ウクライナ疑惑をめぐる公聴会
アメリカ・トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐり、議会・下院は13日初の公聴会を開いた。大統領の弾劾に向けた調査は、新たな局面に入っている。
公聴会が始まる午前10時に合わせて、取材班が議会周辺に到着すると、
気温3度の寒空の下、 トランプ 大統領の弾劾を求める人たちが「トランプ大統領を逮捕しろ!」と叫んでいた。

下院の建物の中に入ると記者たちの熱気でむせ返りそうになった。
所狭しと並べられたカメラ、座り込む記者、 13日と15日の2日間、あわせて12時間近くに及んだ公聴会の様子は、全米に生中継された。



トランプの「職権乱用」印象付けにまずまず成功
13日の公聴会では、アメリカ国務省でウクライナ政策を担う現役外交官2人が公開で証言。
「政治的なキャンペーンのために安全保障上の支援を保留するというのは、どうかしていると思う」
駐ウクライナ米大使館・テーラー代理大使は、語気を強めて批判した。

いわゆる「ウクライナ疑惑」についての証言だ。
トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と交わした電話で、来年の大統領選で有力な対抗馬と目されるバイデン前副大統領とその息子に関する疑惑の調査を促すためにウクライナへの軍事支援を凍結したとされる。
さらに、15日に行われた2回目の公聴会では、トランプ政権に不当に解雇されたと主張するヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が証言に臨んだ。この証言の最中、トランプ大統領がツイッターに「ヨバノビッチ氏が赴任した国はどこも悪い状況になった」などと投稿。
野党・民主党も「証人への脅迫行為だ」と激しく反発する事態に・・・。2回の公聴会はいずれも、トランプ大統領の「職権乱用 」ぶりを印象付けるものとなった。
民主党は今後、公聴会を重ね、トランプ大統領による不正な圧力や要求があったことを示す証言を引き出すことで弾劾に向けた世論の支持を広げたい考えだ。
しかし、内心“早く終わらせてしまいたい”焦りもにじむ 。
“クビ”にするどころか民主党にとってブーメランに?
下院で過半数を握る民主党は「訴追」はできるが、 「罷免する」には上院の3分の2以上の賛成が必要だ。共和党から20人の造反者が出ない限り実現しないのだ。上院の共和党は結束が固く、現状では「罷免」はほぼ不可能。
そんな中、民主党が描くのは、
年内に下院で弾劾訴追
↓
来年1月中に上院での弾劾裁判を済ませる
↓
2月から本格化する大統領選に集中する
という青写真だ。

上院には大統領選の民主党有力候補、サンダース氏やウォーレン氏がいる。弾劾裁判が後ろにずれ込めばワシントンに足止めされることになり、選挙活動にも影響が出てくる。トランプ大統領を挫く為の弾劾訴追が、 逆にトランプ大統領を利する事態にもなりかねないのだ 。
また、国民も弾劾の賛否をめぐっては、世論がほぼ真っ二つに割れている。
ロイター通信が13日に行った調査によると、弾劾訴追に賛成する人の割合は46%、一方の反対する人も43%に上るとの結果が出ている。先月の調査は賛成48%、反対42%だった。
公聴会を経て、弾劾に反対する人が1%増える結果に・・・・。
民主党が期待する効果は今のところ出ていない。
弾劾訴追に向けた手続きが長引けば「トランプ大統領をクビにできないのに、単なる政治ショーじゃないか」との不満が有権者から出かねない。議員たちは、こうした微妙な空気感に神経をとがらせているのだ。
来年11月の大統領選に向け、分断が深まるばかりのアメリカで、
弾劾が民主党にとって「吉と」出るか 、「凶」と出るのか、今後の展開に目が離せない。