買収提案「現時点での評価は不可能」

東芝は4月15日午前、臨時の取締役会を開き、車谷暢昭社長からの辞任の申し出を受理した。後任には、前の社長だった綱川智会長が復帰する。

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車谷氏は、コメントで「東芝の再生ミッションが全て完了し、現在かなり達成感を感じている。いったん3年の激務から離れて、心身ともに充電したい」としている。

後任には、前社長だった綱川会長が復帰。

東芝・綱川代表執行役社長:
東芝を信じ、東芝グループの再生にともに取り組んできた従業員の皆さんとともに、従業員の総合力が最大限に発揮されるように取り組んでいく。

一方、イギリスに本拠を置く外資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズからの買収提案について、指名委員会の永山委員長は「初期提案は内容が乏しく、当社から要請したものではない唐突なもの。現時点での評価は不可能で、慎重に検討する必要がある」としている。

東芝・綱川代表執行役社長:
私に課せられた喫緊のミッションは、今後開催される定時株主総会やCVCからの買収に関する初期提案などへの対応など、大変重要な経営の舵取りを行っていくことにある。まずは、改めて株主の皆さまをはじめとするステークホルダーとその信頼構築に努めたいと考えている。

現場情報の反映は戦略修正に不可欠

三田友梨佳キャスター:
電機メーカーの事業戦略にくわしい、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。東芝は現在の難局をどう乗り越えるのか、難しい舵取りが求められますね?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
今回の社長交代によって、トップと経営陣の泥沼の戦いというものは避けられましたが、もともとの問題だった、いわゆる“ものを言う株主”、アクティビストの反発をどうするのかなど、まだ課題は何も解決してないわけですね。

車谷社長は、トップダウンで迅速な意思決定を目指そうとしたわけですが、現場がついてこなければ机上の空論に過ぎないわけです。綱川新社長には、強いリーダーシップが求められますが、トップダウンの迅速な意思決定は、ボトムアップに支えられていないといけないんです。実は、その現場の担当者や中間管理職の協力は、何よりも重要です。

三田友梨佳キャスター:
トップダウンを支えるために、ボトムアップはどういう役割を果たすのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
東芝のようなエレクトロニクス産業は、非常に高い不確実性に直面しています。先が読めない中では、現場の担当者やミドルマネジャーが、変化の兆しにいち早く気付くことになります。これは現場にいるからです。

トップダウンの戦略を不確実性によって生じる変化に合わせて修正をするというのが、実はボトムアップという話の本質なんです。現場の意見を聞くというのは、民主的なプロセスだからやった方がいいという話ではなく、一番大切なのは、戦略の修正のためにトップが知り得ない現場の情報を戦略に反映させる、そのための手段として現場の協力が必要なんですね。

現場の支持なく経営陣の一部が動いても、上滑りしてしまって戦略としてはいい結果が生まれないということです。

三田友梨佳キャスター:
トップが交代した東芝は今、何を優先すべきなのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
福島の廃炉も含めてエネルギーの分野で、東芝は非常に大きな役割を担っています。日本の安全保障にも関わる重要な会社なわけです。その東芝という現場と、何よりも日本の雇用を守るということが大切なわけです。

ITの強みを生かしながらGAFAが持っていないようなものづくりの強みを生かす、そういう経営戦略が東芝には求められますし、東芝には強い現場がまだあります。それを生かす経営者と戦略が何よりも必要だと思います。

三田友梨佳キャスター:
東芝の買収については、複数のファンドが関心を示しているとされる中、混乱は今後も続く可能性がありそうです。

(「Live News α」4月14日放送分)