鹿児島・出水市と錦江町が結んでいる「敵対都市宣言」。2つの自治体は、互いに競い合うことで切磋琢磨してきた。今後の勝負の行方は。

きっかけは“うり二つ”のご当地アイドル

出水市と錦江町。2つの自治体が「敵対都市」を宣言したのは、今から約3年前のことだった。

敵対都市を宣言 (鹿児島県庁 2018年)
敵対都市を宣言 (鹿児島県庁 2018年)
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それまで目立った交流がなかった2つの自治体が「敵対」したきっかけは2018年、出水市に誕生したご当地アイドル「いずみとりとりガールズ」が、すでに10年前から活動している錦江町の「錦江くわがたガールズ」にうり二つ?だった。

いずみとりとりガールズ
いずみとりとりガールズ
錦江くわがたガールズ
錦江くわがたガールズ

錦江町観光交流課・時吉健二さん:
セリフがあるんですが、くわがたガールの「はさんじゃうぞ」に対抗して「つついちゃうぞ」。もろパクリです。2020年のことなんですけど、コロナウイルスの悪疫退散で、灯籠でアマビエ様を作ったイベントがあるんですけど、錦江町でイベントを行った3週間後に出水市がパクってました

「パクリ」と主張する錦江町
「パクリ」と主張する錦江町

出水市シティセールス課・小村郁則課長:
出水市には、日本一のツルの渡来地があって、最近ですと例年1万5,000羽のツルが飛来してますし、採卵鶏タマゴであっても、鶏肉であっても、日本有数の生産地ということで、それをモチーフにしたニワトリ、あるいはツルのとりとりガールズということで、全くパクリではございません

「パクリではない」と否定する出水市
「パクリではない」と否定する出水市

市長と町長が直接対決 結果は…

2018年に鹿児島市の商業施設で行われたPRイベントでは、2組のご当地アイドルが持ち歌で勝負した。しかし、歌では勝負がつかず、決着は、なぜか腕相撲でつけられることになった。

歌で決着はつかず 勝負の行方は腕相撲で
歌で決着はつかず 勝負の行方は腕相撲で

歌合戦は、その後も各地のイベントなどで不定期に行われ、腕相撲で決着をつけるのも恒例となっているということで、今のところ、錦江くわがたガールズが8連勝中だという。

敵対する2つの自治体の争いは、アイドルだけにとどまらない。
2018年に開催された「出水ツルマラソン大会」では、10kmの部で出水市の椎木伸一市長と錦江町の木場一昭町長の直接対決が繰り広げられた。

錦江町・木場一昭町長(左)と出水市・椎木伸一市長(右)
錦江町・木場一昭町長(左)と出水市・椎木伸一市長(右)

結果は、椎木市長が1時間24秒でゴールし、木場町長に4分27秒の差をつけて勝利した。

錦江町は、高齢化率が県内2位と、お年寄りが多い街だが、企画力で町おこしに取り組んでいる。

錦江町は企画力で町おこし
錦江町は企画力で町おこし

大手コンビニチェーンとタッグを組んで、毎年、特産品を使ったパンやスイーツを開発し、この6年で累計約12万個を売り上げた。(現在、販売は終了)
また、役場職員で結成した「きんこう落ち武者BOΦWYS」も人気上昇中。上司には「クオリティーの低さは県ナンバー1」と言われるそうだが、「ハートの強さはナンバー1!」と鋭意活動している。

一方の出水市も負けてはいない。
24シーズン連続の万羽ヅルを記録する出水平野は、日本一のツルの渡来地。

日本一のツルの渡来地・出水平野
日本一のツルの渡来地・出水平野

麓地区には、日本遺産に登録された日本最大級の武家屋敷群もあり、日本一大きな鈴で知られる箱崎八幡神社など、日本一が市内に8つもある。

良きライバルとして「敵に塩を送る協定」も

互いに競い合うことで切磋琢磨してきた2つの街だが、2021年1月、協定を結んだ。その名も「敵に塩を送る協定」。
戦国時代、最大のライバルだったと言われている武田信玄と上杉謙信。しかし、武田勢が塩不足で困っている時、上杉が塩を送り続け援護したというエピソードから、敵が困っているときこそ弱みにつけこまず、助けようという故事だ。

敵に塩を送る
敵に塩を送る

偶然にも、出水市は薩摩半島の北端、錦江町は大隅半島のほぼ南端。同じタイミングで災害に見舞われる可能性は低いと考えられることから、災害時に物資の提供はもちろん、被災者の受け入れや職員の派遣などを行うことにしている。

災害時の備蓄用パン 薩摩半島の北端に位置する出水市 錦江町は大隅半島のほぼ南端に 
災害時の備蓄用パン 薩摩半島の北端に位置する出水市 錦江町は大隅半島のほぼ南端に 

出水市・椎木伸一市長:
鹿児島県内の遠距離にある錦江町とそういった連携を結ぶことは、非常に有意義なことで、(今後も)争い合いながらですね、実は仲良くしながら、お互いに高めていければいいなというふうに思っております

錦江町・木場一昭町長:
お互いに街を元気にするというのは、本来の私たちの業務ですので、お互いに元気のある街を目指して共に頑張りましょう

両者の戦いはこれまでのところ「引き分け」とのこと。出水市と錦江町の今後の勝負の行方が注目される。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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