航空機に乗れない客室乗務員

2011年622万人だった訪日外国人数は、2019年には5倍の3188万人になるなど、政府が推進する観光政策と足並みを揃え、売上を伸ばしてきた航空会社。

しかし、海外からの観光客がいなくなり、出張目的で国内線を利用するビジネス客も激減。緊急事態宣言の延長も決まり、航空会社の苦境は続く。

2020年年末の羽田空港
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2020年4月~12月のグループ全体の最終的な損益は、ANAホールディングスは3095億円の赤字。日本航空は2127億円の赤字と、両社とも過去最悪の赤字になった。

国際線の利用客は2019年から、およそ96%減少。
国内線は、「GoToトラベル」の効果で2020年10月から需要が回復したが、12月の感染再拡大で再び減少に転じ、国内線はおよそ70%減少に。

乗客がいないのに、航空機を飛ばしては赤字幅が拡大するため、運休や減便が相次いでいる。

特に客室乗務員への影響は大きい。

航空機内での業務が主な仕事だったが、その飛行機が飛ばないため、客室乗務員を中心に人員の余剰が出ているためだ。

全日空では一時帰休を行っている他、全日空、日本航空ともに民間企業や自治体などに客室乗務員を出向させている。

両社ともに「雇用は守る」と表明しているが、本来の業務に就けていない社員は多い。

会社の利益と地域の生活も守る「ダイヤ編成チーム」

そんな中、航空会社でも多忙な部署がある。

1月中旬、3月の運航計画を決める会議が港区・汐留の全日空本社で行われていた。計画案は3月頭から末にかけ、需要が増加していくという予想を元に作成されていた。

部員からは「春休みを待たずGoToトラベルが再開すれば、中旬頃から一気に需要が増えるのでは」「移動はまだ不安だというのが世の中の空気だと思う」などといった、意見が出されていた。

本来、この部署はいかに便数を増やして旅客需要の増加に対応するかが仕事だったが、新型コロナウイルスの影響でいかに「減便・運休」するかが仕事になっている。

急遽決まる、緊急事態宣言やGoToトラベルに伴う需要動向への対応が求められていて、非常に多忙だという。

また減便は航空会社の事情だけで決められるものではない。

ANA 飯島太郎さん

ANA・ネットワーク部 ダイヤ編成チーム 飯島太郎マネージャー:
「去年4月は一気に減便して旅客便としては便数がちょうど良かったですが、実は、貨物としての需要を取り逃した反省がありました。物資を運ぶという観点も合わせて減便を判断しないといけないのが難しい点です」
「また、コストは大事な観点で赤字を出して飛び続けるわけにはいけませんが、生活路線や医療従事者が移動している便などは運休、減便する時は非常に考えなくてはいけない」

コスト、貨物、そして地域の生活。
航空会社は利益の追求に加えて、公共交通機関としての責任の両立が常に求められている。

コロナ収束を見据えてパイロットを育てる

羽田空港の日本航空・事務所では、500人のボーイング737のパイロットの勤務調整が行われている。

減便や航空機の小型化が多く発生しているため、パイロットの勤務調整が細かく行われ、多忙になっている部署の一つだ。

1日あたりの国内線・パイロットのフライトは、これまでは1日3便で、3便目が終わると空港近くの地方のホテルに宿泊。翌朝、また3便乗るのが乗務の流れだったが、今は1日2便に減少。2便目が終わると一旦、自宅に帰り、翌朝、再び空港に出勤し2便乗ることになる。

そのため、自宅が遠方のパイロットは、翌朝のフライトの準備時間が短くなる場合もあるという。

これまでと同じように体調管理ができ、更に昇格のための必要なフライト数を確保できるよう、パイロットの育成がすすめられている。

日本航空・運航本部 業務グループ 佐々木亮太 主任:  
「緊急事態宣言中は特に需要が落ち込んでいるので、資格などで必要なフライトがある方に、どうやって数少ないフライトを調整してくのかが、難しくなってきています」
「実際にフライトが少なくなっているという意見をもらう時もあれば、乗務する勤務密度も緩くなっているかなという話もあります。運航乗務員に事前に相談した上で、受け入れやすい乗務の流れでシフトをお渡しすることもあります」

JAL 佐々木亮太さん

コロナ収束後を見据え、会社を支える多忙な社員たち。先行きは不透明だが、空港業界復活のために奮闘している姿があった。

執筆:国土交通省担当 相澤航太