特集は昨シーズンで閉鎖された飯綱高原スキー場の今です。食堂の主の発案でこのほど、住民たちが雪遊びのできる「手作りゲレンデ」を整備。子どもたちの歓声が、再び響いています。
元気にそり遊びを楽しむ子どもたち。ここは昨シーズンで閉鎖された長野市の旧飯綱高原スキー場。ゲレンデの一角が住民有志の手で「雪遊び場」になっています。
園児:
「そりしたのが楽しかった。気持ちよかった」
ゲレンデに響く子どもたちの歓声。
どりーむ店主・根岸正人さん:
「楽しそうだな」
住民が待ち望んでいた光景です。
スキー場は1965年に開業しました。
1980年代、スキーブームが到来すると多くのスキーヤーでにぎわい、長野オリンピックではモーグルの会場となり、里谷選手の金メダルに沸きました。
しかし、その後は、スキー人口の減少や雪不足による営業期間の短縮で経営難に陥りました。
設置者の市は譲渡先を募りましたが見つからず、去年2月、55年の歴史に幕を下ろしたのです。
こちらは、ゲレンデ脇にある食堂「どりーむ」。
スキー場と共に歩んできました。
どりーむ店主・根岸正人さん:
「スキー場と一緒に閉めてしまおうかなということは頭にあった。どうしようかなとずっと悩んでいた、秋まで」
閉鎖後、初めて迎える冬を前に、主の根岸正人さんは住民にある提案をします。
どりーむ店主・根岸正人さん:
「だんだんと寒くなるにつれて、今まであった景色が全然違う。今まで来た子どもたちは、どこで雪遊びするのかなとか思ったときに、スキーやそりをやってもらうのが一番いいのかなと。1年空いたら忘れられちゃうような気がして、なんとかつなげたいと」
スキー場は雪遊びやスキー教室など常に子どもたちの歓声に包まれてきました。
そこで、根岸さんはリフトは使えなくても圧雪すれば「雪遊びの場」は提供できるのではと考え、有志に協力を求めました。
その上でゲレンデを管理する市に許可をもらい、草刈りや圧雪をして先月26日、「づなっち広場」をオープンさせたのです。
家族連れが再びゲレンデに…。
子ども:
「そりで遊んだのが楽しかった」
市内から:
「小さい頃に来ていたので、去年、閉鎖になってしまって寂しい思いはあったが、慣れ親しんだところで子どもと遊べるというのはうれしい」
どりーむ店主・根岸正人さん:
「うれしいです、ほっとしました。これでスキー場がなくなってしまったら、本当に寂しくなっちゃいますからね」
広場に足を運んでくれた客に腕を振るう根岸さん。
食堂をオープンさせて28年になります。
ホテルなどで働いてきた腕を生かし、料理は手作りにこだわってきました。
毎朝、スープを仕込みます。自家製の鶏ガラスープでつくる醤油ラーメンにじっくり煮込んだビーフカレー。
特に人気なのが、ボリュームたっぷりの麺に特製の「あん」がかかった「大盛り揚げ焼きそば」です。
どりーむ店主・根岸正人さん:
「最初の頃なんか全然出てなかったですね、ラーメンとかカレーの方が多くて。お客さんから『大盛にしたらどう?』とか話があって、作っていたらどんどん人気が出た。“お客さんが作ってくれたメニュー”の一つかなと」
今も人気メニューです。
客:
「あんかけだから温まる」
「想像しているより大きくて食べ応えもあってびっくり。遊んだ後だったので、おいしくいただきました」
1月13日。
広場の整備、無料駐車場の維持は住民の仕事で、当然ながら費用も負担しています。
この日は根岸さんが圧雪車に乗り込みました。
子どもたちが安全に遊べるよう定期的に圧雪していて、まさに住民手作りのゲレンデです。
どりーむ店主・根岸正人さん:
「だいぶ慣れてきたような気がする。(今まで)スキー場の関係者の皆さんが苦労してやっていたのがつくづくわかる」
この日、広場には地元の幼稚園の園児たちが訪れました。
園児:
「そりは速くて、いつもよりも急なところでやって楽しかった。また来たい、スキーに」
毎シーズン訪れているなじみのスキー場で遊ぶことができ、幼稚園も喜んでいます。
こどもの森幼稚園・内田明子園長:
「雪さえあれば本当にいいゲレンデで、もったいないなとは思ってましたけど、このように残していただいてそれだけでも本当に感謝」
どりーむ店主・根岸正人さん:
「欲を言うと、リフト一つでも動かせるくらいになってくれればいいかなと思うが、なかなか難しいハードルがあるので、来シーズンもこういう状態が続けばいいなと」
閉鎖から一転、今シーズンも子どもたちが元気いっぱいに遊ぶゲレンデ。
スキー場と共に歩んできた根岸さんたち住民は、少しでも長くこの光景が続けばと願っています。