東京都では新型コロナウイルスの新規感染者数が増加し、リバウンドの兆候が見られる。新たな脅威となるのが、感染力が強いとされるインド型変異ウイルスの「デルタ株」。日本でも感染者に占める割合が増加している。

ワクチンは変わらず有効なのか。今回の放送では西村康稔新型コロナ対策相を招き、識者とともに新たな変異株に対する方策を伺った。

水際対策が“ざる”との指摘について

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新美有加キャスター:
前半出演の長妻昭元厚労相・立憲民主党副代表から、ウガンダ選手団から感染者が出たことに「ざる」だとの指摘があった。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
検査を毎日やっているからこそ陽性者がわかる。シャボン玉のようなバブルの中から出ないことで感染を外に広げない、また外の人が入らないことで接触が起こらず感染が広がらないという、いわゆるバブル方式。本当に機能させるため、今回のことを教訓にしながら今、急いで対策強化している

反町理キャスター:
オリンピック関係者に対する網の目が甘いのでは、という指摘がある。

西村康稔 新型コロナ対策相:
今回のウガンダの選手は、正式には未確認だが、2回ワクチンを打ったもののその後1週間以内だったと。2回打った後に2週間が経過して効果を発揮する。海外からの関係者にはきちんとその形で接種し、入国してもらう。また体質的に接種できない方には、入国前から7日間、入国後にもずっと検査がある。厳しい検査体制。このようにワクチン接種と検査でカバーし、かなりリスクを下げられる。

重症者が抑えられる一方、軽症や中等症者により病院負担増

新美有加キャスター:
新規感染者数が増えているイギリスでは、5月になってインド型変異ウイルス(デルタ株)の割合が増えている。東京でも1割程度がこれに感染。危機感は。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
日本でも高齢者の接種は進んできた。もちろん2回接種が前提だが、1回でも少しは効果がある。イギリスの場合は2回接種もかなり進んでいる中、重症化予防だけではなく感染予防の効果もあるとわかってきている。結果、死者数はさほど増えていない。これはワクチンの効果。

一方、入院者数はじわじわ増えている。重症よりも軽症や中等症になりやすい若い方の感染が増え、重症の方を扱う大学病院の負担はさほど増えないものの、中小の病院の負担増が考えられ、ここをよく見なければいけない。 

反町理キャスター:
病院の負担、寺嶋さんの病院は?

寺嶋毅 東京歯科大学 市川総合病院 呼吸器内科部長・教授
寺嶋毅 東京歯科大学 市川総合病院 呼吸器内科部長・教授

寺嶋毅 東京歯科大学 市川総合病院 呼吸器内科部長・教授:
最近はやはり徐々に入院が増えている。 ただ年齢層は30〜50代ぐらいで、幸い今のところ重症化はしていない。しかし一時期より入院のペースが速くなった印象はある。

若い人に接種を進めていくための方策

反町理キャスター:
若い人の感染が増えており、一方若い人のワクチン接種は進んでいない。

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
一般論としては、高齢者と若い人ではリスクが異なる。基礎疾患のあるなしでも異なる。では「正しい怖がり方」は何か。どの専門家も答えられない。そこで今までは、個々のリスク的要素をあまり考えず画一的対策をしてきた。「自分たちはそんなにリスクは高くないのになぜそこまでやらされるのか」という不満を持つ若い人は少なくないとは思います。 

反町理キャスター:
若い人たちに対するコロナ教育、ワクチン接種の勧奨。広報・宣伝など打つ手は。 

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
本当に悩ましいところ。副反応についてのことや、河野太郎担当相が行っていたようなデマを正す発信の必要もある。若者に影響力のある芸能人やインフルエンサーの方にお願いすることも含め、様々なアイデアを整理している。

河野太郎ワクチン担当相のツイッターより
河野太郎ワクチン担当相のツイッターより

新美有加キャスター:
私は20代ですが、若い人には自分の好きなものしか見ない傾向があるように思う。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
YahooとかLINEなどの広告の活用は様々な防止策で行っている。あるいは、尾身茂会長に若い人との対談、座談会をやってもらうとか。

反町理キャスター:
それ見るかなあ。新美キャスターの顔を見ると、その対談に効果はなさそうだが……。

微妙な反応を示す新美有加キャスター(左) 
微妙な反応を示す新美有加キャスター(左) 

新美有加キャスター:
若い人には意外と現金なところがある。リスクとメリットを天秤にかける。旅行に行けなくて苦しいのなら、ワクチンを打ったら行けますよ……といったことは。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
最近、何かポイントがつくとか、お店で割引があるといった施策がアメリカでも行われて若者の接種拡大に繋がっている。どこまで国がやるかという問題はあるが、自治体と連携し、民間事業者の知恵も伺っていく

新美有加キャスター:
視聴者の方から「感染の鎮静化には若者にどれだけ多く接種するかが最大の問題。2回接種した人にはワクチンパスポートを発行し、それを条件にGoToキャンペーンを再開すべき」とのご意見です。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
ワクチンパスポートを国内でどうするか、様々な議論があった。体質的にワクチンを打てない方もおられるので、それだけではなかなか難しい。先ほど申し上げたように、ワクチン接種はできるだけ広げるとともに、そうではない方は検査でしっかり陰性を確認するというのが一つの方法。インセンティブについては様々に考えていきたい。 

現在の“ワクチン休止”は一時的な在庫精査

新美有加キャスター:
現在接種が進んでいるワクチンの効果について。イギリスの公衆衛生庁がファイザー社製のワクチンの予防効果について次のような数字を発表しています。2回接種したとき、英国型(アルファ株)で93.4%、インド型(デルタ株)で87.9%。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
重症化予防に加え感染予防にも期待している。モデルナ製のワクチンも、ファイザー同様のmRNAワクチン。同じくデルタ株に対してかなりの効果を持つと見ています。 

反町理キャスター:
イギリスやイスラエルでは、一定数の人の接種後に新規感染者数は減るが、その後変異株によって増えている。政府としては、ワクチンの効果は限定的だという覚悟を持って見ている? 

西村康稔 新型コロナ対策相 経済再生相
西村康稔 新型コロナ対策相 経済再生相

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
いや、むしろ今はこのデルタ株の広がる速さとワクチン接種のスピードとの競争。接種はかなりスピードアップしている。

反町理キャスター:
スピード競争とのことだが、職域接種について河野大臣から申請を休止すると話があった。政府高官からも現時点では再開しないと。これについては。 

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
足元はものすごいスピードで打っており、職域接種も申請がものすごく増えたため一旦休止しているが、いわば嬉しい悲鳴。現在の休止は、多めに申請がなされているが実際の希望者がそれより少ないというケースに対し、在庫についての精査をしている。その上で判断していく。必要なところに必要な量だけをしっかり届けて、円滑に、そしてスピーディーに進めていきたいという基本的方針。

今後も多くの変異型が出現する

増田道明 獨協医科大学医学部 教授
増田道明 獨協医科大学医学部 教授

新美有加キャスター:
今後、変異ウイルスの新たな登場にどう対応していくべきなのでしょうか? 

増田道明 獨協医科大学医学部 教授:
変異型の命名をデルタなどのギリシャ文字で行うようになっているが、そのギリシャ文字が足りなくなるんじゃないかという冗談もウイルス学の中ではある。それほど多くの変異株が出てくるということを想定しなければ。

ポイントとしては、変異型の登場を早く察知すること。技術的にはウイルスの全ゲノム情報を解析できる。日本国内でも行っている。この解析をどんどん進めて早く察知する。それから、変異株の感染力、重症化の頻度、ワクチンの効果などをデータとしてどんどん集めていく。国際的データベースもあり、日本国内にも新興再興感染症のデータバンク事業がある。これらによりモニタリングの体制を整える。

反町理キャスター:
政府は、既存のワクチンで対応できなくなる変異の可能性は当然あるという前提で見ていますよね。これに対する備えは。

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
今回のワクチンが、これほど早くできたのは、mRNAという新しい技術を用いたことが背景にある。非常に早くワクチンの開発ができるようになっており、この技術を使っていろんな変異に対して備えていく。世界的な競争です。 

反町理キャスター:
その技術は日本国内にもあるんですか? 

西村康稔 新型コロナ対策・経済再生担当相:
日本の国内でもやっている方々がおられる。また、時間はかかるがDNA型でも様々なワクチンのタイプがある。国産のワクチンについては、過去の不幸な歴史もあり日本ではなかなか進まなかったが、これを進めるために予算もしっかり確保することになっており、開発を急ぎたい。

BSフジLIVE「プライムニュース」6月29日放送