調理器具として身近な存在のフライパン。その形状を聞かれたら、丸型を思い浮かべる人が多いだろうが、いま“四角いフライパン”が登場したのをご存じだろうか。

それが生活関連商品を製造・販売する「ドウシシャ」(本店:大阪市)が、2月3日に発売した「スマートフライパンsutto(スット)」。従来のフライパンとは異なり、形状が四角いことから、縦置きで収納することができるというのだ。

四角いことで縦型に収納できるという(提供:ドウシシャ)
四角いことで縦型に収納できるという(提供:ドウシシャ)
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持ち手部分が角にあるのも特徴で、実際に調理するときはひし形のような構図に。フライパンとしては底がやや深めでもあるため、一見すると鍋のようにも見える。

底が深めで鍋のようにも使える(提供:ドウシシャ)
底が深めで鍋のようにも使える(提供:ドウシシャ)

スットは本体と専用のふたがセットで、サイズは16センチ、18センチ、20センチの3種類。価格は税込みで、2178円(16センチ)、2728円(18センチ)、3278円(20センチ)となっている。

各サイズを比較(提供:ドウシシャ)
各サイズを比較(提供:ドウシシャ)

スットはドウシシャの公式オンラインストア、ホームセンターの店頭などで扱っているが、2月10日現在、人気のために在庫切れの状況だという。

卵焼き器であれば、長方形の調理器具を見たことがあるが、形状が四角で持ち手がその隅にあるのはめずらしいだろう。
調理したときの熱の伝わり方なども気になるところだが、「フライパンは丸い」という常識を覆した商品についてドウシシャに詳しく聞いてみた。

きっかけは一人の男性社員の悩み

ーー四角いフライパンの開発経緯を教えて。

きっかけは2019年末ごろ、商品開発の部署に一人の男性社員が異動してきたことです。彼は東京で初めて一人暮らしをしたのですが、キッチンの狭さや料理のしづらさに驚き、特にフライパンの置き場所や出し入れに困っていました。そこで、同じ悩みや不満を抱える人もいると思い、不便さを解決できるものを作れないかと開発が始まりました。

狭いキッチンでフライパンの扱いに困ったという(画像はイメージ)
狭いキッチンでフライパンの扱いに困ったという(画像はイメージ)

ーー形状を四角くした理由は?

実は最初から四角かったわけではありません。商品開発の目的は自立できて、収納しやすいものを作ることだったので、当初は丸型で試作していました。ただ、いびつな形になったり調理のしづらさを感じて試行錯誤した結果、この形に至りました。


ーー四角くしたことでどんなメリットが生まれた?

小さなキッチンだとガスコンロやIHの横にデッドスペースが生まれがち
ですが、自立するのでそうした場所にも置けます。持ち手を四角の隅に付けたのも使いやすさを考えてのことです。持ち手が斜め上に向くので、キッチン下に出し入れしても、深くかがまなくて済みます。

料理面でのメリットもありました。底面が広いので大きな食材でも崩れにくいですし、角を使えるので汁気がある料理も注ぎやすくなっています。スットは底が深めなので、焼き料理だけではなく、茹で料理や鍋料理にも使いやすいです。

角に持ち手をつけたのは取りやすさを考えてのこと(提供:ドウシシャ)
角に持ち手をつけたのは取りやすさを考えてのこと(提供:ドウシシャ)

四角いことで四隅が温まりにくくはない?

ーー開発でこだわった部分は?

自立の安定性ですね。スットは液体を注いだときに垂れないよう、フライパンの口が上部に向かって少しだけ広くなっています。この構造でも自立するよう、フライパンの辺にリグ(足場)があるのですが、形状などを1ミリ以下の単位で調整しました。

ふたにもこだわりました。フライパンのふたの縁は通常、ステンレスでかたどられていますが、社内の検証では形状が四角だと、強い火力で蒸気が漏れてしまうことがありました。縁部分の素材にシリコンを使用することで、漏れないようにしています。

フライパン側面の突起部分がリグ(提供:ドウシシャ)
フライパン側面の突起部分がリグ(提供:ドウシシャ)

ーー四角いことで四隅が温まりにくくはない?

基本的に通常のフライパンと同じと考えていただいて問題ありません。素材には熱伝導が良いアルミニウムを採用していますし、丸型のフライパンとお湯を沸かす検証も行いましたが、沸く時間に変わりはありませんでした。


ーースットは調理時にあおれる?こぼれたりはしない?

調理時にあおることは、あまり想定していません。チャーハンなど炒めものを作るときは、菜箸やフライ返しで適度に混ぜたり、コンロやIHの上で揺らしていただければと思います。底が深めなので、こぼれたりする心配はないと思います。

フライ返しなどを使うのがお勧め(画像はイメージ)
フライ返しなどを使うのがお勧め(画像はイメージ)

ーーそもそも丸型のフライパンが多い理由は?

あくまで想定ですが、熱伝導の効率だったり、一昔前はガスコンロでの直火が主流でしたので、そこが影響しているのではないでしょうか。ただ、現在はIHも普及していますし、熱伝導の効率も向上しているので問題なく使うことはできます。

料理が面倒な人に使ってもらいたい

ーーお勧めの使用方法や料理を教えて。

1~2人分の料理がメインになると思います。商品紹介のウェブサイトでは、レシピも紹介しているので参考になるでしょう。ただ、開発側としては気張った料理だけではなく、フライパン一つでできる料理や即席料理、冷凍食品の温めなどにも活用してもらえればと考えています。

一人暮らしだと冷凍うどんや乾麺のパスタのお世話になりますが、一人用の鍋だと食材が入りきらずに調理にムラが出てしまうことがあります。スットだと16センチで冷凍うどん、20センチでパスタがほぼ収まる大きさなので、簡単な料理にも活用してほしいですね。


ーー四角いフライパンはどんな人に勧めたい?

キッチンが狭くて料理が面倒と感じている人に使ってもらいたい
ですね。コロナ禍でおうち時間も増えているので、自炊の手助けになればと思います。使い勝手がいいので、ファミリー層のセカンドフライパンとしてもお役に立てると思います。

商品紹介のページにはレシピも掲載(提供:ドウシシャ)
商品紹介のページにはレシピも掲載(提供:ドウシシャ)

社員の悩みをきっかけに開発し、たどりついた四角いフライパンだが、熱伝導も通常のフライパンと同じということだった。常識にとらわれない発想がヒット商品につながったようだ。
 

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

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