森や街中に自生する、黄緑色の「コケ」。この植物がもしも動けたらどうなるのか? そんなロボットを、パナソニック株式会社が開発した。

それが7月6日に発表された、6本足の移動式ロボット「UMOZ(ウモズ)」。機体の表面はコケに覆われていて、まるで“古代の機械”のよう。その内部には、光センサーと湿度センサ―を搭載していて、周囲の光の方向と強さ、湿度を感じ取って反応することができるという。

UMOZ(ウモズ)
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なお反応のアルゴリズムは、コケの特性に合わせて設定が可能。例えば、機能紹介の動画を見ると、一体のウモズが停止していて、落ち込んでいるようにも見えるが、霧吹きで水をかけると…元気に動きだしたのだ。

霧吹きで水をもらうと何だかうれしそう

さらに、スナゴケ(日向が好き、乾燥に強い)のウモズ、ヤマゴケ(日陰や半日陰が好き、安定した湿度が好き)のウモズを並べて、明かりを照らすと…。

明かりを消した状態では動きがないが…

ヤマゴケが光から離れたのに対して、スナゴケは光に近づきだした。特性の違いが行動にあらわれていて、本当にウモズたちが生きているかのようだ。

明かりを付けると苦手な種類で反応が分かれた

コケが照明スイッチになる装置も登場

また同時に、照明制御装置の「MOSS Interface(モスインターフェース)」も発表され、こちらにもコケが活用されている。内部には湿度センサーを搭載し、装置表面に植え付けたコケの湿度と、照明の明るさを連動させることができるという。

「MOSS Interface(モスインターフェース)」

機能紹介の動画では、薄暗い部屋にモスインターフェースを設置。ここに霧吹きで水をあげると、湿度と連動して部屋が明るくなった。まるで、コケと同居しているようだ。

内部の湿度センサーが照明と連動する

見た目も動きも不思議な感じがして興味深い。自然の生物とロボットなどのテクノロジーを組み合わせたユニークな試みだが、なぜこれらを掛け合わせようと考えたのだろうか。製品化を求める声もあるが、販売はされるのだろうか。

開発に携わったパナソニックの担当者に聞いた。

コケから自然との関係性を考えてほしい

ーーこのロボットや照明制御装置を開発した理由を教えて。

ロボットは機能や性能の効率化が進んできましたが、人間の心が豊かで幸せに生きることも支援できるのではと思ったのがきっかけです。コケからは世界がどう見えるかを通じて、人間が自然との関係性を考えるきっかけにもなればと思い、2020年8月から開発を進めました。


ーー数ある生物の中でなぜ、コケに着目したの?

3つの理由があります。1つ目は人気の高まりで、コロナ禍の影響もあり「コケリウム(コケ+テラリウム)」という言葉もトレンドになりました。2つ目は種類の多さで、世界に約2万種類、日本に約1800種類のコケが生息しているとされています。生活でコケを意識することは少ないでしょうが、種類の違いを分かりやすく伝えられると思いました。

3つ目は生態的特徴です。例えば、コケは仮根と呼ばれる根っこを持っていますが、これは栄養を吸収するためではなく、対象にくっつくために存在しています。多様な自然に生きていることに注目できる、面白い生物だと思いました。

コケの魅力

優しさや共感を得られるよう“よちよち歩き”に

ーーウモズの開発でのこだわりや工夫を教えて。

どうすればコケに優しい気持ち、共感をもってもらえるかですね。ウモズは人間が「一緒にいてもいいな」と思える可愛さや生命観を感じさせるところが大変でした。歩行を“よちよち歩き”にしたり、足部分を木目調にするなど試行錯誤をしています。


ーーウモズの仕組みはどうなっている?

大きさは高さ13~15センチ、幅が10~11センチ。重量も含めて、コケの量などで変わります。足と本体のリンク部分にモーターがあり、内部のコンピューターと光・湿度センサーで、コケの特性に合わせて動くようになっています。現在の動力源はボタン電池です。

センサーはまるで目のように見える

ーーコケの特性はどんな感じ?枯れたりするの?

特性はプログラムで設定していて、いまはヤマゴケとスナゴケの2パターンです。表面のコケは本物なので水を与えなかったり、放置すると枯れてしまいます。逆に水をあげると増えて“モリモリ”してくることも考えられます。


ーーでは、モスインターフェースの開発でのこだわりは?

モスインターフェースはコンセプトが難しかったです。ウモズより日常に近いことをイメージしました。電気のスイッチは操作するために存在していますが、自然は制御することはできず、時には災害にもつながります。そこからあえて、完全にコントロールできないことにたどりつきました。

病院や介護現場での癒しに

ーー製品化を求める声もあるが販売の可能性は?

現時点で販売はしていません。ただ、ポジティブな意見もいただいているので、どうするのか考えなくてはいけないとも思います。コケは生き物なので、品質をどう担保するのかでも色んなパターンが考えられます。公式として言えることはありませんが、面白さだけで終わらずに影響などの見極めもして、検証をしながら進めていきたいと思います。


ーー将来的にはどんな活躍を期待している?

ウモズは自宅やオフィスをメインに、ペットに近い位置づけにできるかもしれません。癒しや心を落ち着かせる効果もあるので、病院や心理的に負荷がかかる介護現場で使っていただけるのではと構想しています。人と自然のよりよい関係、どうしたら共生できるのか、より良い暮らしを実現できるのかを探っていくことが主体になると思います。

ペットのような存在になれるかもしれない

モスインターフェースは基本、照明の用途です。センサーの反応はプログラムで変えられるので、照明を湿度に応じて明るくしたり、逆に暗くすることもできます。例えば、入眠時にだんだん暗くなったり、起床時にだんだん明るくすることもできます。


ーー人々にはどのように役立ってほしい?

これまで当たり前に過ごしていた世界、自然を見る形が変わったり、環境問題を考える身近なきっかけになればと思います。子どもたちにはコケの種類が違うように、人間も一人一人個性があることを考えるツールになればうれしいですね。
 

残念ながら現時点で販売の予定はないようだが、コケロボットが癒してくれる時代がくるかもしれない。ウモズとモスインターフェースは「パナソニックセンター東京」(東京・江東区)で、9月下旬まで展示を予定している。
※開館状態は緊急事態宣言などにより変更の可能性がある。

(画像提供:パナソニック株式会社)

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