争点は開催の有無でなく観客の有無

今週に入ってメディアでは「五輪の無観客開催に現実味」という見出しが目立つようになった。これはすなわち争点が「五輪を開催するかしないか」ではなく「観客を入れるか入れないか」に変わったことを意味する。

ワクチン接種が進み陽性者が増えているとはいえ、医療体制に余裕がある現状で「開催しない」という選択肢はもう消えた。問題は観客を入れるか入れないか、だ。

海外ではワクチン接種が進んでいるものの、日本よりはるかに陽性者や死者が多い欧米で、テニスの全仏オープン、サッカーの欧州選手権、野球の米メジャーリーグなど観客を入れて開催しているのに、けた違いに陽性者や死者が少ない日本で、もし五輪を無観客にしたら世界中の人がビックリするのではないか。

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小池百合子の人気の秘密

ただ日本では東京などで緊急事態からまん延防止等重点措置に切り替わったあたりから陽性者が増加に転じた。7/11までのまん延防止は延長されることになるだろう。五輪開催の時点でまん延防止が解除されれば観客は最大1万人、まん延防止なら5千人、緊急事態なら無観客というのが言われている「相場」だが、菅首相はどんな判断を下すのか。

週明けに朝日と読売が出した東京都の世論調査の結果が面白かった。小池都知事の支持率が、単純比較はできないものの、全国調査による菅内閣の支持率よりほぼ20P高い。都のコロナ対策も国のコロナ対策に比べ「評価する」が20P高い。他社も同様の傾向だ。

退院することが発表された小池東京都知事
退院することが発表された小池東京都知事

小池さんの方が菅さんより人気がある理由はたぶん経済より感染防止の方に軸足を置いているように見えるからだろう。例えばお酒の提供について国は「4人以内ならOK」としたのに対し都はさらに厳しく「2人以内」にした。しかも国の機先を制して「ソフトな口調」で注意喚起するやり方は都民にわかりやすいのかもしれない。

飲食店に行くとお酒の提供基準を厳しくした小池さんへの「憎しみ」の声の方を良く聞くのだが、やはり全体で見れば「感染防止が一番」と思っている人の方が多いのだろう。実際にメディアもおおむねその論調である。

菅さん、無観客はダメだ!

こういう事を考えると菅さんは観客を入れての五輪開催は非常にやりにくいと思う。冷静に考えれば人の往来は増えてもワクチン効果でかなり相殺される。しかも海外から来る選手や関係者のワクチン接種率は高い。もちろん陽性者は増えるだろうが、重症者や死者が劇的に増えて医療崩壊に進むとは考えにくいのだ。

今朝の菅首相の表情
今朝の菅首相の表情

ただコロナに関して日本では冷静な判断をしにくい。ネガティブな情報があるとすぐにそれを政治利用する人が現れ、国民がパニックに陥ってしまうからだ。

でも菅さんには頑張って5千人でもいいから観客を入れて五輪を開催してほしい。古代五輪は神ゼウスのための「お祭り」だった。時を経て、現代では世界中の都市が持ち回りで「お祭り」の幹事役を務めることになっている。今年は東京が幹事役としての義務を果たす番である。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】