「流域治水関連法」可決…東日本台風の教訓ふまえ

2021年4月28日、国会で今後の水害対策の基本となる法律が成立した。
参議院本会議で可決された「流域治水関連法」。
激甚化する災害に対応するため、大きな河川はもちろん、小さな支流も含む「流域全体」を国・自治体・企業・住民などあらゆる関係者が協働して洪水対策に取り組むというもの。

この法律には、2019年の東日本台風の教訓も踏まえられた。
堤防が決壊した阿武隈川を例にみると、「遊水地の整備」や「堤防の強化」など、流域全体を関係者みんなで対策していこうというもの。

流域治水関連法 例:阿武隈川
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国の担当者は、法律の意義をこう強調する。

国土交通省 河川計画課・廣瀬昌由課長:
これまでの治水事業・河川改修・ダムの建設・下水道の整備は、「線」であったり「点」であったりという整備をやってきたかと思います。それを「面」に展開して、関係者と一緒に整備をやっていくために、非常に大きな転換だと私も認識しております

国の担当者が「“面”で展開する」と話すこの法律。東京大学大学院の客員教授であり「防災マイスター」の松尾一郎さんはどう捉えているのか。

東京大学大学院客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
流域治水という言葉は、私たちはどこにいても、実は大きな川・小さな川、河川の流域内に暮らしているんですよ。
例えば福島県で一番広い流域って考えたとき、阿武隈川流域ではないですか。これまでの治水対策というのは、例えば堤防を強化したりとか、上流にダムを作ったりとか、中流含めて遊水地を整備したり、防災施設をピンポイントで整備してきたんですよ。
だけど、最近の雨の降り方を含めたときに、川だけで対応すると限界もあったんですよね。川の管理者のみならず、水をためるとか、水を遅らせて出すとか、流域のさまざまな機関とか、あるいは国民、私たちが対策を進めようというのが「流域治水」なんですよ。
それほど温暖化の影響というのが、実は私たちの足元まで来てるんだということですね

「防災マイスター」の松尾一郎さん

「流域治水」に基づき、県内で「河道掘削」

「流域治水」の考え方に基づき、阿武隈川の流域ではすでに対策が動き出している。

福島河川国道事務所・土田昭夫事業対策官:
白い部分と黒い部分とに分かれていると思いますが、だいたい白い部分がこれまでの工事でかさ上げをしてきた部分となります

白い部分が工事でかさ上げをした部分

2021年3月に、堤防のかさ上げ工事が完了した福島・本宮市の阿武隈川。
約10年前から堤防のかさ上げが計画されていたが、2019年の東日本台風には間に合わなかった。

福島河川国道事務所・土田昭夫事業対策官:
元々の堤防より30~40cmくらい、堤防を水が越して、市内の方に水が流れていったというふうに聞いております

東日本台風 2019年

かさ上げ工事の完了により、東日本台風と同じ規模の大雨に耐えられるようになった。

また、郡山市の阿武隈川など福島県内12箇所で国が進めているのが「河道掘削」。
上流から流れ込み、川に溜まった土砂を撤去することで、流れをスムーズにして水位を下げることを目的にしている。

福島県内の12箇所で進む「河道掘削」

さらに、東日本台風で相次いだ、水位が高くなった本流に支流がせき止められ、水が堤防からあふれてしまう「バックウォーター現象」を防ぐためにも、有効な対策となる。

水が堤防から溢れるのを防ぐためにも有効

しかし、河道掘削には削った土砂の保管場所の確保など課題もある。

そのような課題解決の糸口を見付けるためにも、国や市町村だけでなく、住民などにも参加を求める「流域治水」への理解を、いかに広げられるかが今後の鍵を握ることになる。

福島河川国道事務所・土田昭夫事業対策官:
昨今の激甚化する雨であったりといったところをふまえますと、私たち河川管理者だけでは防ぎきれない洪水が頻発してきております。皆さんと一緒になって治水を進めていくということでは、非常に意義あることだと考えております

ーー県内ではハード面の対策が進んでいるが、2019年には東日本台風があった。改めてどんな課題が浮き彫りになったのか?

東京大学大学院客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
東日本大風は、雨の降り方が全然違ってましたよね。福島県の中では、中通りだけではなく浜通りも厳しかったですよ。本流も支流も含めて。
これから何が重要かというと、例えば「浸水リスク」。
これは国交省が管理しているところであろうが、県が管理してるとこるだろうが、一体となって「浸水マップ」というのは必要だし、あるいは観測・監視体制がとても重要だと思うんですね。特に阿武隈川では、国や県、あるいは河川管理者の連携とか、郡山市においては流域内の企業の方々とか、県民の皆さんと危機感を共有し高める。
そういう意味では、タイムラインといったようなソフト的な早期避難体制作りが重要だとわかったと思います。それをぜひ進めるべきだということです

“浸水の危険が著しいエリア”は開発・建築を許可制に

「流域治水関連法」には、ソフト面の充実も盛り込まれている。
その1つが「町づくりとの連携」。

例えば、「浸水被害の危険が著しく高いエリア」を知事が指定し、開発や建築を許可制にすることが今後可能になる。また、地区の実情に応じた浸水対策も進める。
これは、市町村が段階的に床面の高さを規定することもできるようになるというもの。

“町づくり”との連携

これからの“町づくり”のあり方に一石を投じるような動きにも思えるが…

東京大学大学院客員教授・防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さん:
これは相当に踏み込んだ取り組みだと、私は高く評価してるんですよ。
従来、川の浸水対策の治水対策で“町づくり”まで一体となって考えていく取り組みはなかった。例えば、2020年の7月豪雨で熊本県の球磨川で支流が氾濫して、最寄りの特別養護老人ホーム14人の高齢者の方が亡くなったんですよ。
避難だけで命を守ることが、改めて限界だということがわかったわけですね。川の近くで浸水リスクのあるところというのは、そこに福祉施設を整備するとか、建設するということについて、許可制にすると。安全な“町づくり”視点で改めていこうということですね。これが一番大きな変換点だと私は思います

(福島テレビ)