コロナ禍の中、東京オリパラの開催を巡り日本社会はいまだ賛否が分かれている。こうした中、オリパラ公式文化プログラムが発表された。そのテーマは「まぜこぜ=多様性」だ。

「まぜこぜ=多様性」を可視化し体験する

東京都内で6月1日、東京オリパラの公式文化プログラムの一環として発表されたのが、映像プログラム「MAZEKOZEアイランドツアー」だ。「MAZEKOZE(まぜこぜ)」は多様性をわかりやすく表現した言葉だ。この映像は「多様性を可視化し体験する」をコンセプトに制作され、8月22日からオンラインで世界に配信される。

東ちづるさんが構成・演出から総指揮まで行う
東ちづるさんが構成・演出から総指揮まで行う
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この映像の構成・演出から総指揮まで行うのが東ちづるさんだ。東さんは29年間社会活動を続け、2012年には一般社団法人Get in touchを設立して代表を務めている。Get in touchはアート、音楽、映像や舞台などのエンタテイメントを通じて、誰も排除しない個を大切にする「まぜこぜ」の社会を目指しており、これが東京オリパラの基本コンセプトである「多様性と調和」にまさに合致してこの事業の実現に繋がった。

多様な個性あるパフォーマーらが出演

東さんはこう語る。

「オリパラの開催にはいろいろな声があって、賛成・反対のそれぞれが『そうだよなあ』と思います。ただ文化プログラムには別の意味があって、テーマが多様性と調和なので、こうした映像がつくれるのならこんなチャンスはないなと思いました」

映像に出演するのはシンガー・ソングライターの平原綾香さん、リオパラリンピック閉会式に出演した義足のダンサー大前光市さんや車いすダンサーのかんばらけんたさんら。出演者にはドラァグクイーンや全盲の落語家、ダウン症の書家、自閉症のダンサー、こびとプロレスラーら、ジェンダー、年齢、国籍、障がいの有無など様々な個性のあるパフォーマーやアーティストたちもいて、総勢約150人だ。

平原綾香さん(舞台右端)ほか、多様な個性あるキャスト約150人が揃い踏み
平原綾香さん(舞台右端)ほか、多様な個性あるキャスト約150人が揃い踏み

「多様性はすべての人にとって居心地がいい」

東さんは2017年から「月夜のからくりハウス 平成まぜこぜ一座」を主催・制作しており、出演者の多くは今回の「MAZEKOZEアイランドツアー」と重なっている。

「プロのマイノリティパフォーマーは日本のテレビでなかなか見られませんが、実はたくさんいます。私はこれまでこうしたパフォーマーたちと活動してきましたが、今回の映像に出演することで仕事のチャンスが広がればと思います。キャスティングでは新たな人にもお願いしましたが、『多様性には賛同するけどその中に入るのはどうも』という方もいて、それが今の現実だなとあらためて気づきました」

本来の多様性がすべての人にとって居心地がいい
本来の多様性がすべての人にとって居心地がいい

東さんは「本来の多様性がすべての人にとって居心地がいいということを映像にしたいと思いました」と語る。

視聴者はオンラインの映像を見ながら、愛、身体、アートなどテーマ設定された9つの島をツアーし、出演者が披露するエンタメの世界を楽しむ。

「まぜこぜ」の原点は1964東京五輪にあった

「まぜこぜ」がオリパラのコンセプトになったのは、2020東京が最初ではない。実は前回、1964東京五輪こそ「まぜこぜ」の先進的な大会だったのだ。

オリンピックの閉会式で行われた選手の行進は途中から各国の選手が入り乱れた。

当時のNHKの実況ではアナウンサーがその様子をこう語っている。

「そこには国境を越え宗教を超えた美しい姿があります。このような美しい姿を見たことがありません。誠に和気あいあい、呉越同舟、グリーンのブレザーの隣には白いブレザーの選手がおります。紺のブレザーの隣には真っ赤なブレザーの選手がいます」

三島由紀夫氏が「無秩序の美しさ」と絶賛

この後日本の旗手は各国の選手たちに担ぎ上げられ、アフリカ系の選手がランニング姿と白いパンツで走り回った。しかしアナウンサーは「まことに和やかな風景であります」と語っていた。

この閉会式を見ていた作家の三島由紀夫氏は「各国の選手が腕を組み一団となってかけ込んできたときのその無秩序の美しさは比べるものはなかった」と感動を書き綴っている(報知新聞1964年)。この閉会式の出来事は、その後東京方式としていまも受け継がれている。

1964は世界初の「まぜこぜ」パラだった

また1964東京パラリンピックは、パラリンピックという名称が初めて公式に使われた大会だった。ただ当時はその前身であるストークマンデビル競技大会が脊髄損傷の車いすの選手のみが参加可能だったので、他の身体障がいのある選手は参加できなかった。

しかし東京パラリンピック開催に尽力した別府の医師・中村裕氏は、車いすの大会に続いてすべての身体障がいの選手が参加できる大会も開催したのだ。まさに東京パラは初の障がい「まぜこぜ」大会だったのだ。

1964東京パラリンピックは世界初の障がい「まぜこぜ」大会だった(写真提供:社会福祉法人太陽の家)
1964東京パラリンピックは世界初の障がい「まぜこぜ」大会だった(写真提供:社会福祉法人太陽の家)

五輪憲章では人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教などの理由による差別を禁止している。多様な人たちが「まぜこぜ」に生きていく社会の実現は、2020東京オリパラが世界に向けて掲げる理想である。そしてこの理想を体現するのが「MAZEKOZEアイランドツアー」なのだ。

多様な人が共生する社会を具現化する「MAZEKOZEアイランドツアー」
多様な人が共生する社会を具現化する「MAZEKOZEアイランドツアー」