東日本大震災では大津波から生き残った岩手県の一本松が有名だが、実は福岡に「希望の松」と呼ばれている松がある

ーーこの松ですか?

NPO法人・今村次美さん(68):
植えた時はこれぐらい。8年でこんなに大きくなった。相当な生命力ですよね

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福岡・春日市内の小学校。
校庭の片隅にひっそりと佇む松の木。葉は青々と茂り、新芽は大空へまっすぐ伸びている。

NPO法人・今村次美さん(68):
シュッと上に向いてる。すごく生きる勢いがある。上を向いてね

NPO法人の理事長を務めている今村次美さん。
今村さんが見つめる1本の松は、被災地に落ちていた小さな松ぼっくりから育ち、今は「希望の松」と呼ばれている。

東日本大震災で一変…別世界に

宮城・東松島市。
今村さんが年に数回、仕事で訪れていた場所。

NPO法人・今村次美さん(68):
変わるというか、別世界というか…。心がね、真っ白になった

震災から3カ月後。ボランティアとして訪れると思い出の場所は一変していた。

NPO法人・今村次美さん(68):
ここに大きな松があった、こっちは海ですもんね、そこにあった大きな松は全然ないですね、ここに持ってますもん、マツボックリを

何気なく松ぼっくりをいくつか拾った今村さん。
福岡に持ち帰ると、ある変化がみられた。

"松"が芽吹き…広がった希望の輪

NPO法人・今村次美さん(68):
テーブルの上に置いていたら、何か白いのが出ていた。わ、種やなと思って、ぱらぱらって蒔いた。そしたら自然に、不思議に1本(芽が)出て来た。いや、まさか生きているとは思っていなかった

何気なく持ち帰った松ぼっくりから生まれた、新たな命。
最初の芽を春日野小学校に植えたあと、ほかは松ぼっくりの“ふるさと”東松島市の小学校に贈った。

宮野森小学校の児童:
この松が、被災した東松島に活気を与えてくれると思います

宮野森小学校の児童:
これからもどんどん大きくなって、学校の最大のシンボルになってほしいです

震災を乗り越え、命をつないだ「希望の松」。
今村さんの心には、津波で祖母を亡くした小学生から届いたお礼の手紙が強く残っている。

NPO法人・今村次美さん(68):
(津波でおばあちゃんが亡くなった児童で)「希望の松」を植えてから、おばあちゃんに話しかけるように松に話しかけていたら、松が何となく自分を元気づけてくれてたと。震災に遭っても大きく温かい心が芽生えているのだなと

春日野小学校の松から生まれた子どもの松は、大きな地震に見舞われた北海道や熊本、豪雨で被害を受けた福岡・朝倉市にも贈られ、その輪は広がっている。

2020年度、開校30周年の節目を迎えた春日野小学校に、東松島市の小学校からお祝いのメッセージが届いた。

NPO法人・今村次美さん(68):
30周年おめでとうですよ。同じ「希望の松」仲間からの

ひとつの松ぼっくりから生まれたつながり。
メッセージは被災地からも寄せられた。

NPO法人・今村次美さん(68):
おめでとうって言う言葉ができたのがすごいんじゃないかな。被災地からのおめでとうですからね。逆に元気を与えてもらうのでは

「希望の松」が紡いだ絆。
今村さんは、被災地にルーツを持つ「希望の松」の力を実感している。

NPO法人・今村次美さん(68):
自分たちは橋渡しができるから。少しずつ広めていきたいと思ってます。助け合いながら協力し合いながら励ましあいながら生きていく。そして強く生きるんだと

津波の中で生き残り、命をつなぐことの大切さを子どもたちに訴えかける「希望の松」。
今村さんは新型コロナの感染が落ち着いたら、被災地の「希望の松」を訪ねようと心待ちにしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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