地震を耐え抜いた商品がずらり並ぶ

2月13日、宮城・福島で最大震度6強を観測した地震が発生。東北新幹線が一部区間で24日まで運転を見合わせるなどの被害が出た。

そんな中、福島県の道の駅のとあるPOPが話題となっている。

先週の地震で被害のあった道の駅に来たけど、ある程度復旧していたようでよかった。 そして逞しかった。

Twitterに投稿されたのは、福島県にある「道の駅国見 あつかしの郷」の店内の様子。
たくさんのかごの中には日本酒の瓶が並べられているが…その後ろには「震度6強を乗り越えた勇者達」のPOPが。

実はこの日本酒たち、国見町を襲った震度6強の地震の中、割れずに無事だった商品なのだ。

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この様子には「猛者といったほうがふさわしい」「ご利益ありそう」というコメントが続々寄せられ、11万件を超える「いいね」がつき注目の的に。(2月25日現在)

さらに、ちょっと面白いのがその価格。
パッケージやラベルには地震の時についたのか「汚れがある」そうだが中身には一切問題がなく、「震度6強を乗り越えた商品!安売りではなく通常価格となっています」という堂々たる注意書きがあり、「値引かないところがいい!」「出来るだけ高いお値段で購入して!」という声も寄せられた。

提供:道の駅国見 あつかしの郷
提供:道の駅国見 あつかしの郷

台風の中、木から落ちずに残ったりんごが「絶対に落ちない」ことから受験合格の縁起物として販売されていることは有名だが、この瓶たちにも災難をくぐり抜けた“勇者”の風格が感じられる。

道の駅にも大きな被害が出たと思うが、地震発生時の状況は?そして“勇者”たちの売れ行きは?「道の駅国見 あつかしの郷」にお話を聞いた。

「生き残ったって、逆に凄くない?」の声で販売決定

――「震度6強を乗り越えた勇者達」販売を決めた理由は?

日本酒などビン類の商品は約50%ほどが破損しましたが、片づけを進めているうちに棚から落ちずに残った商品や、箱は濡れたけど中身が無事だった商品がけっこうあることに気づき、コンテナに取っておくことにしました。

当初は安くして売りさばこうかとも思いましたが、スタッフと話の中で「生き残ったって逆に凄くない?」という意見が出て、「勇者たち」と名付けて定価で、しかもコンテナに入れたまま売り出すことにしました。ちょうどつるし雛を飾っていたスペースが地震でバラバラになり空いていたので、そこに被害状況の写真を展示してお客様に知っていただこうと考えました。

地震後の様子(提供:道の駅国見 あつかしの郷)
地震後の様子(提供:道の駅国見 あつかしの郷)

――店内にはどのくらいの被害が?

天井のボードが落下、壁などに亀裂が入り破損、冷蔵庫や厨房機器などが倒壊し施設内のエレベーターも故障しました。商品は陳列棚から半分程度が投げ出され販売できない状態になりました。また敷地内の一部は液状化現象が発生しました。

落ちて割れてしまった商品たち(提供:道の駅国見 あつかしの郷)
落ちて割れてしまった商品たち(提供:道の駅国見 あつかしの郷)

――復旧はどのくらい進んだ?

エレベーターと一部の機器が未だ故障しているのですが、その他営業に関わるところは応急処置をしました。店内のひび割れや壁の剥離は残っている状況です。宿泊できる道の駅として客室も備えておりますが、2階部分の修繕とエレベーターが故障していて現在は客室は稼働できていない状況です。

提供:道の駅国見 あつかしの郷
提供:道の駅国見 あつかしの郷

今月中には売り切れそうです

――日本酒の他、どんな商品たちが「勇者」として残った?

サイダー・ジュース、チョコレートなどがあります。こちらは未成年でも大丈夫なので受験生におすすめです。


――売れ行きは?

昨日(2月23日)までで約180点ほど売れました。残りの勇者は100点を切っているため、今月中には売り切れそうです。人気はやはり日本酒です。ひとりで複数本を大人買いしてくださる方もいます。やはり面構えが違うのでしょうか(笑)

こちらは通常の店舗の様子(提供:道の駅国見 あつかしの郷)
こちらは通常の店舗の様子(提供:道の駅国見 あつかしの郷)

2月19日には営業を再開した「道の駅国見 あつかしの郷」。
しかし併設されている客室はまだ稼働できていない状況ということで、その被害の大きさが伝わってくる。

そんな中、被害の大きさを知ってもらうことも含めて「勇者達」の販売に踏み切ったのは、スタッフ間の会話から生まれたアイデア。
ネット上では人気漫画『進撃の巨人』の一場面と重ねて「面構えが違う」と人気になっている商品たちだが、その力強さに惹かれてか売れ行きは好調とのことで、売り切れも間近のようだ。


――この反響について…

福島県内でも国見町と相馬市、新地町だけが震度6強という揺れに見舞われて、お客様の中でも地震の被害に対する認識があまりない方がいらっしゃったので(地震の翌日に電話をかけてきて「なんで営業していないんだ!」とか心無い𠮟責も少しですがありました)少しでも地震の惨状が伝わればと思い取り組み、正直10本でも20本でも売れれば良いかな?と思いましたが、予想以上に反響をいただいたことで、お客様からも「大変だったね」と声をかけていただけるようになりました。

 

東日本大震災からまもなく10年となるタイミングで発生した地震に、あの日を思い出した人も多いだろう。

今回のPOPに「皆が通常の生活に戻そうとすぐに動きだすことが、早く復興する秘訣なのかも」というコメントも寄せられたように、被害に負けず、こうした力強いメッセージを発信できる人たちこそが“勇者”なのかもしれない。
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。