新型コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態宣言下、ワクチン接種がいよいよ始まった。一方、今夏開催予定の東京オリンピック・パラリンピックは、森喜朗前組織委員会会長の女性蔑視発言による会長辞任劇でその行方が益々混迷の度を深めている。菅政権が発足して5ヶ月がたち、年内に国政選挙が控える中、この国の政治と社会はどこに向かうのか。かつて菅総理の国政デビューを後ろ盾し、森氏とも気脈を通じる亀井静香元建設相に聞いた。

亀井静香氏は、衆議院議員(通算13期)時代に、運輸、建設、金融担当相などを歴任した
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「森さんは辞めたいなら辞めればいい」

――森会長が組織委員会会長を辞任されました。今回の騒動をどうご覧になっていますか。

亀井氏:
近いうちにちょっと彼と会うことになっているけどね。彼が辞めるといったんでしょ。辞めたいなら辞めればいいんだよ。だいたいね、オリンピックって騒ぐけど、昔のオリンピックはスポーツの頂点、華だったんだよ。ところがいまは種目ごとに世界大会がどんどん開催されているでしょう。それともう1つ、オリンピックは商業主義に毒されてしまった。もう昔のオリンピックとは違う。だからそういうオリンピックをまるで神様がやってくるみたいにありがたがる必要はないでしょ。

組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏

――東京オリパラは今夏行われると思いますか?

亀井氏:
オリパラはやれるわけがないじゃない。スポーツというのは、肌と肌が接しあう、息をかけ合うんだよ。物理的にできっこないでしょ。今の検査は陰性が陽性になったりして完全なものじゃないわけだし。

「森さんは女性を否定したわけじゃない」

――森さんの会長辞任の理由としてあったのが女性蔑視ともとれる発言でした。

亀井氏:
女性蔑視?ふざけたこといいなさんな。森さんは女性を否定したわけじゃない。女性の役割が非常に大事だということを彼はしっかりと認識して説明していますよ。

――今回の辞任劇の背景に小池東京都知事の四者会合欠席の意向があったと報道されています。

亀井氏:
そんなことないよ。それでどうこう判断する森さんじゃないよ。マスコミは少しくらい彼女を批判する記事があってもいいと思うよ。だから彼女ものぼせすぎているんじゃないか。

「菅さんの初の国政選挙を応援したんだ」

――菅総理が昨年9月に就任してから、約5ヶ月になります。亀井さんは菅総理と昔からの付き合いだと聞いていますが。

亀井氏:
菅さんが横浜市議のとき私が自民党の政調会長で、私の知人の藤木幸夫さん(横浜港湾協会会長)から「国政に出るので応援してやってくれ」と言われ、横浜まで行って彼を応援したというのが始まりだね。

――菅政権は発足当初は高い支持率でしたが、いまは支持と不支持が拮抗しています。その理由の1つが「コロナ対策が後手に回っているんじゃないか」という国民の不信感がありますが。

亀井氏:
コロナより先手を打つことは無理だね。コロナという虫は利口な虫でさ、対応はそう簡単にはいかない。その中で菅さんは悪戦苦闘しているわけで、彼が全知全能の神なら別だけど、ぴたっと当てはまるようなことができるわけない。批判が出てくるのは仕方ないけど、これは誰がやっても目の覚めるような対策はできるはずがないですよ。

「菅さんはよくやっていると評価すべき」

――今回の特措法の改正では入院拒否、時短拒否に過料を課すことになりました。

亀井氏:
まあこれはね、簡単に言うとイギリスのようにロックダウンする方法もあるけれど、日本でやったら政権が倒れるわい。日本人というのは「座禅を組むようにじっと耐えましょう」と言われてオッケーする国民じゃないですよ。だから菅さんはそういう国民性の上に乗っかっていまやれることをやっているんで、これはよくやっていると評価してやるべきじゃないのかな。

――いよいよ日本でもワクチン接種が始まりました。菅総理は担当大臣として河野太郎さんを抜擢しましたが、この人事についてどう思いましたか。

亀井氏:
能力があると思ったのかね。しかしいままでの所管の延長線上を離れてやることはなかなか困難が伴うな。河野太郎はよく知らんけどね。河野一郎さん(※)はごつい人だったけどなあ。息子の洋平さんは柔らかい人だった。総理になれなかったのには、俺も責任あるけどね(笑)

河野太郎氏

(※)元副総理。河野太郎氏の祖父。

「ワクチン接種なく選挙やるのは自殺行為」

――2021年は衆議院選挙がありますが、いつごろの時期になると思いますか。

亀井氏:
ギリギリ解散ってことはやらんだろう、見通しとしてね。コロナの問題があるから、ワクチンが6月か・・。とにかくワクチンを接種した後だよ。だから都議選と一緒にやったらどうなの。選挙というのは人と接触するから、ワクチンも打たないで選挙をやるのは自殺行為ですよ。そういうのは絶対やっちゃいかんわな。菅さんも考えているはず。

――今の野党の動きはどうみていますか?

亀井さん:
野党はね・・・あって無きがごとしじゃないの。玉木(国民民主党代表)なんか優秀だけど、何しろ野党に共通しているのは、度胸と胆力がないんだよ。突き進んでいっても「誰かついてくるかな」、「マスコミが支持してくれないかな」とか、そんなことばかり考えているから、結局気がついてみれば国民がもうそっぽを向いちゃっているな。どの新聞見ても非常に支持率が低いし、期待感がないということだな。

国民民主党・玉木代表

「株価3万円はバブルと菅さんに教えてやる」

――日経平均株価が3万円を突破しましたけど、これについてどう思われますか。

亀井氏:
バブルだから。金の行き場がないからしょうがない。マネーゲームだな。これは庶民や実体経済には関係の無い話だな。この株の状況というのは良くないね。だから今度菅さんに会ったら教えてやろうと思っているけど、兜町の株が上がった、下がったと一喜一憂しているのは1部の人間だけだよ。

――こうしてお話を伺っていると、菅総理に対してとても心情的に近いのを感じますね。

亀井氏:
キラキラする人間じゃないからいいんだよ。だいたいいまの総理は、お父さんやおじいちゃんが大変な政治家で、その子どもや孫だわな。福田さんも安倍さんも麻生さんもそうだし。だが菅さんだけは土の匂いがするんだよ。だからこのままでいくべきだと私は思っている。彼の良さは土の匂いなんだよ。

国会で答弁する菅首相

「菅さんも二階幹事長も土の匂いがする」

――菅総理はいまのままでいいと。

亀井氏:
ただね、最近彼は新自由主義者を次から次へと登用しているでしょ。これは良くないことだよ。権力を握った人間が陥りやすい。たとえば豊臣秀吉みたいな百姓の子どもが天下を取ったらキンキラキンが好きになっちゃった。菅さんもそれと同じだ。竹中平蔵やアトキンソンとかキラキラするような新自由主義者になびき出して危険な兆候だな。

――二階幹事長は派閥の後輩ですよね。

亀井氏:
そうだよ。すっと派閥に入ってきて乗っ取りやがった(笑)。彼も人相を見たらわかるだろ。土の匂いがするんだよ。それが彼の持ち味だから、それを活かして政治をやるのがいいんだ。だいたい国民もいかんのだよ。自分に無いキラキラしたものに憧れちゃう。日本人はね、そういうものに憧れるところがあるんだね。

「菅さんの良さは土の匂いがするところだよ」

――ありがとうございました。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】