既存の優れた技術を応用

トヨタ自動車の「水素エンジン車」が、世界で初めて24時間耐久レースに参加。
脱炭素への新たな選択肢として名乗りをあげた。

この記事の画像(15枚)

22日、静岡県の「富士スピードウェイ」で行われた、24時間の自動車レース。
ここに、世界初、水素エンジンで走る車が参戦した。

トヨタが4月に発表したばかりの水素エンジン車。

同じ水素を燃料とする燃料電池車が、水素と空気中の酸素を反応させて電気を起こすのに対し、水素エンジン車は、ガソリンなどの化石燃料の代わりに、水素を燃焼させてピストンを動かし、動力を得ている。

燃料電池車
水素エンジン車

エンジンそのものは、これまでのものとほぼ同じで、一部を改良して水素だけで走れるようにしたというが、最大の特徴はCO2がほとんど出ないということ。

積み込む水素タンクの一部も、市販されている燃料電池車のものを使うなど、今ある優れた技術を応用することで、より開発を進めやすくなっているという水素エンジン車。

電気自動車以外の選択肢を世界に提示

今回のレースに、ドライバーとしても参加するトヨタ自動車の豊田章男社長は...。

トヨタ自動車・豊田社長:
(水素エンジン開発の)ゴールは、カーボンニュートラル。全部がBEV(バッテリー式電気自動車)になったら、日本では100万人の雇用が失われる。カーボンニュートラルにも、(電気自動車以外の)こんな選択肢があるということを世界中に伝えていきたい。

いよいよ、レーススタート。
ナンバー32の水素エンジン車も、猛スピードで第1コーナーへと向かう。

スタートから約30分後、初めてのピットインを終え、向かった先にあったのは、移動式の水素ステーション。

現時点では、ガソリン車に比べて、細かな燃料補給が必要で、水素の充塡(じゅうてん)に要する時間は約7分。

使われる水素は、福島・浪江町にある施設で再生可能エネルギーを利用して作られている。

どこまでも、脱炭素にこだわった水素エンジン車。
その後、電気系統などのトラブルはあったものの、24時間で358周。
1,634kmを走り切った。

トヨタ自動車・豊田社長:
今回の参戦は、未来のカーボンニュートラル社会に向けての選択肢を広げるための第一歩。
未来づくりはトヨタ自動車一社ではできない。(自動車業界で働く)550万人の仲間に加え、今回は、それ以外の水素社会を知らなかった方々、自動車に興味がなかった方々が未来への扉を開け、われわれとともに旅を始める準備ができたレースだったのではないか。

脱炭素社会の実現に向け、水素エンジン車の挑戦はこれからも続く。

業界全体で水素自動車の盛り上げを

三田友梨佳キャスター:
事業戦略に詳しい早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。
水素自動車の24時間耐久レースへの参加、ここにはどんな意味が込められているのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
今回のレースの参加は、水素自動車のアピールだけではなくて、自信の表れだと思います。

レースは技術開発のチャレンジの場ですし、ごまかしの効かない真剣勝負の場です。
そのレースに水素エンジンを持ってきたというのは、本格的な普及に向けた、ここまで出来ているよと言った自信を持っている証拠なのではないでしょうか。

三田キャスター:
未来の車というとEVを本命視する声がありますが、水素自動車も選択肢の一つということですね。

長内厚氏:
そうですね。水素エンジンの場合、ガソリンの代わりに水素を動力とするわけですが、構造やエンジンの仕組みは今までと変わらないわけです。
ですから今までの技術を使って自動車業界のノウハウをそのまま活かせるという優位性のメリットがありますし、さらに日本の場合、火力発電が多いので、EVよりももしかすると環境負荷もこちらの方が良いかもしれません。

何よりも日本の自動車産業の雇用を守れるところが非常に大きなプラスになると思います。

三田キャスター:
水素自動車の普及に向けてクリアすべき課題はどんなことがありますか?

長内厚氏:
燃費がまだまだ改善の余地があります。
これを改善することと、水素ステーションの整備、これが重要になってきます。

これはトヨタ単独ではなくて、業界全体で水素を盛り上げていくことも必要だと思います。
例えば、トヨタは今、マツダとも提携関係にありますが、マツダが得意とするロータリーエンジンは水素エンジンにも向いていると言われているので、EVだけではないCO2削減の選択肢を業界全体で盛り上げていくことが重要なのではないでしょうか。

三田キャスター:
コストやインフラなどについてもまだ乗り越えるべきことは多いかと思いますが、普及に向けて開発が加速していくことが期待されます。

(「Live News α」5月24日放送分)