次期駐日大使はアジア系蔑視か

「バイデンが選んだ駐日大使は、アジア系蔑視の過去がある」

次期駐日大使に確実視されているラーム・エマニュエル氏について12日、保守系のニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」がこう伝えた。

同氏は、シカゴ出身の61歳。下院議員からオバマ政権の首席補佐官になり、2011年からシカゴ市長を8年間務めた。バイデン大統領とは、共にオバマ政権を支えた親密な関係で、ワシントンに知己も多く、大物の駐日大使になると考えられているが、議会で承認を得る過程でいろいろな問題が指摘されそうだ。

その一つが「ワシントン・フリービーコン」が指摘する問題だ。

それは同氏がシカゴ市長時代の2019年2月に開かれたシカゴ国際関係会議で、基調演説を行った時のことだ。

司会者のアジア系の女子高校生がエマニュエル市長を紹介すると、登場した市長は彼女と握手をしながら写真撮影をしている間何やら小声で話し、手に持っていた書類で女子高校生の尻を叩いて自ら縁談に登場するとまずこう言った。

エマニュエル市長がアジア系の女子高校生を書類でトンと叩いた場面
エマニュエル市長がアジア系の女子高校生を書類でトンと叩いた場面
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「今彼女に『貴女にも養子縁組の話があるの?』と聞いたのです」

続いて市長は客席に戻った女子高校生に向かってこうとも言った」

「貴女は静かですね。そうでしょう?それによく勉強もしますね。だから問題ないのですよ」

会議の翌日、シカゴのアジア系住民の団体「アドバンシング・ジャスティス」は「エマニュエル市長は、我々の社会に対する古い害のある常套句を使った」と抗議する声明を発表した。

アジア系の子女は扱いやすいので養子縁組が多いというのは、白人の優越意識を反映したものに他ならない。

また「静か」で「よく勉強する」というのも、アジア系住民を「少数民族のモデル」として黒人やヒスパニック系住民との分断をはかる企みだと声明は非難していた。

少数民族をめぐる問題でも糾弾

その他の少数民族をめぐる問題でも、市長時代のエマニュエル氏は今改めて糺弾されている。

2014年10月、17歳の黒人少年がシカゴ警察の白人警察官に16発の銃撃を受けて殺害されたもので、結果的に警察官は第二級殺人罪で有罪になったが、捜査の決め手となったビデオが遅れて真相究明の障害になったと批判された。

実は翌年、エマニュエル氏は再選選挙を控えており、「もし警察官が無抵抗の黒人少年を射殺するビデオが公開されていれば再選はなかっただろう」と当時ニューヨーク・タイムズ紙が指摘していた。

民主党内からも反対の声

選挙のために証拠のビデオを隠蔽したのではないかという疑惑も、エマニュエル氏の駐日大使登用の話と共に思い出されて民主党左派の議員から承認に反対の声が上がっていた。

米上院の議席は現在民主党50対共和党50で、議長のカマラ・ハリス副大統領の持つ一票で新任大使は承認されると計算できるが、こと少数民族の問題になると党派を離れて意思決定をする議員が多い米国のことなので予断を許さない。

新駐日大使問題はすんなり東京に着任できるのだろうか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。