ブリとヒラマサの“いいとこ取り”

この記事の画像(12枚)

見た目はブリだが、実はブリとヒラマサを交配させた「ブリヒラ」という魚。

食べてみると、味はブリだが、食感がこりこりしていて身が引き締まっていて歯応えがある。

近畿大学が独自開発したこの「ブリヒラ」。

その名のとおり、ブリとヒラマサの“いいとこ取り”をした魚だ。

ブリは脂がのっておいしいが、冬が旬。そのため、夏は脂身が少なく、味や品質が落ちてしまう。

一方、ヒラマサはその逆で、夏に脂がのっている。

この2つを組み合わせることで、夏でも旬のブリのような味や食感を楽しむことができるという。

家食需要に商機

全国に138店舗のスーパーマーケットを展開するベイシアは、16日から、このブリヒラを全店舗で本格販売すると発表。

なぜ今、鮮魚の販売に力を入れるのだろうか。

ベイシア 橋本浩英代表取締役社長:
現状の資源の枯渇であるとか、または、その結果、価格が高くなっていることもあって、なかなか普段食卓で食べる機会が少なくなっている商品であると思っている。

生鮮魚介類の購入量は、2010年から右肩下がりだった。

しかし、新型コロナの影響で家食需要が増えたことから、2020年、10年ぶりに前年を上回った。

ベイシア 橋本浩英 社長:
コロナ禍においては、魚を料理して家で食事を取る人が増えてきたので、魚の需要も必然的に上がってきている。

持続可能な養殖水産物

また、このブリヒラの養殖は、海から稚魚を捕獲しない、水産資源を全く消費しない、持続可能な水産物の養殖方法としても注目されている。

ベイシア 橋本浩英 社長:
どんな魚を養殖として取り組んでいったら、もっと客が安定的に安価でおいしく召し上がれるような状況がつくれるかということで、近畿大学とこういった点を取り組みながら、水産業の安定に取り組めていけたらと思う。

「共有地の悲劇問題」の解決にもつながる

三田友梨佳キャスター:
エコノミストで企業ファイナンスを研究している崔真淑さんに聞きます。ブリとヒラマサのいいとこ取りということですが、いかがですか?

エコノミスト・崔真淑さん:
お魚が大好きな私としては早く食べたいなと思いますが、おいしくて供給も安定しているというのは消費者にとってもありがたいですし、漁業の新しいビジネスモデルとしても注目されてくるのかなと思います。

三田キャスター:
持続可能な新しい漁業が求められていますよね?

崔真淑さん:
今回はSDGsらしさも感じさせる取り組みなのかなと思っています。

漁業資源を持続可能なものにするために緊急度が非常に高くなっていて、経済学でもいわれる「共有地の悲劇問題」という危機に直面しています。

三田キャスター:
漁業における「共有地の危機」とはどういうことでしょうか?

崔真淑さん:
海であるとか、そこで捕れる魚は人類そして地球みんなの物であるので、漁業資源を長期の目線で温存するためには乱獲してはいけない。

でも短期間に一部の漁業者が自分たちの利益をかさ上げするためだけに乱獲してしまう。長期の利益と短期の利益がミスマッチして漁業資源が毀損する現象が起きているんです。

なので、「共有地の悲劇問題」というのは環境問題を考える上でも注目されるポイントです。

三田キャスター:
実際にそうした影響もあってか、私たちが親しんできたサンマ、うなぎなどが慢性的に捕りにくくなっているようですね。

崔真淑さん:
そうなんです。
今回の試みは稚魚を捕獲しない、海の水産資源を全く消費しないという視点では非常に興味深いですし、「共有地の悲劇問題」を解決する上でも注目されるのかなと思っています。

三田キャスター:
将来の世代も今の世代と同じように海の恵みを受け続けられるためにも、持続可能な漁業の体制をしっかりと構築する重要性を強く感じます。

(「Live News α」6月15日放送分)