季節変化の目安となる開花や鳥の初鳴きなどを観測する「生物季節観測」。

気象庁は3月30日、廃止・縮小すると昨年発表していたこの「生物季節観測」の方針を一転し、新たに環境省・国立環境研究所と連携して発展的な活用に向けた調査を始めると発表した。

たんぽぽの開花日も廃止
たんぽぽの開花日も廃止
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気象庁は1953年からこの記録を取り始め、2020年1月の段階では全国58の気象台・測候所で34種の植物、23種の動物を対象に、開花や初鳴きなどを観測していた。
しかし、近年では気象台周辺の都市化などによって動植物の数が減少し、観測すること自体が難しくなっていたという。

こうした中、昨年11月10日、昆虫や鳥など動物の観測は全て廃止し、「アジサイ・イチョウ・ウメ・カエデ・サクラ・ススキ」の、植物6種のみに変更すると発表していた。

(参考記事:季節の目安となる「動植物の観測」を気象庁が見直し 34種から6種に激減の背景は?

とくダネ! 2020年11月12日放送
とくダネ! 2020年11月12日放送

このため観測種の廃止・縮小は今年1月1日から実施されているはずだったが、3月30日になって気象庁は「生物季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査を始めると発表したのだ。

”復活”ではなく、これまでと違う観点での「観測」も

ただ、昨年まで気象庁が対象としていた34種の植物、23種の動物の観測を復活させるということではなく、試行調査の結果などを踏まえて、現在の6種から観測する動植物が新たに増える可能性があるとのことだ。

この新たな取り組みでは、気象庁だけでなく、環境省、国立環境研究所と連携し、以下の2つの観点に基づいた観測で枠組作りを進めている。

1.生態環境の変化や気候変動が生態系に与える影響の調査等に有用な基礎資料である観点

2.生物を通じて四季を感じる文化的な価値がある等の観点

 「1」は、これまでに観測したデータとの継続性を保つ調査となるが、新たな「2」は一般の人も参加する調査が求められるとのことだ。

専門性が必要そうな調査に、一般人も参加できるという驚きもあるが、調査員になりたい人はどうすればいいのだろうか?また、そもそも廃止・縮小を決めたはずが、なぜ方針転換したのか? 担当者に聞いてみた。
 

反対意見の中に、民間パワーを生かすアイデアも

――なぜ廃止・縮小から活用に方針転換したの?

11月に生物季節観測の種目の変更をお知らせをしたあとに、いろんな団体などから様々なご意見を頂きました。

廃止・縮小に反対というものや、そのまま続けてほしいというもの、中には民間でやれることがあるのではないか、という意見もありました。そこで、何かできないかということから、意見交換を重ね今回のような形になりました。


――環境省や国立環境研究所との連携は、いつごろから話があった?

12月ぐらいから、徐々に仕組みを変えていこうと、いろんな方々とご相談させていただきました。

今年1月からは観測を縮小していた

――では今年1月の段階では、観測はやめていなかった?

それは既定路線ですので、気象庁の観測は整理させていただきました。


――それであれば、1月1日から3月30日までの観測データはどうなっている?

これらの観測は基本的には行っていません。1番(生態環境の変化や気候変動が生態系に与える影響の調査等に有用な基礎資料である)の観点からすれば、多少抜けても大丈夫で、むしろ継続した観測を行う枠組み作りが重要になります。


――環境省・国立環境研究所との連携で、観測する動植物が増えることはある?

それは、これから仕組みを一緒に作って行く団体からどういう要望があるかによります。我々は気象の専門であって動植物の専門家ではないので、今までやってこなかった観測マニュアルなどは作れませんから、もし種類を増やすのであれば専門家に入っていただかないと難しいでしょう。


――民間調査員にはどうしたらなれるの?どんな人が有利?

1番の観点でいうと、気象庁は動物の観測は「気象台・測候所から水平距離で5km未満」で行うルールになっていますので、これらの近くにお住まいの方は1番も2番(生物を通じて四季を感じる文化的な価値がある等)の観測もできることになるかもしれません。

なお、気象庁は生物季節観測の方法を定めたマニュアルを公開しているので、そういったものも見ていただけると幸いです。自然と生き物が好きな方であれば、こういう調査をするときプラスになると思います。

(気象庁の現行マニュアルはこちら。令和2年末に廃止した種目のマニュアルはこちら

マニュアルの一部 出典:気象庁
マニュアルの一部 出典:気象庁

ちなみに動物の観測法も載った旧マニュアルは全59ページ。写真も豊富だがかなりのボリュームになっており、動植物の生息域や生態も記載されている。

観測の枠組みが固まるのはもうしばらくかかりそうだが、桜の開花のように季節を感じられる「生物季節観測」の廃止・縮小には様々な意見が寄せられたようで、新たな形を作る流れとなったようだ。
 

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プライムオンライン編集部
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