ワクチン接種に奨励金に有給休暇

奨励金に有給休暇。
アメリカ企業が、ワクチン接種の広がりをアシストしている。

中川真理子記者:
全米の多くの州を走る長距離鉄道も、従業員にワクチン接種を奨励しています。

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アメリカ各地を結ぶ長距離鉄道「アムトラック」。
従業員およそ1万7,000人を抱えている。

今回、全ての従業員に、積極的にワクチンを接種してもらうため導入したのが、奨励金の支給制度。

アムトラック オリビア・アーヴィン氏:
接種1回につき2時間分、計4時間分の給料を払っています

接種後に体調の変化があった場合、48時間の有給休暇を取得することも可能。

奨励金支給には、およそ300万ドル。
日本円で3億円以上の費用負担を覚悟しているというが、そこまでして導入する狙いは。

アムトラック オリビア・アーヴィン氏:
給料不足や時間不足で従業員が接種できない状況を避けたい。
目標は、従業員の摂取率100%。
全従業員が接種すれば、乗客も安心してアムトラックを利用すると考えています

アメリカでは、大手企業でこうしたワクチン接種の奨励制度が広がっている。

マクドナルドでは、従業員に4時間の有給休暇を提供。

大手スーパーのターゲットでは、接種1回につき2時間分の給与と、交通費を支給するなどしている。

多くの企業では、接種を義務付けてはいないが、従業員が接種しやすい状況をつくるこうした企業の取り組みは、ワクチン接種のペースアップに一役買うとみられる。

アメリカと日本の決定的な違い

内田嶺衣奈キャスター:
日本のワクチン接種は自治体が主体となるなど、今見てきたようなアメリカの例と単純に比較はできないかとは思いますが、松江さんはどうご覧になりますか?

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
アメリカ企業がここまで踏み込んでやっている。
私は有効なことだと思うのですが、背景にはワクチンを提供できる環境がある。
ここが日本と決定的に違うと思うのです。

日本はまだワクチンの確保がこれからという状況ですから、限られたワクチンの中でいかに展開をしていくのか。
これを短期と中長期に向けてシナリオを考えていく。
ここのところがいま最も求められているのではないかなと思います。

ワクチン接種 短期的と中期的なシナリオ

内田嶺衣奈キャスター:
今すぐにでも行うべき短期的なシナリオとはどういったものなのでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
私は2つあると思うのです。

1つ目は「供給の優先順位を細分化」していくということです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
実際に日本も、医療従事者の方と高齢者の方を優先する方針は出ていますが、いかんせん供給できるワクチンの絶対量があまりにも少ないので、さらにこの優先順位を細分化していかないと本当に必要なところに行き着かないと思うのです。

イギリスではこの細分化の優先順位を10分類ぐらいにしているという事例もあるのですが、日本ではまだ踏み込んだ検討が必要だと思います。

それと2つ目が「受診する側の意識を啓もう」
これが今必要だと思います。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
ワクチンの接種というのは、個人の判断が最終的に求められますから、その有効性とか安全性に関して理解度を高めていかないと将来の接種率は上がっていかないということになりますから、これは政府が特に音頭を取りながら情報の開示をしていく。
この辺から意識の啓もうしていくことが今求められていると思います。

ワクチン接種 中期的な取り組み

内田嶺衣奈キャスター:
そしてもう1つの中期的な取り組みというのに関してはいかがでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
こちらはですね。
初期的の遅れをいかに取り戻すかということで、ワクチンを確保した段階で一斉に「スピーディーに展開できるような環境を作れるかどうか」これが中長期的には大事だと思うんです。

具体的には「接種の手段を多様化」していく。
これがポイントだと思います。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
例えば、かかりつけのお医者さんでもワクチンを受けられるとか、企業でも集団で接種をできるとかですね。
もしくは夜間でも接種をできる。
こういった環境を作っていく。
政府とか自治体が音頭を取りながら、医療機関と企業も含めて社会全体で環境整備をしていく。
このあたりは中期的には大事だと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
そしてワクチン接種を受ける際には、仕事や子育てなどさまざまな制約がある中でという方も多いと思います。
周囲のサポートというのはもちろんですが、安全性や有効性に関する正しい情報提供がワクチン接種のカギになっていくように思います。

(「Live News α」 2月19日放送分)