東日本大震災から10年。新潟に避難してきた人の思いや震災の教訓などを伝えるシリーズ。
今回は、10年前の福島第一原発事故により福島県から避難した男性が見つめた、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる動きを伝える。
安全神話から始まった原子力発電
東京電力の安全への意識が今、再び問われている。
福島・南相馬市から避難 高田直光さん:
原発がなんで福島県にできたかというと安全神話があったから。「絶対(事故が)あるはずがない」と言って始まったことがあった
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東日本大震災から10年、福島県から県外に避難している人は今なお2万8,000人を超えている。
その最大の要因となっているのが、福島第一原発事故。
![東日本大震災 当時](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/700mw/img_2fe9328b58e33b24289b56882e06a28d280231.jpg)
震災後、高田直光さんは97歳の母・ヨシ子さんと2人で福島・南相馬市を離れ、長岡市で10年を過ごした。
震災後、2人が行政の手配したバスに乗り辿りついたのは長岡市の南部体育館。
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福島・南相馬市から避難 高田直光さん:
3カ月ここにお世話になった。その3カ月は忘れられない
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長岡市で避難生活を送るなか母の体調が悪化し、これ以上の環境の変化は負担になることなどから、長岡市で暮らすことを決断。
南相馬市で暮らす息子や妹とはなかなか会えなくなった。
福島・南相馬市から避難 高田直光さん:
悔しい思いはある。私たちみたいな思いをする人が絶対にあってはならない
この環境の変化をもたらした震災の記憶を忘れないように高田さんは、東京電力に関する記事のスクラップ帳の作成を続けている。
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加速した柏崎刈羽原発再稼働案
柏崎刈羽原発の再稼働に向け走り続けてきた東京電力。
原発事故から10年を迎えるにあたり、国による再稼働への根回しも加速していった。
資源エネルギー庁長官が県議会の最大会派・自民党に原発の必要性を説明。
資源エネルギー庁・保坂伸長官:
原子力発電は原子力規制庁の世界最高水準の規制のもとでクリアし、地元の同意を得ながら進めていくのが基本
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さらには…
東京商工会議所・三村明夫会頭:
柏崎刈羽原発の稼働というものに強く期待している
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柏崎刈羽原発で生み出された電力を使ってきた東京の経済界のトップも7号機の視察に訪れ、早期の再稼働を求めた。
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ID不正に安全対策工事も未了
そして2021年に入り、安全対策工事も完了したとして東電は地元への説明を開始。
しかし、再稼働へ理解を得るつもりの説明会は、住民への“謝罪の場”へと変わった。
東京電力新潟本社・橘田昌哉代表:
誠に申し訳ございません
東電の社員が他人のIDカードを不正に使用し、中央制御室に入っていた問題が発覚した。
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東京電力新潟本社橘田昌哉 代表:
使用前事業者検査を進めていくなかで、6・7号機の共同の設備であるダンパーの設備について工事未了であることを確認した
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さらに、終わったとしていた安全対策工事も実は終わっていなかったことが明らかに。
これには長岡市で開かれた説明会に参加していた高田さんも怒りをあらわにした。
福島・南相馬市から避難 高田直光さん:
事故を体験した者から言うと、そして10年経って現状を見ると、再稼働だけは許してはならないという思いが強い
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10年前、安全神話が崩れ、いまだに多くの人が避難を続けている現実。
東京電力新潟本社・橘田昌哉代表:
私どもが引き起こした福島第一原発の事故で10年を超え、長きにわたってご負担・ご心配をおかけし続けていることに本当に改めてお詫び申し上げたい
東京電力は事故の反省の上に立ち、安全意識を高めていくと説明し続けてきたが…
東京電力新潟本社・橘田昌哉代表:
まさに私ども自体の信用問題であり、原子力発電事業を営むことができるのかというところが問われている。大変重たい問題だと受け止めている
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柏崎刈羽原発で問題が相次ぐ今、再び“安全神話”という言葉がクローズアップされ始めた。
"絶対に安全"ではない原発
菅首相:
まさに安全神話から決別しなければならない
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原子力規制委員会・更田豊志委員長:
原子力規制委員会は安全神話の復活を許さないということを誓って私の訓示とする
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いまだにこうした誓いの言葉を繰り返さなければならないのが、福島第一原発事故から10年が経った今の原発をめぐる現実。
福島・南相馬市から避難 高田直光さん:
本当に10年経っても、自分が体験してきたおそろしいことというのは忘れない。こういうことがあるかぎりは、再稼働なんて夢のまた夢、夢のまた夢の絵空事だと思っている
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東京電力新潟本社・橘田昌哉代表:
3月11日というのは私どもが福島第一原子力発電所の事故を起こした当事者として、決して忘れることがないよう確認する日
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世界最悪レベルの原発事故から10年。
原発再稼働問題に私たち1人ひとりが向き合うとともに、安全神話が復活することがないよう見届けていく必要がある。
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(NST新潟総合テレビ 3月12日放送分)