「いちごが口の中でジュ~ってジュースみたい」…真っ白な羽二重餅で包んだ「完熟いちご餅」

名古屋市南区に、最も甘いタイミングで摘み取ったいちごを使った「完熟いちご餅」で人気の和菓子店ある。完熟いちごを、ふわふわの羽二重餅で包んだその優しい味は、多くの人に愛されている。

いちごの柔らかい果肉と、餅の小気味よい歯切れの絶妙なバランスを生み出すのは、42歳の和菓子職人の技と勘だ。

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名古屋市南区の「名鉄常滑線・道徳駅」から北へ歩いて数分のところにある「一朶(いちだ)」。6年前にオープンすると、瞬く間に行列ができる店として知られるようになった。

店内には豆大福や、本わらび餅、鬼まんじゅうなど、素朴ながらも、他とはひと味ちがう手作りの和菓子が並ぶ。

人気は真っ白な羽二重餅で果物を包んだ「フルーツ餅」。この時季はいちごにキウイ、バナナやパイナップルが揃う。

中でも看板商品が「完熟いちご餅」。
その名の通り、完熟し糖度がピークに達したところで摘み取ったいちごを使っている。

女性客A:
いちごが口の中でジュ~ってジュースみたいで。お餅も柔らかくて口当たりがすごく良くて

女性客B:
いちご大福よく食べますけど、すごく甘いよね、ここのいちご

この極上のいちご餅を生み出すのは、和菓子職人の伊藤誠敏さん(42)。

伊藤誠敏さん:
きっかけは自分が単純に(完熟いちごを)食べて、ものすごく感動しちゃったっていう…

続けることでしか身につかない技術…餅の程よい粘りや歯切れの良さを引き出す職人技

「完熟いちご餅」作りは、まずはいちごを包む羽二重餅作りから。もち米を粉にしたもち粉の中でも、最も粒子が細かい羽二重粉を使用する。これに水を加え、手で練る。

伊藤さん:
硬さとか粘りをみながらゆっくり(水を)入れて…。ある程度の硬さになった時に一気に練る。その判断が職人の腕の見せどころ

餅の程よい粘りや、歯切れの良さを引き出す重要な工程だ。思い描く食感を生み出すのに頼りとするのが、手の感覚。理想の硬さになったら、さらに水を加えて一気に練る。

伊藤さん:
この世界に入りたての頃は、全然わからなかったです。「今だ」って言われても、「どこだったんだ?」って

続けることでしか身につかない技術こそが、職人の技だ。

手の感覚だけで生地に空気を含ませる…ふんわりとした真っ白な羽二重餅へ

練り上げたら蒸し器へ。15分ほど蒸したら銅鍋に移し、砂糖を加えて火にかける。この作業は一般的には機械で行うが、伊藤さんは手作業。生地をふんわりとさせるために、手の感覚で空気を含ませていく。

伊藤さん:
力を入れ過ぎず、下から空気を入れる感じですね

砂糖を含んだ生地は焦げやすく、素早く行うのが鉄則。5分ほど練り続けると、見るからにふんわりとしてきた。

ここで、生地をよりふんわりさせるため、メレンゲを加える。気泡を潰さないように、やさしく生地でメレンゲを包みこむように合わせる。

伊藤さん:
仕上げる時、これをお客さんに出していいかを自問自答して。それがあげるタイミングですね

食べるお客さんの目線で…。「伸びる餅ではなく歯切れの良い餅」、仕上がりを見極めるのは、冷静な目だ。見事にふんわりとした真っ白な羽二重餅ができあがった。

「非日常の上等な菓子」ではなく「日常の菓子」を…試行錯誤し「フルーツ餅」を考案

名古屋にある江戸時代から続く和菓子店に生まれた伊藤さんは、大学卒業後、一旦はその店に入った。しかし、16年前、父親と共に独立。

新しい店も繁盛したが、伝統的な手法で茶席など非日常の上等な和菓子を作っていた伊藤さんは、「日常で口にする菓子を作りたい」と思うようになり、6年前再び独立した。

そして、看板商品にと考案したのが、ふんわりとした羽二重餅をまとう「フルーツ餅」だった。

何度も試行錯誤し完成した、ふわふわとして歯切れのいい羽二重餅。その自慢の生地で、その時季の旬なフルーツを包み込む「フルーツ餅」は、瞬く間に人気商品に。

餅の歯切れと柔らかな果肉の絶妙なバランス…職人の技と勘が生んだ「完熟いちご餅」

「完熟いちご餅」作りもいよいよ佳境。完熟いちごは傷みやすいため、市場にはあまり出回らない。そのため、契約農家から直接仕入れている。日によってはサイズや品種が違うが、伊藤さんは農家から受け取ったものは全て使うと決めている。

伊藤さん:
甘さが一番際立つんですけど…。パンパンな状態なんです。だから、ちょっと触っただけで破裂しちゃったりとか

収穫したばかりの完熟いちごに、「つなぎ」となる白あんをのせ、ふんわりとした羽二重餅で包む。いちごの美味しさをダイレクトに感じてほしいと、大きいいちごの場合は、薄い生地で包む。

「完熟いちご餅 Mサイズ」(1個432円)。
驚くほどふんわりとした羽二重餅の食感の後、あふれる完熟いちごの甘味と香り。口の中で、餅の小気味よい歯切れと、やわらかな果肉が、絶妙なバランスで混ざり合う。伊藤さんの技と勘が生んだ逸品だ。

伊藤さん:
暮らしの中に当たり前のようにあるもの、一番それがお客さまを喜ばせるものじゃないかなと…

「コロナ禍ですが、完熟いちご餅を食べてほっこりしてほしい」と伊藤さんは話す。

和菓子店「一朶」は、名鉄常滑線 道徳駅から北へ歩いて数分。

(東海テレビ)

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