大きな満月の前で、ほほ笑む女性。
どこか不思議な雰囲気を醸し出すこの1枚の画。

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実は、捨てられたあるものが生かされていた。

コスメが絵の具に

この絵は、捨てられたコスメから生まれた絵の具を使って描かれていた。

その絵の具を作っているのが、「モーンガータ」。
代表の田中さんは、大手化粧品メーカーの研究職として働いていた。

モーンガータ・田中寿典代表:
使わなくなった化粧品、化粧品として全うできなかった商品を私自身すごくもったいないなと感じていて、化粧品の色味はたくさんあるので、色味を生かすには、やっぱり画を描くこと。
それで塗った雑貨を作ることに転化できたら面白い

ほんのちょっとの色味のずれなどで廃棄されてしまう化粧品を企業から買い取り、水に溶ける粉末状の絵の具へと加工して販売している。

アイシャドーやチークなども

さらに、買ったまま眠らせているアイシャドーや、もらったけれど使っていないチークなどの化粧品を、そのまま絵の具にできるキットも開発。

特殊な液体が入った筆を、使わなくなったアイシャドーに直接つけると、水彩絵の具のようになった。

秘密は、独自に開発した液体「Magic Water」

化粧品には、汗で落ちるのを防ぐための油が入っていて、粉状にしたものを水に溶かそうとしても混ざらずに分離してしまうが、開発した液体をかけると、化粧品としっかり混ざり合い、絵の具状になった。

このコスメ生まれの絵の具。
くすみがかった色や、きらきらとしたラメの質感など、一般的な絵の具とは違ったコスメならではの風合いを楽しむことができる。

水彩絵の具でありながらも、アクリル板など表面がつるつるしたものにも描ける特徴も。

使わない化粧品を手軽に絵の具に変えるこのキット。
クラウドファンディングで販売したところ、想定の倍の売り上げを記録した。

利用者からは、
「使わないまま古くなって捨てていたアイシャドーがもったいないと思っていたので、絵の具として使えるのはうれしい」
「化粧品の容器に入っている時は感じませんでしたが、どの色を使っても、塗ってみると、品が良い色に仕上がります」
などの反応が。

2020年には、JR東日本の車内広告にも登場。
SNS映えするアイテムとして、若い女性をメインターゲットに考えていたが、実は、最も支持があったのは意外な層だった。

モーンガータ・田中代表:
一番反響があるのが、小さなお子さんを持つお母さんたち。
化粧品は元々肌に付ける目的で作られているので、重金属を使わない顔料を使っている。
われわれの商品を使って、まずは楽しんでもらい、楽しんだ結果、自然な形でSDGsなど社会貢献につながれば

「アップサイクル」への期待感

内田嶺衣奈キャスター:
私も家の中で眠っているコスメがあるなと思いました。
すごく画期的な取り組みだと思うのですが、松江さんはどう感じましたか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
私も価値があるなと思います。
何が価値があるかというと、ひとつ重要なキーワードを思いつくのですが「アップサイクル」という言葉です。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
これは「リサイクル」と違って、不要になったものを新しいアイデアと技術を投入することによって全く新しいものにしてしまう。
価値を上げると、こういったものを「リサイクル」ではなくて「アップサイクル」って言い方をするんです。

「アップサイクル」が広がっていくと、企業にとっても新しい商品が生み出されることで新しいマーケットができてくる。
そのような期待感もできるので、これはかなり広がって欲しいと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
こういった取り組み、子どもと一緒に楽しめるというところもすごくいいところですよね。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
家庭内で利用できる。
これがまた一ついいと思うのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
日本の中で、家庭用のゴミというのは全体の中で7割方を占めていて、ここをいかに削減するかというのが、環境ですごく大事です。
今回の絵の具のように親子で使えたりとか、こういったところはまさに家庭内でいろいろ捨てるという意識自体を変えていく上でも非常に大きな貢献をするのではないか。
この辺にも期待したいと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
子供に言葉だけで説明をするよりも、生まれ変わったものに実際に触れながら循環の大切さを伝えていくことで自然と環境への意識も高まりますし、子どもたちの未来を変えることにもつながっていくのかもしれません。

(「Live News α」 1月29日放送分)