スイーツから「おいしい循環」

店主自慢の絶品スイーツ。
おいしさへのこだわりから、新たな魅力が生まれた。

ザクッとしたクッキー生地に、ふんわりとしたクリームが乗ったチーズケーキ。

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ユートピアアグリカルチャー・長沼真太郎代表取締役社長:
とにかくおいしいお菓子をと思っておりまして、本当にそれが全てです。
結果的に、地球に、環境に良かった

おいしさを追求した先にたどり着いた、意外なゴールとは。

こだわりが出会いをもたらす

農業生産法人の「UTOPIA AGRICULTURE」が販売している「CHEESE WONDER」。

通常は週2回、数量限定でオンライン販売をするのだが、この日はイートイン形式でのイベントが行われた。

番場成花記者:
こちらのチーズケーキ2層になっていてふたつの味が楽しめます。

イベント中に訪れた人は:
最初凍っているので、時間がたつごとにちょっとずつ食感とか、味の感じが変わっていくのが面白くて、おいしかった

クリームのフレッシュさが一番の売りだが、そのおいしさへのこだわりが、ある出会いをもたらした。

ユートピアアグリカルチャー・長沼真太郎代表取締役社長:
自分たちで牛を80頭と鶏を5,000羽くらい飼っているが、その原材料を最大限生かしてお菓子を作りたい。
おいしさを追求する中で、放牧酪農に出会った

よりよい原材料を追求する中でたどり着いた「放牧酪農」。

牛のゲップとして排出されるメタンガスは、地球温暖化の大きな要因とされているが、放牧酪農は、そのメタンガスを土壌や草に吸収、隔離してオフセットする可能性があると言われている。

アメリカで放牧酪農を知った長沼さんは、実際にオフセットできているのか、北海道大学と共同で調査を開始。

さらに、お菓子作りの際に出たお菓子のくずをニワトリの餌にして、ニワトリのふんを肥料化。

その肥料を牛の牧場にまいて土壌を改良するなど、循環型の酪農に挑戦している。

ユートピアアグリカルチャー・長沼真太郎代表取締役社長:
いい草を食べた牛がよりおいしい牛乳を出して、そのおいしい牛乳で作ったお菓子が売り上げを作って、その分のお金を、次はまた牛の土地に投資していく。
お菓子自体をただ食べるのと、そのお菓子の作る背景のストーリーを知ったうえで食べるので、全然おいしさは違って、何倍も違うと思って。
毎年毎年、全てが良くなっていく。
そういう循環ができていると思うので、そういった面でもサスティナブルだというふうにも考えている

おいしさへの追及が生み出した、サスティナブルなスイーツ。

環境へのやさしさが、隠し味なのかもしれない。

放牧酪農のメリット

内田嶺衣奈キャスター:
とにかく美味しそうでしたけれども、こういった取り組み松江さんはどうご覧になりますか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
チーズケーキを通して、環境にこだわって作っている酪農家の方々の人が思い浮かぶ。
これを応援しようって気持ちになるのが大事だと思うのです。

放牧酪農ということなのですが、環境に対するサステイナビリティは出てきた通りなのですが、それに加えてもう1つ大事なサステイナビリティ「産業としてのサステイナビリティ」という視点にも注目する必要があると思うのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
実際日本の酪農をはじめとする畜産業は、生産人口が減っていく中で、担い手の不足はまさに事業の存続における課題になってきているのです。

そんな中で、この放牧酪農というのは酪農全体の2割くらいを占めているのですけれども、先ほどの環境面とか品質面のメリットに加えて、経営の効率をうまく高めていけば、担い手不足の解消にも繋がるメリットが出せるのではないかと私は期待しているのです。

内田嶺衣奈キャスター:
具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
大規模酪農に比べてこういった設備が必要ないということで、長期的な投資というのは抑えられる。
また大量の餌というものを購入する必要がないので原価が抑えられているとか、コスト効率を高めることによって一定の利益を出すことができる。

この辺が放牧酪農における一つのメリットにつながりやすい。
結果的には少人数の経営だとか、若者がこういった事業に参入していく障壁を減らしていく。
こういったところにもつながるメリットではないかなと思うのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
こういったサステイナビリティというと環境面に目がいくんですけれども、まさに産業そのものを成り立たせる人のサステイナビリティにも注目して応援していく必要があるというふうに思います。

内田嶺衣奈キャスター:
私自身も商品を選ぶ際に、環境や人に優しいものというのが選ぶ基準の1つになってきています。
一人一人の声は小さなことかもしれませんが、その背景を知った上で商品を選ぶ人が増えれば増えていくだけ、より良い循環につなげていけるように思います。

(「Live News α」 4月2日放送分)