2021年9月からすべての大学や学生寮で生理用品を無料で配布すると政府が発表した。

東京・足立区の生理用品500パック分の無料配布

東京都でも、例えば豊島区や足立区などで災害用に備蓄していた生理用品を無償配布したが、現在は終了している自治体もある。

日本では春ごろから生理の現状が訴えられ、そこからスピーディに国や自治体が無償配布まで動き出したことをヒオカさんは好意的に受け止めている。しかし、今はこれらの取り組みの「継続性」を心配している。

東京・豊島区や中野区、横浜市は女性個室トイレに生理用ナプキンを常備し、無料で提供するオイテル株式会社の「Free pad dispenser OiTr(オイテル)」と連携。区役所などに設置され、8月の稼働を目指しているという。

貧困に陥っている場合、情報が的確に届かないことやすぐに情報を入手できないことも多く、本当に困っている人に支援が届いているのかという疑問を持っている。

では、ヒオカさんが考える「生理の貧困」を解消するためには、どんなことが求められているのだろうか。

ヒオカさんは、生理用品のチケット制の配布、海外ですでに展開されている若者が無償で訪れるクリニックの設置や性教育の充実、ナプキンなどの軽減税率の適用の必要性を挙げた。

初潮を迎えるとお赤飯で祝う風習があるが、かわりに生理で必要となる生理用品を揃えたスターターキットをプレゼントする動きもあるとした。

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「生理用品のチケット制の配布は、所得のラインを決めて、それ以下であればチケット制にしてドラッグストアに行ったら自分に合ったものを入手できるとか。子どもの生理の課題も多いのですが、シングルマザーなど大人の生理の貧困も深刻です。

こうした人たちの場合は、自分の状況を認識しておらず、情報を入手する機会も少ないため、例えば市役所や図書館などの公共施設に生理用品を設置するなど、利用しやすい仕組みづくりが必要です。置いてあると盗まれると言う人も多いですが、トイレットペーパーも盗まれてはいますが設置されていますよね。ナプキンも至るところに置かれればレア度もなくなり、盗まれる頻度も少なくなるんじゃないかと考えます」

そして、ヒオカさんは「生理の貧困はコロナ禍に生まれたものではなく、光が当たっただけ。前から存在していたもので、これからもなくならない」と前置きし、「これがきっかけで国や自治体も本格的に動いてほしいですし、生理への理解も深まってほしい」とブームで終わらせてほしくはないとした。

ヒオカ
1995年生まれ。"無い物にされる痛みに想像力を"をモットーに弱者の声を可視化するライターとして活動中

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