豪雨や地震など災害の規模が大きいと、集団での避難生活が長期化し、特に高齢者は体調を崩しやすくなる。
1982年7月の大水害で299人が犠牲となった長崎市では、今後の避難所のあり方を考える実証実験が行われた。
「生活しやすい避難所のあり方」考える体験
この記事の画像(13枚)長崎市中心部にある諏訪小学校の体育館。
洪水や土砂災害、地震・津波、いずれの災害の場合も実際に避難所として使われる。最大140人までの受け入れを想定している。
そんな中で、新型コロナウイルス対策にも気を配り、高齢者や体に障害のある人も、少しでも生活しやすい避難所のあり方を考える体験会が開かれた。体調が悪い人を隔離するために設けられた部屋には、リアリティーを出すため、酸素吸入器も設置した。
体験会を呼びかけたのは、災害時でも少しでも健康的な生活をサポートしようという、災害リハビリテーション推進協議会だ。
日本災害リハビリテーション支援協会・栗原正紀代表:
自立を支援するリハビリテーションの観点から、避難所運営を地域住民と一緒にやっていければ。平時から当たり前になっていけば、いざという時に少しでも役に立つ。
避難所の生活は、非常に劣悪な環境。顕著に現れてくるのは高齢者。悲惨な状況の中で動けないと、足腰は急速に弱って、避難所の中で寝たきりになる場合も
感染症のリスク抑え、健康見守るシステム
そうした事態に至らないために求められるのが、感染症のリスクを抑えながら被災者の健康を見守るシステムで、医療スタッフの負担の軽減も考慮する必要がある。
これらを兼ね備えた健康管理支援システムの提供を目指す企業「サイントル株式会社」が、東京大学と共同研究を進めていて、この日は3種類のセンサーを活用したシステムを検証した。
1つは、布団やマットレスの下に設置し、わずかな空気圧の変化で寝ている人の心拍数や呼吸数を計測するセンサー。
十分に眠れていないようであれば、環境の改善やカウンセリングに早めにつなげることができる。
2つ目は、肌に貼り付ける薄型で軽量の体温計で、活動量も測定できる。
コロナ禍にあって外出自粛が求められる中、特に高齢者は活動量が低下していて、少しでも体力が落ちると運動機能が急激に衰えることが懸念されている。
そして3つ目が、すでに別の企業の製品として実用化されている、指につけるだけで血中酸素飽和度と脈拍数を計測するセンサー。
さらに薄型で、軽い機器の開発も進行中だ。
いずれも遠隔でモニターすることで、医療スタッフの感染リスクを抑えることができる。
参加者:
1つのタブレットで体調管理ができ、スタッフの負担が減る。活用したい
参加者:
民生委員としてみれば、高齢者(宅)に日常的に置いてほしい。独居高齢者が多いので、あると非常に便利
「長崎モデル」を活用し…高齢者らサポートへ
実は、この非接触で、つけている人の負担も少ないセンサーを活用し、一元的にモニタリングするシステムは「長崎モデル」と呼ばれている。
提唱したのは、日本災害リハビリテーション支援協会の栗原正紀代表だ。
数多くの離島を抱え、都市部でも坂道が多く、高齢化率も高い長崎。長崎で使いやすいシステムは、全国的な課題の解決につながると考えた。
東京大学工学系研究科・染谷隆夫教授:
一緒に長崎モデルの実現をと(栗原先生に)誘いを受け、研究者としては受けて立ち、実際の課題解決へ
この日の議論は、全国各県の災害リハビリテーション推進協議会に生配信され、新たな機器やシステム、そして考え方について、長崎から情報を発信した。
これから台風シーズンまで、全国どこで、どのような災害が起きるか分からない。
東大・染谷教授は、「機器類はすでに使えるレベルまできている」としている。
東京大学工学系研究科・染谷隆夫教授:
災害が起こった時、(避難所に)持っていく。デバイスそのものの不具合はない。今年の早い段階で、実際に避難所で有用性を実証する実験を開始したいと思っています
(テレビ長崎)