障害がある人を支える「介助犬」。実は、愛媛県にいる介助犬は、松山市にいる1匹だけだが、その1匹も間もなく介助犬を引退する。
引退を前に、共に暮らす女性が別れの決断を下した。

車椅子の女性を支える愛媛県で唯一の介助犬

「複合性局所疼痛症候群」という病気で、車椅子で暮らす松山市の妻鳥和恵さん(49)。

「複合性局所疼痛症候群」のため車椅子で暮らす妻鳥和恵さん
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職場でも自宅でも、妻鳥さんの生活を支えているのが、愛媛県内で唯一の介助犬、ゴールデンレトリバーの「クリーム」だ。

愛媛県内唯一の介助犬・クリーム(10)

しかし、クリームは2021年、介助犬の引退の目安となる10歳になる。
老化に伴い、これまでにように妻鳥さんの生活を支えることが難しくなったクリーム。

妻鳥さんは、自身とクリームお互いのために、介助犬としての役目を終わらせて、クリームと別れるという決断をした。

妻鳥さんがクリームと出会ったのは、2014年のことだった。
妻鳥さんは、この2年前に勤務先で足をひねり、神経が傷ついたことが原因で、今の病気を発症した。焼けつくような痛みが全身を襲い続け、寝たきりの状態が1年ほど続いた。

その後、リハビリを続け、介助犬の受け入れができる状態に回復。そして、神奈川・横浜市の介助犬育成団体から迎えたのが、当時3歳のクリームだった。

妻鳥和恵さん:
下を向いて(物を)拾うのは、他の人に比べたらしにくい作業ではあるし、バランスを崩して転倒する可能性、危険が伴うものなので、やっぱり(クリームが代わりに)やってくれるっていうのは、ありがたいかな

手や足が不自由な人を助ける介助犬は、法律に基づいて訓練・認定された「身体障害者補助犬」の一種だ。
この補助犬は、介助犬のほかに、目の不自由な人のための「盲導犬」や、耳の不自由な人のための「聴導犬」の3種類に分けられる。

このうち、盲導犬の数は全国で909匹で、全都道府県に少なくとも1匹はいて、広く知られている。
一方、介助犬は、全国25の都道府県にわずか57匹、愛媛ではクリーム1匹だけとなっている。

介助犬は愛媛ではクリーム1匹だけ

“介助犬”の使命から離れるため…別れを決断

妻鳥和恵さん:
(菜の花畑は毎年)必ず来てる場所で、もう来年は、ここには一緒には来られないって思うと、きょうだけじゃなくって、また家族で来ようかなって思うし。クリームにとっても、多分覚えてる場所じゃないかなと思うんです

クリームが介助犬を引退するのは、2021年夏。引退後は、妻鳥さんの家を離れ、クリームの兄弟が暮らす静岡県の家庭に引き取られる予定となっている。

妻鳥和恵さん:
(元気な間に)次のご家庭での生活を楽しんでもらったらいいなと思っているので、お別れといっても、「新しい出発よ」みたいな感じで送り出したいなと思っています

クリームとのお別れについて語る妻鳥さん

当初、妻鳥さんは、クリームのあとを継ぐ別の介助犬を迎えたうえで、引退したクリームもペットとして面倒を見るつもりだった。

しかし、自身との生活を続ける限り、介助犬としての使命から、クリームは妻鳥さんの世話をし続ける。

生活を支え続けてくれたクリームへの感謝から、引退後は、ゆっくりと過ごしてほしい…

妻鳥さんは、あえてクリームと別れる決断をした。

妻鳥和恵さん:
クリームが来るから、寝たきりから脱することもできたし、自分の日常生活の動作が向上する傍らには、クリームがいた。クリームに私のことを、私たちの家族のことを忘れられたくないけど、忘れるくらい楽しんでほしい、新しい生活を

クリームへの感謝を語る妻鳥さん

娘たちにとっても“姉妹”のような存在

フライングディスク競技大会

妻鳥さんが双子の娘とともに参加したのは、障害者の「フライングディスク」競技大会。この日も妻鳥さんの傍らには、クリームがいた。

妻鳥和恵さん:
この子の弟がいるんです。その子を飼っている方が、面倒を見てくれるというので

大会の参加者:
別れるんですか。寂しいですね

妻鳥和恵さん:
夏までしか一緒にいないので

妻鳥和恵さん:
「あれ、きょうはいないの?」と言われるよりは、「これで最後なんですよ」って、その方にも伝えておきたい。自分の中で言い聞かせている分、その方たちにも伝えていきたい

妻鳥さんの娘たちにとって、クリームは姉妹のような存在だ。

長女・あおいさん:
(クリームは)妹で、この人(次女・あかねさん)より姉です

左 次女・あかねさん 右 長女・あおいさん

次女・あかねさん:
絶対この子(クリーム)が一番下やろ

次女・あかねさん:
多分、夏におらんなったら寂しくなると思うけど、全然実感がないです

次女・あかねさん

長女・あおいさん:
別の家に行くと聞いた時は、ずっと寂しいと思っていて、受け入れられなかったけど、時間と共に、ずっと家にいるよりも、他の家庭で大切にされた方がいいのかなと

「介助犬」を社会に広く知ってほしい

間もなく訪れるクリームとの別れを前に、妻鳥さんは今、介助犬という存在そのものを社会に広く知ってほしいという思いを抱いている。

妻鳥和恵さん:
介助犬全体に、すてきで良い印象を持ってもらうことが、普及につながるとも思っているので、こういった大会の時にいろいろな方に触れあってもらうのが、私の一番の希望であり、ありがたいことかなと思っています

愛媛に1匹だけの介助犬・クリーム。何気ない日常を大切に…
きょうも妻鳥さんの生活を支えている。

(テレビ愛媛)