日本の棚田百選にも選ばれた愛媛・内子町の「泉谷の棚田」。
2021年も田植えの季節が巡ってきた。
しかし、2021年はこれまでとは違う風景となった。

まだ水もはられていない田んぼも…

上岡満栄さん:
水が張ってあったら、ええのはええと思うんじゃが。これも仕方ないことじゃろと思います。私も80歳が近うなって、後にあぜ塗りとか何とか堪わんので、休んでよかったなとは思とります

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95枚の田んぼをたった3軒の農家で守り続けている、内子町「泉谷の棚田」。

この山に後継ぎはいない。
いつもと変わらない風景に見えるが、まだ水が入っていない場所が残っている。ここはこれまで棚田のオーナー家族に貸し出していた田んぼだった。

泉谷の棚田が日本の棚田百選に選ばれたのは1999年。
有志が棚田を守る会を結成し、“棚田のじいちゃん”として親しまれた上岡満栄さんが中心になって、棚田を交流の場所として育ててきた。

しかし3年前、上岡さんは棚田から水路に転落し頭蓋骨を骨折。奇跡的に一命をとりとめたが、退院後、家族が集まり今後について話し合った。

棚田の今後を話し合う家族たち
棚田の今後を話し合う家族たち

長女・三好美千代さん:
無理はせんといてほしいなっていうのはあるし

上岡満栄さん:
棚田残す言うたって堪わんのじゃけん。オーナー制なんかはやめていこうと思いよるのよ。やったって1年か

孫・宮脇あゆみさん:
ばあちゃんが言いよったやん、普通のばあちゃんに戻りますって言いよったけど、本当それでええんじゃないかな。負担になりすぎることはもうやめて。今まで十分やったよ

自らの手で田んぼを山に返していく

上岡さんは守る会の解散を決意し、オーナー制度もやめることにした。

2021年2月、冷たい雨の中、棚田に上岡さん夫婦の姿があった。
じいちゃんが田んぼに植えたのは「栗の苗木」。オーナー家族との思い出が詰まった田んぼ一枚一枚に栗を植える。

上岡満栄さん:
先祖が苦労して作っとる田んぼをな、栗なんか植えて先祖は怒るかもしれんけど、息子がやることじゃけん。先祖も怒りもせんじゃろ。しようなかろうて言うてくれると思うよ

2人はオーナー家族に貸してきた30枚の田んぼに140本の栗を植えた。手入れする田んぼの枚数を減らして、夫婦2人でやれる範囲の米作りに変えた。

上岡満栄さん:
米作りが好きというか、小さいときから田んぼはやってきとるので、米作り抜いたら体が弱ってしまう。ああいう休んだところは崩れてもいくし、水はたまらんでも構わんわけじゃが、元に戻っていくというか山に戻っていくな自然に

自分がいなくなった後に田んぼが荒れてしまうよりは、自分の手で山に帰したい。

「あと一年、あと一年」
じいちゃんは自分の体と向き合いながら、お米を作り続ける。

(テレビ愛媛)

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