在職老齢年金は詐欺か?
還暦を過ぎても別に元気なので今までと同じように働いているのだが、一つだけ腹が立つことがある。本来64歳から老齢厚生年金を年間160万円もらえるはずなのだが、働いているともらえないというのだ。本当か?22歳から38年間強制的に年金保険料を払わされて、いざもらおうと思ったらもらえない。これは詐欺ではないか。この悪名高い制度を在職老齢年金という。
この記事の画像(5枚)簡単に言うと65歳未満の場合、月収が28万円だと老齢厚生年金をもらえない。65歳を過ぎても47万円だとゼロになる。こんな制度があると高齢者が働かなくなってしまう。労働力不足は経済成長の最大の阻害要因であり、元気な高齢者も増えたので、この制度をやめようという話が持ち上がった。
真面目に働くと年金が減る恐怖
で、今回官邸が骨太の方針に「在職老齢年金の見直しを検討する」と入れたので、ほお、ようやく日本政府も高齢者を働かせる気になったかと思っていたのだが、案の定中途半端な結果になりそうだ。
僕が取材した時点では65歳未満は継続するが65歳以上は廃止という方向だった。それが最近の報道によると制度は継続。ただし年金ゼロを月収62万円に引き上げるが65歳未満は28万円のままかもしれない、ということらしい。ということは僕の場合、64歳から老齢厚生年金をもらえるはずなのだが場合によっては年間160万円の年金がもらえなくなる。
64歳の時の僕の月収がいくらかはわからないが、その時、娘はまだ9歳なので、たとえ年金が減額されても僕は働き続けるが、子育てやローンが終わっている人は年金を減らされてまであくせく働かないのではないか。
我々サラリーマンは入社以来強制されて年金保険料を払い続けてきたのに、やっぱりまだあげませんというのは、年金への信頼がなくなると思う。だったら任意加入にしてほしい。もらえない年金の保険料を払う人なんかいるわけないからだ。
「悪平等」な仕組みが日本を滅ぼす
不思議なのはこの老齢厚生年金をもらい始める時に専業主婦の妻と子供が1人いると、加給年金というのをさらに年60万円位もらえる。つまり僕と同い年の人でも、64歳の時に仕事をせずに専業主婦の妻と子供がいれば220万円もらえるのに、夫婦でがっつり働いていると1円ももらえない。同じ保険料を払ったのにこれはフェアではない。誰もまじめに働かなくなるのではないか。
実は同じ保険料すら払っていないのだ。専業主婦は3号年金といって国民年金の保険料を免除されている。どうして僕が他人のヨメサンの保険料を払わなきゃいけないのだろうか。その理由がどうしてもわからない。
日本の年金制度は良くできていると思う。国民年金が安いとよく言われるが、保険料を増やせば年金もたくさんもらえる国民年金基金という制度もある。一部の人達が年金は破綻すると騒いでいるが悪質なデマだ。制度を微調整さえしていけばまさに百年安心のシステムだ。
ただ日本の年金制度にはこの在職老齢年金、加給年金、3号年金という「悪平等」な特例がいくつか仕掛けてある。これは日本という国の不思議な特徴だ。
働くことがアホらしくならない国へ
僕がフジテレビに入社した時、アナウンサー以外の一般職は男子だけだった。38年前にフジテレビは女子学生を採用していなかったのだ。あの頃の社会の「働く人」の概念はお父さんだけで、お母さんやおじいさん、おばあさんは含まれていなかった。だから政府は国民みんなが幸せになるような仕掛けをいろいろ作ったのだ。
でも今は違う。お母さんもおじいさんもおばあさんも働く時代にこういう仕掛けはもう不要である。むしろ日本人の働き方を窮屈なものにし、経済成長を阻害する。即刻廃止すべきではないか。この国に住んでいると一所懸命働くのが時々アホらしくなる。平成の30年間、日本経済は徐々に力を失った。その原因は実はこの辺りにあるのではないか。