“エシカル”な真珠

少しふぞろいでも、“エシカル”という輝きを放つ真珠がある。

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表面に角や色むらがあるこの真珠は、食品配送サービスを手掛ける「らでぃっしゅぼーや」が販売する“エシカル”な真珠。

ふぞろいradish 販売企画室・松山麻理さん:
“ふぞろいパール”という商品で、(生産者は)「それはもう出せないよ」と言っていたが、逆にこちらからすると全く見たこともないもので、とても魅力的ですごくかわいいと思って、これもきっとお客さんが喜んでくれるので、売らせてほしいと。

養殖の真珠のうち、高級品として販売されるものは20%ほど。約35%は、色や形がいびつなもので、今まではほとんど売り上げにならなかったという。

さらに、生産に欠かせない母貝が、2019年に大量死。

2021年度は、生産量が平年の4分の1から5分の1まで落ち込む見込みなど大きな打撃があった。

真珠の独特な形は“個性”

そこで今回、「らでぃっしゅぼーや」は、規格外の農産物を取り扱うサービスで“ふぞろいパール”を販売。

生産者の支援はもちろん、真珠の独特な形を個性と捉え新たな価値を提案したいと考えた。

真珠の販売担当者「無茶々園」高瀬英明さん:
日本の農産物は、形がそろってなくてはいけない、きれいでなければいけないということが前提として現在の市場を形成している。宝飾品であっても、個性を認められて生活の中に存在を許されてしかるべき。いまの文化や社会的な考え方と合致するので、個人的にはもっと浸透していいのかなと…

商品には、小さな傷などがある“バロック真珠”のネックレスやピアスのほか、コロナで高まる手作り需要に応え、形や大きさにむらのある真珠をラインアップ。

また、クラフトを紹介し、高級品のイメージが強い真珠を身近に感じてもらえるようにも工夫した。

ふぞろいradish 販売企画室・松山さん:
ふぞろいパールもそうだが、形がいびつでも輝きがきれいだったり、自然ってこんなに豊かなんだと感じるきっかけになると思うので、そういう価値を伝えていきたい

『30:3現象』思いと行動にギャップ

三田友梨佳キャスター:
このニュースについて、マーケティングや消費者行動などを研究している、一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。買い物が誰かのためになる、こうしたエシカル消費がさらに広がっていくといいですね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
エシカル消費の広がりを難しくしていることの1つに、『30:3現象』と呼ばれるものがあることが、さまざまな研究から明らかになっています。例えば、『あなたはエシカル消費に関心がありますか?』と尋ねると、約30%の人は『はい』と答えます。しかし、実際にエシカルな買い物をする人は、たった3%にしかすぎないとされています。これは『いいことをしたい』という思い、そして実際の行動、この2つは違うということです

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
このことから、これは“エシカル消費ギャップ”とも言われています。つまり、このギャップを埋めることができれば、今よりもエシカル消費を広げることができると考えられます

三田友梨佳キャスター:
そのギャップを埋めるためには、どのようなアプローチがいいのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
誰かのためになることを伝えるのが大切です。けれども、エシカルであることを強調しすぎたり、あるいは消費者のサポートを強くお願いするといい結果が生まれないということも、研究からわかっています。さらには、“エシカルであること”の効果的な伝え方も、国によって違うことが明らかになっています

三田友梨佳キャスター:
日本の場合は、どんな特徴があるんでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
例えば海外では、『わたしたちのエシカル商品は確かに少々高価だけれども、これを作る人たちにとっては、この少しのプラスαが大きな価値を持つ』、こういったようにストレートな言い方が好まれるというという印象があります。しかし、日本の場合は、もう少しソフトに訴えた方が効果的とされています

三田友梨佳キャスター:
人の善意を消費に結び付けるコミュニケーションというのは、バランスの取り方がポイントとなるんですね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
消費者のコミュニケーションとともに、商品力が要になることは通常の商品と変わりません。例えばバッグなどのファッション雑貨の『マザーハウス』、それから家具の『ワイス・ワイス』、こういった企業は、エシカルな企業として知られているんですが、それ以上に、すぐれた商品力が多くの顧客に支持されています。企業にとっても顧客にとってもエシカルであることが、決して特別ではなくて当たり前になること。こうしたことが、サステイナブルなマーケティングには重要になるように思います

三田友梨佳キャスター:
消費行動というのはわたしたちにとって、最も身近なアクションですが、毎日何気なく行っている消費の視点を少し変えるだけで、世界を大きく変えていくことになるのかもしれません。

(「Live News α」7月14日放送分)