“総理の登竜門”と呼ばれる自民党のポスト・青年局長に女性で初めて就いた牧島かれん議員。「青年局は“ファーストペンギン”」と語る牧島氏に自民党のジェンダーギャップ解消からデジタル戦略までその想いと覚悟を聞いた。
この記事の画像(6枚)“女性初”に「大きな決断がなされたな」
――昨年9月に「総理の登竜門」と言われている自民党の青年局長になってから、この数ヶ月はいかがでしたか。
牧島氏:
(内定の)ご連絡頂いたときは正直なところ、これまで女性で青年局長になった方はいらっしゃらなかったので、大きな決断がなされたなと感じました。青年局長の経験者がいま閣内に5名いらっしゃいますが、これまでの青年局長はその経験を政治家人生の中で活かしてこられたんだなと思っています。
――牧島さんは「女性初の」という枕詞がこれまでも付いて回ったと思います。本来なら「女性初の」という言葉を使わなくてもよい時代にならないといけないですが・・。
牧島氏:
そうですよね(笑)。
――現状を見ていると自民党も国会も圧倒的に男性社会です。牧島さんは党内や国会のこうしたジェンダーギャップをどうみていますか?
牧島氏:
党内もそうですがいま47都道府県の青年局長は全員男性です。各地域のブロック会議に行くと、女性は私と局長代理(参議院)の自見はなこ議員だけで、県連の役員ら出席者はすべて男性ということがまだまだありますね。
「いわゆるクオータ制に賛成しない」
――牧島さんはジェンダーギャップ解消のためのクオータ制導入は賛成ですか?
牧島氏:
私はいつも「いわゆるクオータ制に賛成しない」と明確に申し上げています。「女性だから下駄を履かされた」と思われるのは、政治の現場だけでなくどの社会においても女性にとって幸せなことではないと思います。
――では青年局では政界のジェンダーギャップを解消するために、どのような取り組みをされていますか?
牧島氏:
青年局には人材プールとしての役割があります。将来国政に挑戦したい、首長になりたい、地方議会を目指している民間の方や学生など様々な方が青年局にはいます。その中には想いや志がある女子学生も多いので、しっかり目をかけて諦めないようにするのが私たちの役割だと思っています。
――確かに新しい女性人材の育成が大切ですね。
牧島氏:
いま女性議員の中でも結婚、妊娠、出産、子育てというプロセスを経験している議員が増えています。青年局の役員の中では鈴木貴子議員と加藤鮎子議員の2人が、その経験を活かして女性の候補者候補に語りかけることをやっています。また党の女性局には政治家志望の女性向けの塾がありますので、私自身も彼女たちの相談事に乗っています。
全国から「何をやってくれたんだ」と
――青年局と言えば「党内野党であることも辞さない」ので知られていますが、その長として緊急事態宣言下での党幹部の深夜飲食問題をどう受け止めましたか?
牧島氏:
青年局には「党と国民のためになるなら、たとえ党内野党になってでも勇気を持って発言し行動する」という伝統があります。
各々の議員の行動と発言は一義的には議員自身が責任を持つべきものだと思います。ただ私たち青年局の立場から言うと、全国の現場にいる仲間たちからは「何をやってくれたんだ」という突き上げがすごくあります。いま自民党は与党ですが、それは地域の自民党員が頑張っているからなのを忘れてはならないと思います。
デジタル化の本丸は地方自治体
――次は国のデジタル化政策について伺います。牧島さんは党内でデジタル社会推進の旗振り役の1人でしたが、まず党のデジタル化の現状について教えてください。
牧島氏:
前局長の小林史明議員はデジタルに強いこともあって、青年局でオンライン会議をやる基盤を整え、全国の青年局地方議員約1200人とのイントラネットを構築しました。そのおかげで昨年の総裁選の討論会もオンラインで全国と双方向でできましたし、地域との情報のタイムラグをなくすことができました。
例えば党本部の会議で配付される資料はイントラネットを通じて都道府県や市区町村議会の皆さんにもアクセスできるようにしたほか、青年局で政策の解説動画も制作・配信しています。
――デジタル庁創設に向け準備が加速していますが、国としての一番の課題は何だと思いますか?
牧島氏:
平井卓也デジタル大臣は大臣就任前、党のデジタル政策の指揮をとってこられ、私も事務局長として共に活動してきました。霞が関のデジタル化という点では、省庁をまたがってオンライン会議をするのに、例えばこの役所はブイキューブ、こちらはウェブエックス、ここはズームと横の連携が出来ないことがありました。
環境整備という意味では、まだまだやらないといけないことが霞が関にはあるし、働き方改革や在宅勤務など民間の常識が霞が関にはまだ浸透していないのでデジタルで対応していく必要があると思います。
――民間の常識が霞が関に広がらないというのはまさにその通りですね。
牧島氏:
ただ、デジタル化の本丸は地方自治体だと思っています。地方自治体の政策の自由を奪うつもりはないのですが、事務手続きのフォーマットに関しては特別な理由がない限り統一する必要があるでしょう。それは自治体にとっても地域住民や企業の皆さんにとっても無駄な労力を省くので、きっと統一してよかったと思ってもらえるのではないでしょうか。
マイナンバーとワクチン接種
――その中でマイナンバーをどう活用するかですが、ワクチン接種や銀行口座との紐付けについてはどう考えていますか?
牧島氏:
医療機関などで登録した接種情報を役所がマイナンバーに紐づけておけば、仮に転居しても1回目にどんなワクチンを打ったのか判ります。なおマイナンバーカードを接種会場に持参する必要はありません。
銀行口座への付番について、おそらく国民の皆さんに一番納得感があるのは相続の時だと思います。親の銀行口座がどこにいくつあるのか、どの印鑑がどの口座のものか、知っている子どもは少ないですよね。マイナンバーに紐付ければ相続の煩雑な手続きがスムーズになるので、それならばやりましょうと考える方が多くなると思います。
――さて、最後に青年局長は総理への登竜門と言われている中で、女性初の総理を目指しますか。
牧島氏:
もし期待を寄せていただけるのであれば嬉しいですが、いまは青年局長として皆さんと一緒にこの難局を乗り越えるのが最大の目標です。これまで先輩たちが頑張ってくださったからいまがあると思っていますし、そのバトンを次の世代に渡さなければいけませんから。
――ありがとうございました。
永田町界隈で「初の女性総理は誰か」と話題になると、名前が挙がってくる1人が牧島かれん議員だ。筆者はあるアメリカ人の日本政治学者から「とても優秀だった学生が国会議員になった」と聞き、それ以来拙著「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」の取材などで話を伺う機会があった。
安倍晋三、麻生太郎、竹下登ら数々の総理大臣を輩出してきた自民党青年局長のポストについた牧島議員の今後に注目だ。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】