特集はコロナの影響を受ける地域の心温まる交流です。長野市保科の伝統行事「高岡の小豆焼き」が台風災害に続き、コロナで中止されました。そこに地元の児童からある物が贈られ、住民たちを励ましました。
今年もどんど焼きの炎が上がった長野市保科の高岡地区。毎年、住民は地区の祠から1年間、住民を見守った「道祖神」を回収し、たき上げます。
ここまでは、いつもと変わらぬ光景ですが、実はどんど焼きの後、行われる予定だった重要な伝統行事が中止されました。しかも、これで2年連続です。
小豆焼き(2019年1月):
「ゴボウ良いなら、くるりと回りなさい」
国の選択無形民俗文化財「高岡の小豆焼き」。熱した器に小豆を乗せ、その動きで作柄や天候を占う、江戸時代から続く行事です。
小豆焼き(2019年1月):
「冬雪ないなら、くるりと回りなさい…」
「なしだ、暖冬だ」
若者が流出した昭和の高度成長期に一度、途絶えましたが、1980年に復活しました。去年、復活から40回目の節目を迎えるはずでしたが…。
高岡地区の住民・竹内千晴さん(2019年11月):
「山が崩れ落ちて沢をせき止めて、土砂が満杯になって」
台風19号による土砂災害で小豆焼きの会場となる公民館が被災、中止を余儀なくされました。そして、今年は…。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「本来なら今頃、火が赤々しているはずなのに、今回はこの状態で…」
公民館は復旧しましたが、本番は住民や来賓40人ほどが一つの部屋に集まって占うことから、感染予防のため、やむを得ず中止しました。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「こんなに立派にしてもらったのに、今度はコロナで中止。2回続けて中止になるのは痛い。1年に1回の行事だから、これからの行き先が心配になってくる」
肩を落とす竹内さんに、地元の小学生からある贈り物が届きました。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「『竹内さんに手渡したいものがあります』と言われて行ってみたらこれが」
祠に納める新しい「道祖神」。保科小学校の4年生が「願い」を込めて作りました。
児童が作った道祖神:
「疫病退散」
「小豆焼きが続きますように」
去年、授業の一環で竹内さんを招いて、「小豆焼き」などの伝統行事を学んだ4年生。中止の知らせを聞き住民たちを案じていました。
保科小学校・中島雪葉教諭:
「当日、参加することはできないから、何か少しプレゼントできたらいいねとみんなで話し合って」
児童:
「ウイルスとかにかからないように、健康でいられますようにと」
「実際にやっているところを見たいなと思いました」
「私たちが手伝って『小豆焼き』の行事を伸ばしてあげたいと思いました」
竹内さんは...。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「言葉なかったな、感動しまして。これをあそこへ全部納めれば、子どもたちの分身だ、これが」
どんど焼きの当日。竹内さんたち住民は、祠から古い道祖神を取り出し、児童が作った新しい18体の道祖神を納めました。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「こんなに大勢で1年間、村を見守ってくれる。これには感動しています」
どんど焼きの炎で道祖神をたき上げる…。
不運が続いたものの、子どもたちに励まされた竹内さん。どんど焼きの炎に、コロナの終息と小豆焼きの復活を願いました。
高岡地区の住民・竹内千晴さん:
「これでコロナも退散するでしょう。終息します、この火で追い払います。終息すれば、また『小豆焼き』も復活させたいと、何としても続ける覚悟。必ず来年はやります」
(画像:地元の児童からの「贈り物」)