子供の成長を記録する方法と言えば、かつては「柱に身長を刻む」ことが定番ではなかっただろうか?

同じ場所や比較対象がないとわかりづらいためだが、今、「昔はこんなに小さかった」ということをAR(拡張現実)でも体験できる、子供の成長を記録するアプリが登場し、注目を集めている。

提供:株式会社無重力
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その名も「せいくらべ」

コンテンツやサービスの企画・ディレクションを手掛ける株式会社無重力が開発し、このアプリでは、子供の写真撮影と同時に身長計測を行い、子供の成長を記録することができる。

提供:株式会社無重力
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そして記録したデータをARで表示することもでき、過去の写真を同じ画面に表示することで「せいくらべ」をして、子供の成長を実感することができるのだ。

提供:株式会社無重力
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さらに、アプリを利用していない人に記録したデータを共有できる機能を搭載。URLを共有することで、子供の成長を祖父母などの離れて過ごす家族へ届けることができるとのことだ。

アプリは2020年12月24日からベータ版を提供しており、今後は有料機能を搭載した正式版をリリースする予定となっている。

とても喜ばれそうなアプリだが、操作は難しいのだろうか。どうやって記録するのか? アプリの開発リーダーを務めた六反孝幸さんに話を聞いた。

きっかけは娘の成長記録に穴を開けた後悔

ーー開発の経緯を教えて

開発リーダーの私は、4歳の娘の父です。(開発開始時は3歳)。自分が利用したくてサービスを開発しました。

娘の写真を撮るのが好きでたくさんの写真が残っていますが、写真だと当時の大きさまではなかなか実感しづらい。少し前までは小さかったこと、どんどん大きくなっていることを娘と共有して、一緒に成長を喜ぶためにARの技術を活用することを思いつきました。

開発中の画面(提供:株式会社無重力)
開発中の画面(提供:株式会社無重力)

そして2020年3月にAppleより発売されたiPad ProにLiDARスキャナ(深度検出を可能にするセンサー)を利用すると高精度に空間認識が可能なため、撮影したデータをほぼ正確なサイズでAR表示することが可能だと気付き、成長記録への活用のための検証を進めました。

第一に、自分が娘の成長の実感をより臨場感を持って体験するために、第二にそれを娘自身とも共有できることを目指して開発を始めました。本格的な開発開始は2020年9月からですが、現在も継続して開発中です。

開発中の画面(提供:株式会社無重力)
開発中の画面(提供:株式会社無重力)

ーー開発が2020年からということは、コロナも関係している?

コロナの影響で、受託開発の仕事が一部ストップし空き時間ができたので、どうせなら自分の好きなサービスを開発しようと思い、考えていました。写真を撮るのが好きでたくさんの写真を撮っているため、娘の成長記録関連での新規サービス開発を行おうと考えました。

娘は保育園に通っていますが、コロナの影響で保育園は強い登園自粛となり自宅で過ごしました。毎月、定期的に保育園で身長と体重を計測していたため、自宅では定期的に計測はおこなっておらず、2020年4月の身長と体重は計測しそびれてしまったのです。計測しそびれていることに気付き、5月は自宅で計測を行ったが、4月の計測値は不明のまま。

娘の2020年4月(3歳2カ月)は、一生に一度。もう戻っては来ない。毎月著しい成長を見せる娘の記録に穴を開けてしまったことを後悔しました。このことから、身長計測、成長記録に関する新規サービスの開発を行おうと考えました。

提供:株式会社無重力
提供:株式会社無重力

現在も継続的に開発中

ーーどうやって使うの?

1:2D・3Dのどちらで撮影するかを選択し、2Dの場合は、平面のためそのまま撮影が可能。3D撮影の場合、画面に表示される円の中に被写体を入れて撮影します。

2:OKであればOKボタンを、撮り直す場合は撮り直しボタンを選択。撮影が完了すると名前・身長・記録日時が表示されるので正しければ保存してください。この時、身長は自動で入力されています。

3:保存した後はARで楽しむことができます。

3D撮影時の画面(提供:株式会社無重力)
3D撮影時の画面(提供:株式会社無重力)

記録をARで表示することができるAR表示機能では、子供が過去の自分とせいくらべをすることができ、iPhoneの画面をテレビなどに画面共有することで子供と一緒にARデータを見ながら楽しむこともできます。

提供:株式会社無重力
提供:株式会社無重力

ーー撮影はどこでもいいの?

基本的にYESです。ただ細かくは、2D撮影/通常撮影と3D撮影で現状は、撮影ロジックが異なっています。

・2D撮影/通常撮影
自動で人物を切り抜いて測定&撮影する。

・3D撮影
床面に表示されたサークル上部のものを測定&撮影する。まだ、ベータ版のため、壁面を自動で削除するような機能は現状は搭載されておりません。床面の一部も一緒に記録されてしまいます。

撮影画面(提供:株式会社無重力)
撮影画面(提供:株式会社無重力)

ーー撮影で気を付けることはある?

子供を自動で判別して撮影するわけではないので、容姿の変化は記録に影響はないです。ただし、2D撮影・通常撮影時の切り抜きロジックの関係でぬいぐるみや花束など子供が手に持っているものが消えることがあります。(人物の一部ではないと判定されるため)こちらも継続的な開発によって調整中です。

また、撮影可能な機種が少ないです。

アプリ「せいくらべ」対応端末は、 iOS14以上のA12 Bionic以降のチップを搭載したiPhone(iPhoneXs以降に発売されたiPhone)。3D撮影機能は、iPhone12 ProなどのLiDARスキャナを搭載したiPhoneでのみ利用可能です。

撮影後の確認画面(提供:株式会社無重力)
撮影後の確認画面(提供:株式会社無重力)

高さ以外の大きさで記録を残すことが可能

ーーこだわった部分はどこ?

子供がじっとしていないことへの対応です。一般的な3Dスキャンは、被写体の周囲をぐるりと撮影しますが、子供がじっとしていないため前面からだけの撮影としました。(そのため、裏側の3Dデータはなし)


ーーアプリを利用するメリットを教えて

「高さ」だけであれば、壁や柱で実感可能ですが、「せいくらべ 」では、「見た目」や「(高さ以外の)大きさ」も含めて、記録ができます。また、AR表示によって臨場感のある再生、思い出しが可能となります。


ーー手持ちの画像から測定することもできるの?

次回アップデートで元々ある写真からARデータの生成を可能にする機能を追加予定です。ただし、ARデータの生成のみで、測定(身長値の推定)は現状できないため、身長値は手入力となります。

過去に撮影した画像からデータを生成(提供:株式会社無重力)
過去に撮影した画像からデータを生成(提供:株式会社無重力)

ーーアプリが完成したとき、どう思った?

自分が体験したかった成長記録の振り返りは、これだ!」と思い、嬉しかったです。撮影した動画を「ちょっと前までこんなに小さかったんだよ!」と娘に見せました。

提供:株式会社無重力
提供:株式会社無重力

ーー社内での反応は?

好評で、「早く多くのユーザーに届けたい」という反応でした。そして、開発メンバーも、実際に触ってみることで次期の開発アイディアが膨らみました。


ーー今後は新機能の追加などの予定はある?

直近の開発予定
・複数のARデータを同時に配置する機能
・過去の写真からARデータを作成する機能
・共有URLの有効期限の延長やパスワード設定機能
・子供の切り抜き精度の向上

検討中の開発内容
・撮影済みの写真からも身長値を推定できるようになる機能
・動画ARへの対応

開発中の画面(提供:株式会社無重力)
開発中の画面(提供:株式会社無重力)
共有画面のサンプル(提供:株式会社無重力)
共有画面のサンプル(提供:株式会社無重力)

このアプリがあれば、コロナ禍で帰省できない人も、離れて暮らす家族へ「AR帰省」で子供の大きくなった姿をわかりやすく伝えることができるかもしれない。自分の思い出用や離れて暮らす家族のために活用できそうだ。

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プライムオンライン編集部
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