新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法をわかりやすく解説。今回は脳神経外科の名医、脳神経外科「眞田クリニック」(大田区池上)の院長、眞田祥一先生に「偏頭痛と脳梗塞の関係」について話を聞いた。

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偏頭痛とは

眞田祥一先生:
「偏頭痛」は、頭痛の中でも重大な脳腫瘍だとか脳出血、くも膜下出血を起こすような頭痛とは違って、「慢性頭痛」といわれるもので、多くの場合は怖くありません
 

しばらく経つと治ってしまう。そしてまた忘れた頃にやってくる。
放っておくと怖いときもある、ということです。

偏頭痛とみて他の病気のこともあるので注意は必要です。

偏頭痛は「血管性頭痛」といわれていて、血管が異常収縮したり、異常拡張したりして起こるので、年齢や遺伝などいろいろな要素があります。

特に昔は、女性に多かった。
女性に偏頭痛が多い理由については、女性の方が男性よりも出血や血管系の病気を起こしやすいので、それで女性に比較的多いんです。

偏頭痛の原因となるストレス

眞田祥一先生:
病気の原因で一番みなさんがいうのは「ストレス」。
血管系の病気については、ストレスがどうしても多いと思っています。

今は男性も女性も同じようにストレスを感じる時代になってきて、それで男性にも偏頭痛が多くなってきたのかもしれません。

男性の若い人、10代前半で偏頭痛を起こす人が出てきています。学校でのいじめなどが関係しているのかもしれません。

仕事についても、コロナ禍で先輩と後輩が上手くいっていないところも多いようなので、家に閉じこもりがちの男性が「自分の将来どうしよう」という形でストレスが大きくなってきますから、ますます偏頭痛が増えてくる可能性はあります。

ポイントは、なるべくストレスを感じないようにすること。
ストレスが高じてたばこを吸いすぎてしまう、お酒を飲み過ぎてしまうということがあると、どうしても偏頭痛になりやすいので、なるべくストレスを感じないように日常生活の中で自分の考え方、モチベーションを高めていくことが大事だと思います。

睡眠に関しては、寝不足も良くないけど、寝過ぎも良くないというのが偏頭痛については言われています。

偏頭痛と他の病気との関係

眞田祥一先生:
今、統計をとってみると、偏頭痛のある方が脳梗塞になる確率は約2倍だとされます。
偏頭痛があってたばこを吸っている人においては、約34倍とされています。

たばこはニコチンが入っています。
ニコチンは血管を異常収縮させたり、異常拡張させたりする影響が非常に大きいです

しばらくぶりにたばこを吸ってみると、頭がクラッとした経験があると思いますが、それはニコチンの影響です。
ニコチンは化学物質としては毒物として指定されています。たばこの葉に含まれ、強い依存性があります。

偏頭痛があるから脳腫瘍になりやすいということはあまり無いです。
反面、脳腫瘍の人が偏頭痛を起こしている場合はあります。
偏頭痛の人から脳腫瘍が見付かることはかなりあります。

偏頭痛の特徴は、「一時的なもの」「完全に元に戻る、回復する」というものです。

しかし、血管の問題ということもあるので、偏頭痛を繰り返している人は、血管系の異常である心筋梗塞や脳梗塞などを起こしやすいであろうということは言えます。

進歩する偏頭痛の治療

眞田祥一先生:
偏頭痛が頻繁に起こっている場合、治した方が良いのは確かです。
起こらないようにする、または、起きてもすぐに治す。

昔と違って今はいろいろな形で薬が出ています。偏頭痛が起きても止められる時代になったといって過言ではない。

また、起こらないようにする治療も非常に進歩しました。偏頭痛のために仕事ができないということは少なくなってきています。

脳梗塞と動脈硬化の関係

私は脳梗塞の専門家ですが、脳や心臓の血管を「あいつは敵だ!」と体が認識してしまうことで動脈硬化を起こして、それで心筋梗塞を起こしたり、脳梗塞を起こしたりします。

動脈硬化とは、動脈の壁に傷がつくと、その下の部分が血液にとってみるとあまり触れたことのない細胞なので、「あいつは敵だ!」と思って反応を起こす。
その反応に対して血小板が集まり、それで動脈硬化になっている

ですから、自分の細胞が敵だと認識してしまう「免疫系」が働き過ぎちゃって起こる病気が極めて多いです。

爆笑問題の田中裕二さんにおいては、血管の傷ついたところに血流が来て、解離性動脈瘤をつくった。解離性動脈瘤というのは、血管の内膜がはげてしまうもので、そこから出血したのが「くも膜下出血」だし、乖離した部分が細くなって詰まったのが「脳梗塞」です。

幸いなことに非常に狭い範囲だったのでほとんど障害なく復帰できると聞いています。

名医のいる相談室
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