終わりの見えないコロナ禍で、様々なイベントや催しの中止・延期が相次いで発表されているが、京都の町中には祇園祭の「山鉾」という山車がお目見えしている。
しかし、祇園祭のハイライトといわれる「山鉾巡行」は去年に引き続き今年も中止されるという。
 

出典:祇園祭山鉾連合会
出典:祇園祭山鉾連合会
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そもそも祇園祭とは平安時代の869年に疫病を鎮めるために始まったと言われている八坂神社の祭礼。
今では例年7月1日から31日まで1か月に渡って行われ、大きな山鉾が町々を回る「山鉾巡行」などは、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。
 

画像はイメージ
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2年ぶりとなる今年の祇園祭で、山鉾を組み立てる「山鉾建て」は、全体で34ある保存会のうち17で実施する予定だという。
巡行しないのに山鉾を組み立てる理由について、祇園祭山鉾連合会は「技術維持」のためだと説明している。

山鉾は大きなものは12トンにもなり、組立て・巡行・解体にはのべ180人もの人手が必要で、多くの人が関わっているというが、1000年を超える長い歴史がある中、2年ほどの中止で代々受け継がれてきた技術が失われてしまうのだろうか?

こんな疑問について、佐々宮智志さん(@satoshi1994)のツイッターでの発言が5万いいねを集める話題となっている。

佐々宮さんは、祇園祭に携わっているわけではないため、最初は「え、たった2年で技術継承できなくなるん?」と思ったというが、2年ごとに人員が交代する地元の町内会の役員の仕事で同じ現象が起きたと説明。

ざっくりまとめると、ここ2年町内会の行事が全て中止になり、今の役員は経験していない人ばかりで、次期役員に仕事を伝えることが難しくなったというのだ。その一世代前の役員に聞いても記憶が曖昧でアテにならないという。
そして、知識を継承するためには詳細な資料が必要だが、山鉾の組み立てなど複雑な事柄だと実際に経験しないと覚えられないことも多いだろうと推測している。

では、祇園祭では実際に中止による「技術維持」の問題が起きているのだろうか?もしそうだとすると、今回「山鉾建て」をしなかった保存会は大丈夫なのか?
祇園祭山鉾連合会の担当者に聞いてみた。

「マニュアルは一切なく、技術は全て口頭で伝えています」

――今年も中止だと継承が難しくなる?

祇園祭は年に一回のお祭りで、中心になっているのは70~80代の方という事もあり、あまり間隔が開いてしまうと、技術が途絶えてしまう恐れあります。
そこで今回は技術の継承を第一の目的として「山鉾建て」をさせていただいています。
 

――組み立て方は文書などでまとめていない?

「山鉾建て」についてマニュアルというものは一切なく、技術は全て口頭で伝えています。
祇園祭の山鉾は、釘を一切使わずに縄で結んで組み立てるのが特徴です
写真はある程度はあるんですが、その結び方であるとか、力の入れ加減などは、手を見て覚えていかなければいけないというところがあります。
あと、「山鉾」はすごくたくさんの部品があり、順番通りに組み立ていかないといけませんので、その手順も覚えなければなりません。
 

――「山鉾建て」には他の目的もある?

「山鉾」は、まず縄で木材を組み立てて、最後に周りに布類を飾るんですね。
普段その布類は蔵や土蔵に入っているので、年に一度 夏の暑いときに広げることでカビ予防や虫干しにもなり、よい状態が長く続くことになります。

もし、カビかなにかのために新たに作ることになったら、何億円もかかるようなことになってしまいます。「山鉾建て」を見送った保存会も非公開で山鉾を組み立てて、保存中に問題がなかったか、みなさん点検をされています。
 

――「山鉾建て」を見送った保存会の理由は?

お祭りをすると人がたくさんいらっしゃるので、やはり新型コロナ感染対策のためです。
 

マニュアルはなく、見て覚えて代々受け継がれてきた技術を守っていくためには、2年のブランクは大きく、こうしたことは他の祭りでも起きているのかもしれない。
祇園祭山鉾連合会は賛同各社と協力し、山鉾の鑑賞時にソーシャルディスタンスを保って感染症対策をするよう呼びかける「祇園祭マナーアップキャンペーン」を展開している。
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。