岩手県内の貴重な生き物や、未来に残したい自然。
長い冬が終わり、地域に見守られながら巣立ちを迎えたフクロウの姿をカメラが追った。
農業が盛んな集落の「守り神」に…
長かった冬が終わると、生き物たちの鼓動が聞こえてくる。山は鮮やかな色であふれ、止まっていた時間が一気に動き出す。
この記事の画像(12枚)冬を乗り越えた命が動き始めるころ…
紫波町赤沢地区は、農業が盛んな山あいの集落だ。地域の人たちが集まって見つめる先には、大きな巣箱があった。
それは、フクロウの巣箱だった。
ここでは、4年ほど前から巣箱を合わせて18個かけていて、地区をあげてフクロウを呼ぶ活動をしている。
紫波町赤沢公民館・工藤睦夫館長:
3羽くらい巣立ってくれたらな…
とある巣箱では、こちらをのぞく親鳥の姿があった。利用しているようだ。
ただ、簡単ではない。
別の巣にやってきたのは天敵のテン。巣を荒らされてしまったようだった。
赤沢地区は、リンゴ・ブドウの名産地だ。
フクロウは、畑を荒らすネズミを食べてくれるという。
弘前大学などの研究では、リンゴ畑でフクロウが子育てをした時、ネズミの個体数が63%減ったというデータがある。
「農業の守り神になってくれるかもしれない」、そんな思いを巣箱に込めた。
外の世界へ…元気いっぱいの3きょうだい
ヒナが誕生するのか心配なところだが、赤沢地区からいったん、岩手・滝沢市へ。
滝沢市にも、林の中に巣箱がある。
フワフワの頭が動いている。ここでは、無事ヒナが3羽かえった。
フクロウは、ふ化してから1カ月で巣立つという。
ぎゅうぎゅう詰めの巣で、元気いっぱいの3きょうだい。外の世界に興味津々…、ひとり立ちはもうすぐそこだ。
5日後、巣箱の近くに巣立ったばかりのヒナがいた。新緑のまぶしい世界にまだ慣れていないようで、ウトウトしている。
カラスに襲われたり、危険は絶えないが、やがてひとりでエサをとるようになり、大人になっていく。
豊かな自然と人々に囲まれ…3羽が巣立つ
そして、紫波町は田植えの季節を迎えた。
巣箱はどうなったのか? 心配になって見にいくと、巣の中は空だった。
仕掛けてあった無人カメラを見てみると…
紫波町赤沢公民館・工藤睦夫館長:
あ、顔出した
カメラにはこの2日前、恐る恐る巣立とうとするヒナの姿があった。
紫波町赤沢公民館・工藤睦夫館長:
きちんと確認できたので、良かったですね。ここはリンゴが特産になっている。それを守るためには、これからも育てていきたい
2021年は、3つの巣箱で3羽ほどの巣立ちが確認された。
親鳥が、ネズミのようなエサをくわえていたり、ウサギを捕まえている様子も映っていた。
豊かな自然と人々に囲まれ育っていったフクロウは、どこかで私たちを見守っているのかもしれない。
(岩手めんこいテレビ)