5月26日に日本全国で“スーパームーン皆既月食”が見られる。

月食とは、太陽・地球・月が一直線に並ぶとき、地球の影の中を月が通過することによって、月が暗くなったり、欠けたように見えたりする現象のこと。

引用:国立天文台
引用:国立天文台
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太陽光がほぼさえぎられた地球の濃い影を「本影」、その周りの薄い影の部分を「半影」と呼び、この「本影」に月の一部、あるいは全部が入った状態を一般的に「月食」と呼んでいるが、月の全体が本影に入り込む現象が「皆既月食」。

だんだんと欠けていった月は皆既食になると赤銅色に見え、そのミステリアスな雰囲気も人気となる天体ショーだ。

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一方、“スーパームーン”とは、一般的には地球との距離が近く、大きく見える満月のことだが、ふとした時に「なんだか今日は月が大きくて明るいような…」と気付いたことがある人もいるだろう。

実は5月26日には、皆既月食とこの“スーパームーン”のタイミングが重なり、「2021年で最も大きな満月の皆既月食」が見られるというわけだ。時刻は20時9分から20時28分までの約20分間だ。

SNSではすでに「今から楽しみ!」「晴れるといいなあ」などの声が挙がっているが、ではこの“スーパームーン皆既月食”、一体どれくらい珍しいものなのだろうか?
そして、ぜひこの天体ショーを見てみたい!という人は、どんな点に注目したらより楽しめるのだろうか?国立天文台にお話を伺った。

次回は12年後…普通の月食との違いは?

――「最も地球に近い満月が皆既月食になる」のはどれだけ珍しい現象?

月食自体、日本からは見られないものを含めても平均して年間1~2回程度しか起こらない珍しい現象ですので「その年、最も地球に近い満月が皆既月食となる」ことは、それよりもさらに珍しい現象となります。

「その年、最も地球に近い満月が皆既月食となる」のは、

前回…2015年9月28日(6年前/日本では見えない) 日本で見えたものに限定すると、1997年9月17日(24年前)
次回…2033年10月8日(12年後/日本でも見られる)


このように、単純な「○○年おき」という周期はありませんが、次回も見ることができる方は多いでしょう。

引用:国立天文台
引用:国立天文台

――“スーパームーン皆既月食”は普通の皆既月食より明るく見えるの?

「スーパームーン」は天文学用語ではないのですが、仮に「その年、最も地球に近い(大きく見える)満月」のこととしてご説明すると、確かにその満月は、その年最も地球から遠い(小さく見える)満月よりも視直径(見かけの大きさ)が約14%大きくなり、約30%明るく見えることになります。もちろんこれは、月食の状態ではないときの月です。


――では、どんなところが違ってくる?特別なところはある?

月が大きく見えるからといって、今回の月食の時に特別なものが見えるというわけではありません。

実は、月食の見え方は、月の見かけの大きさよりも、月が地球の影(以下、本影)のどの部分を通過していくのか、そして、地球の大気の状態がどうなのかということに大きく左右されます(月が大きく見える=月が地球に近い位置にあるため、月が夜空の中を移動していくスピードはわずかに速いのですが、目に見えて高速になっているわけではありません)。

2018年1月31日に起こった皆既月食と比較してみましょう。
今回は、2018年の皆既月食よりも、欠け始めてから皆既食になるまでに時間がかかります。これは、月が斜めに本影に入り込んでいくためです(本影の真横近くから月が通過していった2018年に比べて時間がかかっています)。

このように、地球の影のどの部分を月が通過していくのかということが、月食の継続時間に大きな影響を与えます。しかも今回は、本影の浅い位置を通過するため、2018年よりも皆既食の継続時間が短いのです。

2018年の皆既月食時の月の動き(引用:国立天文台)
2018年の皆既月食時の月の動き(引用:国立天文台)
今回の皆既月食時の月の動き(引用:国立天文台)
今回の皆既月食時の月の動き(引用:国立天文台)

また、皆既食のときの月の色合い(赤銅色とも呼ばれる)や明るさは、月が大きく見えることの関与は小さく、おもに地球の大気の状態によります。

地球の大気の中にチリが少ないと大気を通り抜ける光の量が多くなり明るいオレンジ色に、逆にチリが多いと大気を通り抜ける光の量が少なくなり、黒っぽく見えます。今回月は、本影の、浅い部分を通ります。本影の深い(最も暗い)部分の近くを通った2018年よりも若干明るく見えるかもしれません。ただし、大気中にチリが多い場合には月が暗く見えますので、これも何とも言えません。

皆既月食はいつも同じように見えるわけではなく、どの皆既月食も一期一会。今回の見え方だけが「特別」になるわけではありません。
とはいえ、昇ってきたばかりで地平線の近くに見えている月(錯覚の影響で大きく見えると感じることが多い)が徐々に欠けていき、皆既食になる様子と地上の風景との共演は、とても印象的です。そこに「今日の満月は、今年地球に一番近い満月」という知識がプラスされることにより、みなさまの記憶に残る格別な体験になること間違いなしでしょう。

もちろん、昇ってきたばかりの月が大きく見えると感じることの全てが錯覚の影響というわけではないでしょう。月が大きく見えるなあ、きれいだなあ、どうしてなのかなあと、今回の皆既月食を楽しみ、これをきっかけに、天文や宇宙に少しでも興味を持っていただければ、とても嬉しく思います。

引用:国立天文台
引用:国立天文台

月の見かけの大きさが変化するのは、地球をめぐる月の公転軌道が楕円形をしているため、月と地球の距離が一定ではないことが原因。さらに、その軌道は太陽や地球の重力を受けて変化しているため、新月や満月のときの月が地球から何万kmの位置にあるか?というのは、毎回異なってくるそう。

そんな中、5月26日の満月は地球から約35万7000kmの位置にあり、2021年で最も遠い(地球から約40万6000km)12月19日の満月と比べると、直径は約14%大きく、約30%も明るく見えるそうだ。

ただし、皆既月食の見え方に大きな違いをもたらすかというとそうではなく、月の大きさの違い自体、国立天文台も「比較対象なしに、月を眺めて大きさの変化に気づくのはたいへん難しい」と話している。

そして、次回観察できるのは12年後という貴重な“スーパームーン皆既月食”を楽しむ方法についても聞いてみた。

東から南東方向の地平線近くまで見渡せる場所での観察がおすすめ

――観察する際に用意したいものや、こんな点に注目するべき!というポイントは?

今回の皆既月食は、月がまだ高い位置までに昇ってこないうちに起こりますので、東から南東にかけて、地平線近くまでがよく見渡せる場所での観察がおすすめです(緊急事態宣言中、夜間の外出自粛が呼びかけられている地域では、自宅での観察がベストですが、自宅からは見られない方は、近くに安全に観察できる場所を探しておくと良いでしょう)。

皆既月食は、肉眼でも十分に観察できる天文現象ですが、双眼鏡や望遠鏡があると、月を拡大して観察できるので、より楽しむことができます。皆既中の月の色は、その時の大気の状態によって異なります。どのような色に見えるのか(黒、灰色またはこげ茶、暗い赤、明るい赤、オレンジ)、観察してみると良いでしょう。

記憶だけでなく、写真や映像に記録してみてはいかがでしょうか。広角レンズで景色とともに撮影しても良い記念になりますし、望遠レンズで拡大して月を撮影すると、皆既中の月の色も記録できるでしょう。

引用:国立天文台
引用:国立天文台

最後に改めてスケジュールを確認しておこう。
月は5月26日18時45分から欠けはじめ、その後、20時9分から20時28分までの約20分間、皆既月食となり、徐々に欠けた部分が小さくなっていき、21時53分に部分食が終わる。
皆既月食は日本全国で観察することができるが、北海道西部・東北地方西部・中部地方西部・西日本では欠けた状態の月が昇ってくる「月出帯食」となる。

すでに楽しみにしている人も多い“スーパームーン皆既月食”。
貴重な天体ショーが見られる天気となることを願うばかりだが、26日はぜひ双眼鏡を片手に、夜空を見上げてみてはいかがだろうか。

 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。