“補食”という言葉を知っているだろうか。栄養素を補うため、通常の食事に加えて何かを食べることで、体づくりや健康維持のために行われる。
この補食に、カステラ業界が乗り出した。大手の製造・販売企業である「文明堂東京」(東京・新宿区)が、補食用に特化した「V!カステラ」という商品を開発したのだ。

スポーツに親しむ人が食べることを想定し、形状は手軽なバータイプ。商品名はVitality(元気・持久力)、Victory(勝利)につながり、そのためにカステラが補給しやすくVariable(変化)するという、3つの「V」に由来する。

原材料は卵、砂糖、小麦粉、水飴、蜂蜜の5種類とシンプルで、栄養強化を目的とした添加物を一切使用していないのが特徴だ。1本あたりの栄養成分は次のようになっている。
<1本当たりの栄養成分(推定値)>
エネルギー:150カロリー
たんぱく質:3.2g
脂質:2.5g
炭水化物:28.4g
食塩相当量:0.1g

V!カステラの価格は、1ケース10本入で2000円(税込)。文明堂東京のオンラインショップで5月6日に販売されると、10日午前までに1万6560本(1656セット)を売り上げたという。

確かに栄養補給に役立ちそうではあるが、一般的なカステラとは何が違うのだろう。味や食感に違いはあるのだろうか。文明堂東京の担当者に聞いてみた。
原材料や栄養成分そのままで高さを圧縮
ーーなぜ、カステラを補食にしようと考えた?
補食はスポーツ前後のエネルギー補給などに用いられますが、カステラもその候補となることがあります。理由は主原材料である「卵」で良質なたんぱく質を取り入れられること。そして油を含まず、食物繊維も少なく消化吸収が早いことです。
競技開始1時間前でも食べる人もいるほどですが、自社の調査では、お客さまの中にはスポーツをはじめ、登山に持っていくなど実際に補食されていることもわかりました。そこで「文明堂が作れる形のスポーツ向けカステラ」を作ろうと、開発しました。

ーーV!カステラと一般的なカステラは何が違う?
独自製法(※)により、原材料や栄養成分はそのままで、通常のカステラ一切れに比べ、高さを2分の1ぐらいまで、コンパクトに仕上げました。具体的には、高さ5.5~6センチメートルを2.5センチメートルほどに圧縮しています。その結果、スポーツシーンで持ち運びやすくなっております。食感も従来のふんわりとは違い、ぎゅっと詰まったしっとり新食感です。
※製造方法は特許出願中
ーー開発でこだわったところは?
自社のカステラの強みである「シンプルな原材料で安心安全」という点は、V!カステラでも大切にしました。日持ちを延ばしたり、運動に関連する効果を付けるために添加物を加えることはせず、普通のカステラと同じ栄養素というところに強くこだわりました。

しっとり感で“口の水分問題”もなし
ーー食感や味は?口の水分は持っていかれない?
食感は従来から感じられるしっとり感が、凝縮されてより増したようでございます。通常のカステラと水分量が違うというわけではないですが、試食調査でも多くのスポーツシーンでお試しいただき、水分を摂取しなくても召し上がれると評価をいただけております。味は味覚の感じ方によりますが、通常のカステラでイメージされるものと同じです。
ーーカステラにある“底の紙”やザラメはある?
スポーツをする方に極力ごみを出させないよう、底の紙はついておりません。歯切れの良さや飲み込みやすさなども意識し、ザラメも付けておりません。

ーー補食としてのカステラはどう役立つ?
補給のタイミングや量によりますが、トレーニング前は消化に良く、炭水化物を補うことですぐにエネルギーに変えられると言われています。トレーニング後は、素早い体のメンテナンスにつながると言われています。ただし、一般論としてのお話です。
運動の前後や小腹が減ったときにお勧め
ーーV!カステラはいつ食べるのがお勧め?
携帯しやすい点を体感していただきたいので、ランニングやサイクリング・登山などの場面で持ち運んでいただくのをお勧めします。ビジネスバッグなどに忍ばせて、日常生活での小腹を満たしていただくのもお勧めです。

ーーどんな人に食べてほしい?
運動を楽しむ人から勝利を目指すアスリートまで、スポーツを愛する皆さまに食べていただけるとうれしいです。現在はオンラインショップ限定で先行販売しておりますが、より多くのお客さまにお届けできる販路を見定めて、今後の展開をしていきたいと考えています。
カステラはもともと補食に適していたが、独自製法で圧縮することにより、食べやすい新食感も生まれたようだ。これからはプロテインバーのように、カステラを持ち歩く人も増えるかもしれない。
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