子どもの感染も増加 日本で広がる変異ウイルス

2月5日、埼玉県の大野知事が危機感を示したイギリス由来の変異ウイルス。

埼玉県ではこれまでに変異ウイルスの職場クラスターが発生しているが、そことは接点がなく、感染経路が不明の新たなクラスターが確認された。

それは、児童施設クラスター。同じ施設に通う感染者10人のうち6人が、10歳未満の子どもたちだった。

変異ウイルスについて、イギリス政府の諮問機関は「従来のウイルスに比べてイギリス変異株は15歳以下の感染が増えている」と報告している。

国を挙げゲノム解析を進めるイギリスの目的

今、子どもたちにも迫る変異ウイルスに日本はどう立ち向かっていけばいいのか?

ロンドンの名門大学で新型コロナウイルスの研究を行う小野昌弘准教授に話を聞いた。

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インペリアル・カレッジ・ロンドン 小野昌弘准教授:
新型コロナとの闘いは知識が武器ですから、システムを作って対応しているわけです。

変異ウイルスが1日の感染者の8割を占めるイギリスでは、次なる変異ウイルスのまん延を防ごうと大規模な封じ込め作戦が始まっていた。

インペリアル・カレッジ・ロンドン 小野昌弘准教授:
国内の名だたる研究所、財団が参加して徹底的にウイルスの遺伝子配列を調べていく。トップレベルで変異のモニタリングをしています。

イギリスにある研究機関で行っているのは「ゲノム解析」。感染者から採取したウイルスの遺伝子を調べ、変異を見つけ出す検査だ。

日本でも主に国立感染症研究所で行われ、その件数は1万8000件ほどだが、イギリスでは既に23万件以上にも及ぶ。

政府と民間で約30億円もの資金を出し、国を挙げてゲノム解析を進めているが、その目的を小野昌弘准教授は“流行制御”だと言う。

インペリアル・カレッジ・ロンドン 小野昌弘准教授:
問題がある(変異)株っていうのは最初、どこかの地方でポンッと出てくるんです。早い段階で見つかるとその時点で人の動きを止めるんですね。

2月2日、ロンドン郊外の感染者から南アフリカ由来の変異ウイルスが見つかった。この地域には大量にPCR検査キットが運び込まれ、それをボランティアらが一軒一軒家を回り、配ってゆく。

こうして変異ウイルスが確認された地域で集中的にPCR検査を行い、陽性者がいればゲノム解析をする。また、別の地域では、無料のPCR検査場も設置されていた。

このように大規模なPCR検査とゲノム解析で変異ウイルスを持つ人たちを洗い出し、行動を制限することで、感染拡大を封じ込めるというのだ。

世界中で変異し続ける新型コロナ…次なる脅威も

日本でも広がりを見せているイギリス由来の変異ウイルス。現地イギリスでは、また次なる脅威が現れていた。

インペリアル・カレッジ・ロンドン 小野昌弘准教授:
ごく最近の話なんですけれど、一部のイギリス株が新たな変異を獲得して。南アフリカ株とブラジル株と共通する変異であって、ワクチンの効果が若干下がる可能性が出てきているんです。

元々、イギリス由来の変異ウイルスには、ワクチンの効果があるとされてきたが、そこからさらに変異し、ワクチンが効きにくい可能性のあるウイルスが発見されたというのだ。

しかし、小野准教授は積極的なゲノム解析により早く見つかったことで、ワクチンを改良するなど対応を早められると言う。

インペリアル・カレッジ・ロンドン 小野昌弘准教授:
世界中でウイルスは新しい変異を獲得するチャンスが山のようにあるわけですね。ウイルスの変化に人類がどれだけ対応できるかというフェーズ(局面)に入ってきているので。

ウイルスの変異に人間がどう対応するか…日本と新型コロナウイルスの闘いも新たな局面を迎えようとしている。

(「Mr.サンデー」2月7日放送分より)