開放時間が通常より長くなる

自動ドアに設置したカメラ画像から車いす利用者を検知し、ドアの開閉スピードや開放時間などを制御…。こんな技術をNECソリューションイノベータ株式会社(東京・江東区)などが開発した。

AIによる画像解析技術とデジタルサイネージ(電子看板)を組み合わせた自動ドアの技術で、性能などを確かめるため、実証実験を4月19日~6月30日に実施する。

この自動ドアでは、AIによるカメラ画像解析で車いす利用者を検知すると、自動ドアの開放時間が通常より長くなるほか、すれ違う人にドアのデジタルサイネージで「車いすの方が前方にいらっしゃいます」などと表示し注意喚起をすることができる。

設置される自動ドアとデジタルサイネージのイメージ
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実証実験は聖マリアンナ医科大学病院(神奈川・川崎市)で実施。

同病院のメインエントランスは、新型コロナ対策の来院時の検温などで混雑が発生しやすくなっていたことから、“エントランスの混雑と来院者の安全対策の課題解決”として、NECソリューションイノベータが協力して実験を行うこととした。

バスの時刻表や告知なども表示される予定

なお、デジタルサイネージでは告知やバスの時刻表などの情報を配信することができ、車いす利用者だけでなく、多くの人の興味を引く自動ドアとなりそうだ。

車いす利用者が余裕をもって通れるだけでなく、製品化されたら、皆がより安心して通ることができる自動ドアとなることだろう。しかし今回の実証実験では、車いす利用者が対象とのことだが、今後、松葉杖やベビーカーの利用者をこの技術で検知できるのだろうか?

NECソリューションイノベータ・営業統括本部の市田悦大さんに聞いてみた。

自動ドアセンサーが感知する前に開け、開放時間は5秒に延長

ーーこの新しい自動ドアを開発したのはなぜ?

画像認識技術を用いた、移動において助けが必要な人を含む、全ての人が安全・安心に通行できる自動ドアの開発を、フルテック株式会社とNECソリューションイノベータ株式会社で進めてまいりました。

製品化を前提とした実証実験を実施するにあたり、「患者さまの安全第一」という聖マリアンナ医科大学病院様の理念・基本方針と合致する事から、株式会社共立アイコム様を通じて聖マリアンナ医科大学病院様へご提案させていただき、今回の実証実験の実施に至っております。


ーー「画像解析で“車いす”と判断する」とは、具体的にはどういうことなの?

多数の車いすの画像をAIに学習させることにより、AIが自律的に判断するようにしています。

車いす利用の人 イメージ

ーー開閉スピードや開放時間の制御について、もっと詳しく教えて。

車いすを検出した時点(約4メートル手前)で、自動ドアセンサーが感知する前にドアを開けます。その後、開放時間を通常1秒のところ、5秒に延長し、閉まる速度を通常250mm/sのところ、150mm/sまで下げます。

なお、車いすを検出する距離やドアの開放時間、閉まる速度は調整が可能です。
 

実験結果を受けて、今後は白杖や松葉杖・ベビーカーなども検討

ーー実証実験はどういった観点で検証するの?

評価の観点としましては、天気や日差しの変化でのカメラ画像への影響による認識率の変動や、車いすのバリエーションへの対応の評価などがあげられます。また、出入口に設置したサイネージによる情報発信の有効性については、通行者の目に留まりやすい位置となりますので、ご評価いただけるものと考えております。


ーーちなみに、自動ドアに「デジタルサイネージで情報提供」はどうやって思いついた?

商業施設や病院などに限らず多くの建物の自動ドアに、その施設をご利用の方への注意事項や前を通る方への集客のために、お知らせの紙やポスターが貼られています。それはその場所が告知や広告のために適した場所だからと思います。であれば紙媒体以上にその効果が高まるであろうデジタルサイネージを組み込むことのニーズはあると考えました。

車いす利用の人 イメージ

ーー実証実験後の展開は?

有効性が確認できれば、医療機関のみならず、各種福祉施設や自治体の施設など、より安全安心なエントランスが求められる施設への導入をご提案してまいります。また、商業施設などでのサイネージを利用した広告配信や、アミューズメント活用など、新たなエントランスの価値向上にも取り組んでまいります。


ーー車いすだけでなく、松葉杖やベビーカーなどにも反応するの?

今回の実証実験では車いすだけを対象としておりますが、今後は白杖や松葉杖、ベビーカーなど、実証実験の評価結果を受けて順次対象範囲を広げてまいります。


ーー今後は、さらに自動ドアをどのようにしていきたい?

全ての人にとって自動ドアが安全安心な入口となるようにしていきたいと考えております。また、自動ドアを通る方の様態や属性に合わせた情報(例えば車いす利用者の方が使用される多目的トイレの位置など)を一体型サイネージで提供することで、あらゆる施設のエントランスをより魅力的なものにできると考えております。

多目的トイレなどの位置情報を表示することも

今回の実証実験ではカメラ画像を分析し、来院者の様子や入退場者数の情報も収集。院内の混雑状況を把握することで、換気作業の判断に活用するという。また、混雑状況・予測の公開などにも取り組んでいくとのことだ。(※実証実験で収集された画像データは、AIの分析の使用後に破棄される)

また今後は、AIに学習させるものを増やすことで、ベビーカー利用者など対象を広げていく予定だという。こういった技術の活用が、安全安心で魅力的なエントランスへの大きな一歩となるのではないだろうか。
 

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