関連死を含め、33人の犠牲者を出した西日本豪雨の発生から3年。
氾濫で大きな被害を受けた肱川流域の西予市や大洲市では、同じ被害を繰り返さないよう堤防などハード面の整備が急ピッチで進められている。

肱川流域の治水事業を10年前倒し

大洲河川国道事務所 工務第一課 宮田晃課長​:
この堤防の低いところで(洪水を)おさえていきましょうというところを目指して、30年7月豪雨(レベルの)の雨はあふれさせない対策を今進めています

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西日本豪雨では、肱川流域の野村ダムと鹿野川ダムが安全とされる基準の6倍の量を放流、下流の西予市や大洲市で氾濫し、8人が亡くなった。

これを受けて、国と県は肱川流域の治水事業を10年前倒し、2023年度までの5年間で下流の堤防整備など対策工事を急ピッチで進めている。

大洲河川国道事務所・壬生恵庫副所長:
「再度の災害防止」。早く安全にみんなが暮らしていけるように、国だけでなく、県・市町と連携しながら、1日でも早く工事を完了できるよう進めていければと思います

国が管轄する区間では、大洲市内で計画された15カ所の堤防のうち1カ所が完成、4カ所ですでに工事が始まっている。
工事の進捗率は11.6%とまだ低いものの、用地買収のめどが立ち、2021年夏以降、新たに8カ所で工事が始まる予定。

大洲市で商業施設が集まる東大洲地区は、3年前の豪雨で約460haが浸水し、多くの施設が水に浸かった。

八木貴士記者:
こちらは東大洲の暫定堤防の建設箇所です。あちらに見える青いライン。2.9メートルのかさ上げを令和5年度までに目指しています

当時すでに暫定的な堤防は整備されていたが、氾濫を受けて、急きょ堤防の高さを70cmかさ上げした。
2021年10月から、さらに2.9メートルかさ上げする予定。

一方、流域には堤防が整備されていない「無堤防エリア」がある。
愛媛県が管理する菅田地区は、過去30年間で4回の氾濫に見舞われ、3年前の豪雨では1人が亡くなった。

八木貴士記者:
これまで無堤防エリアだった菅田地区ですが、堤防が完成することで西日本豪雨並みの洪水が起きても、あちら緑のラインで水を抑えることができる予定です

愛媛県の担当者:
無堤防地区に新たな堤防を設置するようにしています。堤防の高さはもともと道路の高さですが、おおむね5メートルぐらい高さが上がります

菅田地区では流域の11.2kmのうち、半分近い4.5kmの区間で、すでに堤防が完成。
2021年10月には、新たに3カ所で工事が始まる。

自宅が浸水被害…「夜の強い雨がトラウマに」

3年前、自宅が浸水被害にあった中野伸一さん。

中野伸一さん:
ここで黄色い線があると思いますが、ここまで浸かりました。ここまで水が来ました

目の前の肱川から氾濫した濁流は自宅や納屋を襲い、床上1メートル30cmの高さまで水に浸かった

中野伸一さん:
ダムの放流でですから、あっという間に(水が)来ました。まだこういうふうに土が残ってます。家内と近くの人は逃げるのが精一杯

洪水は地区を直撃し、一帯が水にのまれたという。

中野伸一さん:
ここらも全部浸かりました。ここへ川が流れてる感覚はないでしょ。これを見たら。強い雨が降ると、特に夜はまた線状降水帯みたいに降ってくるんじゃないかとトラウマ。夜は不安を感じます

今も大雨が降るたび、当時の記憶がよみがえるといいます。

中野伸一さん:
今までの洪水であれば堤防のおかげで、ずいぶん安心できるのではないでしょうか。この10年、私が生きとる間は(堤防は)できんのじゃないかと思ってましたが、不幸なことですけど(災害が)起きたことで5年計画で完成させようと言ってもらってるのはありがたい

堤防の完成を心待ちにしている。

2022年度からダムの機能強化に向けた工事も

下流で堤防の整備が進む一方、当時、緊急放流を行った野村ダムでは、ダムの機能強化に向けた工事が2022年度から始まる。
野村ダムにはすでに3つの放流用ゲートがあるが、計画では正面の低い位置に新たなゲートを設置する。

肱川ダム統合管理事務所・清水宰所長:
下流側から(ダムの)堤体に約5メートル弱の穴を開けていって、この中にゲートを新しく設置します。位置的には今、コンジットゲートの口が開いてる位置があります。ほぼあれと同じ位置になるので、少し見えにくいですが、左側の縦のラインのところの、今 木が生えてるところの上段ぐらいに削孔する予定です

ゲートを新設することで、洪水調整用のダムの空き容量も現在の600万トンから約1.3倍の760万トンに増やすことができる。

西日本豪雨クラスの洪水でも緊急放流を避けられるようになるという。
ただ、ハード面の整備だけでは限界があるのも3年前の豪雨の教訓。

肱川ダム統合管理事務所・清水宰所長:
住民に知っていただきたいのは、同じ洪水は二度と起きません。7月豪雨よりももっと大きな洪水も発生する可能性があります。ぜひ西予市からの避難の声かけがあった場合は、速やかに命を守るための行動を心がけていただければと思います

二度と同じ被害を起こさせないために。
早急な治水対策が求められている。

(テレビ愛媛)